桜田さんマジで最高なんだよな伝説
澄岡京樹
桜田さんマジで慌てない伝説
桜田さんマジで最高なんだよな伝説
「慌てない慌てない」
「んなこと言ってる場合ですか!!?」
桜田さんは本当に落ち着き払っていて、麗かな春の調べって感じなのだが実際それは現状とはミスマッチであった。
なぜなら僕たちは今、『(全年齢的に言えないこと)をしないと出られない部屋』に閉じ込められていたのだ……!
そもそも、そもそもである。僕はノンケである。つまり恋愛感情を抱く相手は異性である。というかそれは桜田さんも同じだと記憶しているのだが——
「あの、桜田さん」
「ん? どうしたんだい?」
「これ、僕たちがしないといけないんでしょうか」
「そうかもしれないねー」
尚も落ち着きまくる桜田さん。彼は本当にモデルめいた美貌の持ち主であり、同時に朗らかな優しみに満ち溢れた至上の存在である。僕が女性であったならおそらくメチャメチャ好意を抱いていたに違いない——そう思えるほど、まぁとにかく桜田さんは最早現実離れしたと言えるほどの超級イケメンなのである。
……が。それはそれ。そこはそれ。だからと言ってえちちなことをしたいわけではない。ノンケなので。同性でというのは、理解はできても実際に僕が行うとなるとそれは難しい話なのであった。
……とはいえ、とはいえである。このままこの何もない真っ白な空間に閉じ込められ続けることを思えば——確認ぐらいはしておくべきなのかもしれない。そう思ったので、
「あの、桜田さん」
「ん? なんだい?」
「桜田さんがその——僕とで良いのでしたら、その、頑張ります……頑張ります!」
と、訊くだけ訊いてみるつもりが勢い余って頑張ります宣言までしてしまった。うーん、桜田さんだし身を委ねちゃうか? こうして理性は実家に帰ってしまった。いつ帰ってくるんですかね。
「……あのね真鍋くん。できないことを無理にする必要はないんだよ」
両肩に桜田さんの手が乗り、その温かさに心が感動で震える。
「真鍋くん。人はそれぞれに個性があって、それぞれに得意不得意や好き嫌いがある。それは押し付け合うものではなくって、そして排除し合うものでもなくって——理解し合うものなんだ。たとえその考えに同意ができなくとも、そういう考えもあると認め合うことはできるんだ。だから真鍋くん。君が無理をすることではないよ。ボクと一緒に、脱出方法を模索してみよう。大丈夫さ。二人でならきっとできる!」
桜田さんがあまりにも最高なので、僕はもう桜田さんになら抱かれても良いんじゃないかなとさえ思えてきた。それぐらい桜田さんは最高なのであった。
そんな桜田さんの最高さを目の当たりにした黒幕(『条件を満たさないと出られない部屋』を作り出す能力者)が感動のあまり部屋のロックを解除したので僕たちはそのまま脱出に成功した。部屋から出ると、僕たちは喜びを分かち合った。後で知った話だけれど、なぜか部屋の様子が闇の動画サイトでライブ配信されていたようで、闇の視聴者たちが感動に咽び泣きながら闇のスパチャを黒幕に送ったらしいし黒幕は「こんなの俺が受け取れるワケないだろ!!!!!」って大泣きして警察に送り届けたらしい。
そんなこんなで僕はこう思った。
やっぱ桜田さんマジで最高なんだよなって。
桜田さんマジで最高なんだよな伝説、了。
桜田さんマジで最高なんだよな伝説 澄岡京樹 @TapiokanotC
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