第5話 初デート

 おいおい、デートって、何するんだ?

 どこに連れてきゃいいんだ?


 娘ほど歳の離れた女の子の気持ちなんか、俺に分かるワケがない。ま、そもそも俺には娘も奥さんもいないんだけどさ。


 映画とか、ショッピングとか?

 今の女の子って、一体何すりゃ喜ぶんだ?


 色々考えたけど、結局何も決められないまま・・・・・・というか、決めるのが怖かった。

 ダサいとかセンスないって思われるのが。



 俺、幻滅されるだろうな・・・・・・。



 今朝は、溜め息の深さが尋常じゃなかった。


 佐々木にグイグイ迫られる日々に困惑していたのに、終わってしまうと思うと今更寂しかった。



「お待たせして、ごめんなさーい!!」



 佐々木は、涼しげな水色のワンピース姿で、待ち合わせ場所へ駆けてきた。


 膝上で広がるスカートの裾から、チラチラと白い太腿が覗いた。



 ショートカットのせいか、いつもの佐々木は少しボーイッシュなイメージがあったが、今日はとても女の子らしかった。

 オシャレしてきてくれたのが伝わって、ちょっと嬉しくなった。


 いつの間にか、俺に纏わりついていた憂鬱な気持ちは、どこかに吹き飛んでいた。


 目の前の佐々木が、ただただ眩しかった。



「えーと、どうしよか。なんか、行きたい場所とかある?」


「えーと、、ないです!」


「そうか・・・・・・。悪いな、俺もこれといった計画も、サプライズとかも用意してなくて」

 俺は頭をかいた。


「そんなのちっとも!

 一緒にいられる事が、ご褒美ですから!」


 佐々木は、満面の笑みを浮かべた。


 それ、本気で言ってんのか?!?!


 俺は自分の顔が、ボンっ! と赤らむのを感じて、すぐに目を逸らした。


 こんな可愛い生き物、

 ジッと見つめてたら、身体に悪い!



 佐々木は、するっと俺の腕をとると、柔らかな胸をぎゅうぎゅう押し当ててきた。


「おい、、当たってんぞ?」

「へへっ、わざとです!」


 佐々木はふわりと微笑むと、俺の腕をグイグイ引っ張り進んでいった。


 やっべぇ・・・・・・。

 俺、幸せ感じちゃってるけど、いいのか?!



 駅ビルの中をぐるぐるウィンドウショッピングしたり、布団みたいに分厚いケーキを半分こしたり、たわいもない話をして、なんとなく歩き回っていた。


 気がつくと、佐々木のお陰で、なんだかデートっぽい感じになっていた。


 デートって、男がエスコートしてくもんだと思ってたけど、佐々木はそんな事お構い無しだった。


 佐々木は、目に映る全てを楽しんでいるようだった。

 可愛いものを見たら、キャッキャとはしゃぐし、

 しょーもない物を見つけたら、しょーもない!と言って笑い飛ばせる。


 今まで知らなかったけど、佐々木ってそんな娘なのかもしれない。


 あいつが笑うと、俺も不思議と笑っていた。




 もうそろそろ見る店もなくなってきたところだった。

 俺達は歩き疲れて、ベンチに腰を下ろした。


「なぁ、他にやりたい事とかないのか?買い物も見るのはいいが、お前何も欲しがらないし」


 佐々木は、途端にもじもじし始めた。



「ねぇ店長、そろそろ我慢できない」


 上目遣いで、俺を見つめる。


「なんだ?」


「えちなこと、しよ。」


 ゴクリ。

 俺は唾を飲んだ。

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