城壁前ーお猫様との別離~その3
「フーキ会って…」
「誰もいねぇじゃねぇか!」
テントの中は簡易テーブルぐらいしかない。誰かほかの人がいた様子もない。
「これから集めるつもりなんだよ!」
おっさん…集まらなかったんだな。集まらなかったから俺なんかに声かけてきたんだな。
「なんだその目は。いや、いやいや。おっさんの選考基準が厳しくて集まらなかっただけだから!誰でもいいってわけではないから!これほんと!」
「おっさん、言えば言うほど嘘っぽいぜ」
「うっ」
得体の知れないおっさんが一気に不憫なおっさんになった。
まぁ下手に多くの人がいるよりおっさん1人のほうがこちらも気兼ねがないし、聞きたいこともじっくり聞ける。
「で?結局この街で何があるの?」
「いやいや、なんで君のほうが偉そうなの?まぁいい。いいか?色々教えないといけないが、この街では10年に1度の祭典があるんだ。まぁ正確には毎年あるんだが・・・まぁ大枠を言うとだな。祭典は10か所の都市で毎年持ち回りで行われてんだ。祭典のメインは聖剣の適合者の選抜」
おっさんは指を2本立ててかしこまって説明をし始めた。
「選抜ってその聖剣を抜いた人が勇者になって魔王討伐でもするの?」
「いやいや、魔王なんていないさ。そもそも聖剣でもないし、鞘から抜いたりしたら大変なことになるからな?」
聖剣っていうのに抜いたら大変なことになるってどういうことだ?というか抜かないのに聖剣って…
「じゃあその剣でどうすんのさ?」
「その剣に適応する奴を探してるんだよ。正確には剣にかかっている封印に適合する奴、な」
「なに、魔王でも封印されてんの?」
「なんだ、お前いやに魔王にこだわるな。まぁ魔王ではないが、厄災が封じられてるって話だ。気が遠くなるぐらいはるか昔、まだ人間が能力に依存していたころに起こった厄災を今の聖王が剣に封じたって話だ。」
魔王じゃなくて厄災ね…そんな形のないものどうやって剣に封印するんだ?というか…
「へぇ?って今の?今の聖王って言った?なに、聖王生きてんの?いや、生き仏として祀られてんのか?」
聖剣より気になるワードがあったぞ…?気が遠くなるぐらい昔って言ってんのに今の聖王っておかしいだろ…?
「イキボトケってのが何か知らないが、聖王は生きてるぜ。なんでも聖王が死ぬと封印が破れて厄災が出てきちまうから死なないように自分に魔法をかけたらしいぜ。」
「ほーん?」
なるほど、この世界には魔法があるのか。それにしたって不死の魔法があるのか…人間の夢だな。俺にはわからないが。
「で、いつまでも自分が生きて封印し続けるのも無理があるので封印に適性がある人を探して引き継ごうとしているってわけだ。」
「へぇ。でもまだその適合者が出てないって?」
不死の魔法があるのに自分の後任者を探してるのか?
「いや、適合者自体はまぁ珍しいがいないわけではない。」
「じゃあなんでまだ続けてんだよ?」
「適合者はいても封印できるほどの力のあるやつはいないんだよ。だからとりあえず適合者を集めて育ててるんだよ。実際封印はできないが力を認められて国のそれなりの地位に就いたやつもいる。しがない俺たちにとって立身出世のチャンスってわけだ。」
不死の魔法も限度があるのか?その限度の前に次の手立てを探してるってことか。
「はぁ。それでおっさんたちは挑戦者集めてんの?自分たちもおこぼれあずかろうって?下手な鉄砲数うちゃ当たるって?それでなんで非正規の方から入る必要があんの?別に似たようなことしてる人いるでしょ?」
「なんだ、何も知らないくせにやっぱり頭が回るんだな」
「おっさんがわざとわかるように説明してんだろ?」
「それがわかるってのが変なんだよ」
やはりおっさんの狙いがよくわからないな。その適合者の後ろ盾になりたいってわけでも、分け前をもらおうとしているわけでもなさそうだし。そもそも本気でそう考えてるならこんな街の目の前で探すのではなくもっと時間をかけて恩を売ってないと意味がないだろうに。
「で?」
「なんだかなぁ…まぁいい。俺はな、ハヤト。その聖剣を抜いてほしいんだよ」
やばい、破滅主義者だった。
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