城壁前ーお猫様との別離~その2
「じゃぁ早速だが俺の連れんとこにいくか。」
そういっておっさん—ガーゼス―は人の列から離れたほうへ向かっていく。
「おい、おっさん。あっちの列に並ばなくっていいのか?」
「あぁ、あっちは正規の奴らが入る門だからな。」
「ってことは非正規で街に入るってこと?」
やっぱりなんか後ろ暗いんだろうな。まぁもし身分証明書なんて必要だと困るからこれはこれでよかったかもしれない。
「なんだ、怖気づいたか?ってその顔はそんなことなさそうだな。お前本当によくわかんねぇ奴だな。街の名前は知らねぇくせにどうにも数字と計算はできると見える。旅してきたって割には荷物もない。筋肉もない…っておい、そんな顔すんな。別に無理に聞き出そうとかはしねぇって」
ほんとに食えないおっさんだ。
「実は俺…家出した下級貴族の8男で自分探しの旅の途中だったんだけど。まぁ世間知らずだから金の単位も街の名前や配置も知らないし、何なら金銭感覚なくて有り金全部使い切っちまってめっちゃ困ってたとこなんだ…なんて、」
「そういうことか!さっきの言い訳より断然そっちのが納得できるぜ」
「なるほどなぁ。それならお前の知識の偏りも妙にきれいなその服も納得だ。いいか、お前が常識を得るまではその言い訳にしとけ?」
「いえっさぁ」
おっさんの言葉にうなずくしかない。
「はぁ?なに言ってんだ?まぁいい。」
「ところでおっさん、俺ほんとにここの事何も知らねぇんだけど、まずこの街で何があんの?」
何気なしに聞いたことに対してここまでで一番おっさんが反応した。
「はあっ?お前それ本気で言ってんのか?」
「なにっ?えっ、街の名前知らないよりまずいことなの?」
「おいおい…まじかよ。いいか?街の名前は自分の街から出なけりゃほかの街なんて知らないだろうよ。金の単位なんて貴族で家に商人呼んでたりすりゃあ知る機会もないだろう。でもなぁどんな子供でも知ってる現在進行形のおとぎ話を知らねぇってのはおかしいだろ。どんな辺鄙な田舎にも毎年お触れが出るんだぞ。ほんとに知らないのか?」
知りません。なぜなら俺がここ《この世界》に来たのはつい先ほどなので…なんて言えるわけもない。できるのは沈黙と日本人特有の曖昧な笑顔でごまかすしかない。
「はぁ…まぁいい。お前には俺の頼みをする前にいろいろ教えておかないとやばそうだな。なんか気付かないうちに変なことを起こしてくれそうだ」
失礼だな。だが確かに前提が違いすぎると何していいのか分からない。
「だが考えようによってはちょうどいい。下手に凝り固まった考えをもった奴のほうが困るしな。」
「さて、ようこそ。フーキの会へ」
そういっておっさんが向かった先には一つのテントがあった。
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