第2話 佐々木との面談

 俺は、ファミレスで雇われ店長をしている。

 お察しの通り、まぁパッとしない毎日だ。


 パリーンッッッ!!!

 ランチタイムのピーク時、耳障りな音がキッチンから響いた。


「今週何度目だよ、お前!!」

 俺が駆けつけると、キッチンの田中が、アルバイトの佐々木を睨みつけていた。


 綺麗に盛り付けられていたであろうパフェグラスが割れ、床には生クリームやイチゴが飛び散っていた。


 佐々木は、アルバイトで雇っている女子大生だった。

 いつもハキハキした、元気の良い子だ。


 しかし、今週は明らかに様子がおかしかった。皿を割るのはこれで3回目、オーダーミスは5回、フロアでコケるのは6回。


 周りのスタッフからも心配されたり、目をつけられ始めた頃だった。


 ランチタイムの混雑が落ち着くと、俺は佐々木と面談をする事にした。


 〇


「どうしたんだ、佐々木。

 寝不足か?いつも頑張り屋なお前が、仕事に集中出来ないなんて、珍しいじゃないか」


 佐々木はしばらく俯いていたが、やがて頬を膨らませ言った。


「店長のせいじゃないですか」


「俺・・・・・・??」


 コクリと、佐々木は頷く。


「おいおい、お前のミスがどうして俺のせいになるんだ?」

 俺は頭をかいた。

 佐々木に、何か嫌な思いをさせてしまっていたのか?

 俺がスタッフのケアが足りてないというメッセージなのか?

 ぐるぐる頭を巡らせていると、佐々木は大きな瞳を潤ませた。


「やっぱり!!全然分かってない!!」


「ごめん!なんの事だかサッパリ・・・・・・。頼む、俺に非があるならちゃんと教えてくれないか?」


 佐々木はがっかりしたような顔で、溜め息をついた。

「じゃあ、これから話す事に、店長はびっくりしないで下さいね」


「・・・・・・お、おう」


「私、店長の秘密を知ってます」


「なんだよ」


「先週の水曜の16時、風俗店に入りましたよね?」


「・・・・・・。」


 俺は、言葉を失ってしまったのを取り返すように怒鳴った。

「大人を舐めるな! いい加減にしろ!」


「舐めたいです!」

 佐々木は立ち上がった。

 大真面目な顔だった。


「はん?!?!」

 それは、予想を斜め上から超えてくる言葉だった。


「それに、舐めて欲しいんです!!!」

 佐々木の大きな丸い目は、真っ直ぐに俺を見据えている。

 あまりに真剣で、俺を馬鹿にしているものだとは思えなかった。


「ちょ・・・・・・うん??」

 俺はワケが分からなくなってきた。


 佐々木は、だんだんイライラしてきたようで、声を荒らげた。


「まだ分かりませんか?!

 私、店長とえちした、アイカです!!」

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