「えちなこと、しよ。」とグイグイ迫られても、大人は単純にはイケません。

満月mitsuki

第1話 寂しを埋めるには、買えばいい



「店長!!いい加減、私とえちえちしたら、どーなんですか?!」


 アルバイトの佐々木千夏は、ドン!と音をたて、俺のデスクに手を置いた。


 なんだ、この強迫・・・・・・。


 佐々木は顔を赤く染めながら、ジトッとした目で睨みつけてくる。


 うん。可愛い。

 しかし、このファミレスの店長である俺は、そんな気持ちをぐっと抑え込んだ。


「佐々木、近すぎるぞ。それに、ここ職場だ」

「それは、そうですけど・・・・・・。私、理解出来ません!店長だって、あんなに私を欲しがってたのに、無視し続けるなんて。一体なんの不満があるんですかっ!!」


 俺は目を逸らす。

 そこに、制服の上からでもよく分かる佐々木の豊満な胸があった。


 俺は、この胸の柔らかさを知っている。

 先っちょについた、可愛い乳首がどれだけ感じやすいのかも・・・・・・。


「私、店長のどんなお願いも受け止められますよ!!」

「だから、そういう事じゃなくてだな」


 佐々木は納得いかないようで、ぷうっ頬を膨らませた。


 俺は、あの日の事を思い返すだけで、息子がムクムクと元気になってきて、頭を抱えた。


「もぉ、勘弁してくれよぉ!!!!」


 〇


 俺は、5年間付き合った彼女にフラれた。


 付き合って1年で、その後4年間の同棲生活。

 彼女はまるで空気のような、一緒にいるのが当たり前の毎日だった。当たり前に感謝する事のなくなった俺は、セックスレスになり、結婚願望もなく、ズルズルとぬるま湯に浸かるように暮らしていた。


「あなたといても、未来が見えない」


 そんな捨て台詞と共に、彼女は荷物をまとめ出ていった。


 あまりに突然の事で驚いたが、俺は引き止めなかった。彼女の事を、女としてどうこうっていう執着も、俺にはなくなっていた。


 だけどいなくなって始めて、なんとも言えない寂しさが募った。



 寂しさを埋めるのは簡単だ。

 温もりが欲しけりゃ買えばいい。

 大人なんてそんなもんだ。


 財布の中は、給料日前でほとんど余裕が無かった。


 30分、6500円。

 まぁ、いっか。

 俺はピンサロで、1発抜きにいくことにした。


 〇


「はじめまして、アイカです♡」


 俺は目を疑った。

 ふわふわの髪を腰まで伸ばした、とんでもなく可愛らしい娘が出てきた。学生服のコスプレがよく似合っていた。


 靴を脱いでシートに上がると、彼女は俺の隣にちょこんと座った。


「えーと、まず、えーと」


 彼女は目を泳がせ、あたふたしている。


 俺は手を差し伸べた。

 最初におしぼりで手を拭かれるのが、ピンサロでいうシャワーの代わりだったからだ。


「あ、はい!!」

 ムギュっと、彼女は俺の手を握った。


「あ・・・・・・。」

 俺はツッこもうとしたが、出来なかった。


 アイカちゃんは、満面の笑みだった。

 うん、ものすごく可愛い。

 この熟れてなさが、素人臭くていい。

 声も、女の子らしくて非常に良かった。


「実は、私体験入店なんです」


 マジで?! セールストークじゃなくて?


 実質、素人って事だよな・・・・・・。

 それは、とんでもない背徳感だった。


 あまりの可愛らしさと素人臭にハマった俺は、翌日もアイカちゃんに会いにいった。


 しかし、彼女には会えなかった。

 体験入店だけで、辞めてしまったそうだ。



 ぽっかりと、俺の心に穴が空いた。


 寂しさは、お金を払って埋めればいい。

 そう思っていたはずなのに。


 店のボーイが、あらゆる女の子をオススメしてくるのにも関わらず、なぜだか俺は他の女の子を指名出来なかった。

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