草原ーお猫様との出会い~その2
「猫、だな」
—にゃあ
手が届く範囲まで近づいたが、猫は逃げる気配はない。むしろ撫でないの?とでも言いたげに小首をかしげている。
「えっと、猫ちゃん?猫さん?君どこから来たのかなぁ?ってかどっか水飲める場所知りません?」
—って猫に本気で聞いてどうすんだ…やばいな、ちょっとさすがに精神的にやばいかも。
ここにきて疲れと意味不明の状況にようやっと心が追い付いてきたみたいだ。
—にゃぁ
俺が動かないことに業を煮やしたのか、猫の方から近づいてきて頭を擦り付けてきた。しれっと四つん這いの俺の腹の下にやってきて下から顔を見上げてくる。この瞬間に俺にとっては自分の現状がどうでもよくなってきた。
「ねこちゃぁあん」
ぎゅっ
普通の猫であれば嫌がって逃げるような状況ではあるが嬉しそうにゴロゴロとのどを鳴らしている。
何を隠そう俺は大の猫好きだ。父子家庭で寂しい思いをさせないようにと、―かどうかはわからないが—父親が猫を連れてきた、のが始まりらしい。始まりは知らない、俺の物心がつく前の話だから。まぁ何にせよ物心がついた時には猫がそばにいて、物理的なこと以外は猫に育てられたようなものである。―むしろ今考えたら猫におむつ変えてもらって飯食わしてもらったんでないかとさえ思う—
何が言いたいかというと、俺は大の猫好きである。尊敬するのは父親だが敬愛しているのはうちの猫である。自分で言っててやばいな…
—たしたしっ
さすがに苦しかったのか自分を拘束している俺の腕をかわいいおててがたたく。
「あぁごめんねぇ。くるしかったねぇ。」
—ふるにゃぁ
腕の中から顔を出して俺の顔に擦り付けてくる。やばいかわいいかわいいかわいい。かわいいが過ぎるっ!
「もう俺、このままここで生きてく…」
—ペちっ
しっかりしろとばかりにかわいい肉球が俺の頬をたたく。あぁ小さい肉球もかわいい!!
—ふにゃぁ
あ、ため息ついた。猫なのに。猫なのに!でもそんなとこもかわい—ぷに—黙れってことですかね?
「ところでお猫様、ここはどこかご存知でしょうか?」
—にゃぁ
スタンッ
腕の中から飛び降りて着いて来いとばかりに俺のほうを見て小首をかしげている。なんでもいいけどその小首をかしげるポーズかわいすぎない?
そんなことを思っていたことがばれたのか猫は器用に目を細めてこちらを見ている。そのままふっと踵を返し歩き出す。歩くたびに優雅に揺れる尻尾もかわいいですっ。
—にゃっ
どうもこの猫は俺の考えていることがわかるようで、反応もまるで人間のようである。とにかく俺はこのかわいらしくて人間臭い猫についていくことにした。
お猫様、どうやったらあの距離を5分で移動したのでしょうか…
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