お猫様との異世界珍道中

葉月卯平

草原ーお猫様との出会い

18歳、それは俺にとって特別な歳だ。

正確には俺を育てた親父がそう言っていた。


「この国では男は18で結婚ができる。それはすなわち、18になれば人様の人生を背負えると認められるってことだ。まぁ実際のところ人生を背負えるかどうかは別問題だがな。逆に言えば18になった時には精神的にそれだけの男に育っておかないといけないってことだぞ。」


どんな理論かとも思ったが、俺にとって父親は世界一かっこいい男だったから…そんな男の言うことならそうなんだろうと納得して、期待に沿えるようになろうと思ったんだ。


「大丈夫。お前が18になった時には必ずいっぱしの男になってるよ。俺が保証する。」
































と、18の誕生日を明日に控えた俺は今どこにいるのでしょうか?


「正解は見知らぬ草原で~す。なんてな…」


いつも通りの夜だったはずだ。数日後に大学の入学を控えて

少し気分が高揚していたぐらいで、羽目を外したわけでもない。さすがに誕生日前だからといってはしゃぐような年齢でもない。


はずだ…


「夢、夢かな?夢だよな?」


とりあえず立ち上がって周りを見渡してみる。が、やはり見渡す限り見たことのない草原だ。というか日本か?ここ。

ふと違和感を感じて自分の格好を確認してみると、いたって普通の、むしろ日本の品質からしたらかなり粗悪な布のシャツと変わらない品質のズボン、靴だけが少し頑丈な革でできているようなブーツである。寝る前の服ではなかったのは幸いか?いや、逆にグレード的には下がっているような気もするが。なんかのゲームの村人のような恰好である。


「おれ、いつのまにかゲームでもしてたのかな?というか日本にこんなハイクオリティなVRがあったのか?」


諦め悪く現実逃避をしてはみたが、肌に感じる気温も風も匂いも嫌に現実的であり、とりあえずこれを現実として受け入れることにする。そうなると次の問題はこのままではまず間違いなく餓死するということだ。


改めて注意深く周囲を見渡す。と地平線の一部が少し太く見える。もしかしたら何かしらの建物か何かかもしれない。たとえ廃墟だったとしてもこの日差しや雨を遮るもののないところよりはましだろう。


「とりあえず向かうか」


陽が沈むのかどうかわからないが明るいうちに移動したほうがいいだろう。


「あー、でも距離感分かんねぇ。つくといいけど…」


とりあえず歩き出した。































「っ着かねぇ…!」


あれから3時間ほど歩いた気がするが全く近づいた気がしない。

「やばい、のど乾いた。このまま着かなかったら餓死の前に脱水で死ぬ…!」

軽く考えてた…。ゲームの世界なら少し歩いたら街につくかお助けキャラみたいなのが出てくるだろうに…やっぱり現実ってことか?


—にゃあ


休憩とばかりに目覚めたときと同じように草原に大の字になって寝転がってしょうもないことを考えていると小さな声が聞こえた。


バッ!!


勢いよく身を起こしあたりを見渡すと、少し離れた場所に緑の中にポツンと真っ黒な塊が動くのが見えた。さっきの声からすると猫—それに準じる生き物ーだろう。勢いよく起き上がったにもかかわらず猫は逃げる気配もなく、俺が動くのを待つかのように座っている。猫がいるってことは近くに餌場や水飲み場があるってことだ。                    


ゆっくり体を動かし四つん這いの状態になる。今のところにげる様子はないが

突然立ち上がって逃げられたら困るしな。そのままゆっくり猫に近づいていく。近づいて分かったことは、猫は自分の想像する猫そのものであったってことだ。



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