被害者(息子)と加害者(息子)の父

マキシム

被害者(息子)と加害者(息子)の父

※残酷描写あり


初めまして、飯沼五郎(仮名)です。突然ですが俺には息子が二人います。一人は前妻の子、もう一人は後妻の子です。ですが一方は被害者、一方は加害者の立場になりました。そう、息子(前妻の子)が息子(後妻の子)を殺したのです


「俺の、俺のせいだ。」


俺は岡本五郎(仮名)として生を受けてから歳月が立ち、同じ会社の同僚である前妻である岡本智子(仮名)と結婚し、息子の岡本崇(仮名)を儲けた。智子は家庭と崇の面倒を見させ、俺は仕事へと邁進し、10年の歳月が流れた。そんなある日、新入社員が入社してきた。名前は飯沼良子(仮名)、実家は資産家で一人娘だ。俺は教育係として、良子の世話をした。そこからは良子との関係が変わり始めた


「岡本さん、大好きです。付き合ってください!」


最初は職場の先輩と後輩だったが、良子から告白され、最初は断ったが、それでも諦めない良子の粘りに俺も悪い気がせず、交際することになった。紛れもなく不倫だ


「何とかばれずにやらねば・・・・」


いつかは、ばれると思いつつ、過ごしていると智子の父、俺にとっては義父が病気になり、体が不自由になった。智子から介護したいから同居したいと言ってきたが、俺としては正直、面倒だ。なぜかって、俺は正直に言うと、義父が苦手だ。とにかく、俺に厳しくて、やりにくかった。俺は介護施設にやるべきだと、言ったが、智子は聞き入れてくれませんでした。智子の母、俺にとっては義母は既に亡くなっていた。兄弟がいるが、義父の面倒を見るのが嫌だったらしく、智子が引き取る形になった


「俺は御免だ!それでも引き取るって言うなら、離婚だ!」


「貴方!何を言ってるの!崇の事はどうするの!」


「うるせぇ!誰のおかげで飯を食えてると思ってるんだ!」


そこから口喧嘩が絶えなかった。俺としてはむしろチャンスだと思った。良子と一緒になれると思い、諸々の手続きを済ませた後に正式に離婚となった。俺の両親は離婚に賛成だった。特に母と智子はうまくいっていなかったこともあって、離婚になったことを大喜びだった。崇は智子が引き取り、俺は義父の施設への資金と財産分与と養育費を支払うことで決着がついた。もし不倫がばれたら、厄介だからな、離婚後は智子と崇には会わず、真っ先に良子の下へ向かい、離婚を報告した


「妻とも離婚できたよ。」


「岡本さん、大好きです♡」


俺と良子は正式に交際するようになり、良子のお義父さんに対面した。良子のお義父さんは、一人娘である良子を溺愛しており、最初は俺の離婚理由について、難色を示していたが、良子の説得により、正式に婚約者の地位を手に入れた。そこからはとんとん拍子に進み、俺は飯沼家の婿養子になり、飯沼五郎に姓を変えて、養父の経営する会社に転職することができた


「ふふふ、俺の人生は薔薇色だ♪」


俺の両親は今回の結婚を喜んだ。なんせ相手は資産家の令嬢なのだから、金持ちの身内になったことを近所に触れ回るほどである。兄弟や親戚たちも、智子との離婚の時は、眉をしかめていたが、俺の新しい結婚相手が資産家の令嬢と知ったら、掌を返したように、媚びを売る始末である。その後、無事に結婚を済ませてから、月日が経ち、良子が妊娠した。


「おお、俺の子供か!」


「ねえ、貴方、お願いがあるの。元奥さんに渡している養育費を削ってほしいの。この子のためにお金が欲しいのよ。」


「そんなことか、分かったよ。」


俺と前妻の智子との息子である崇の養育費を削っていた。俺の人生のための仕方のない犠牲だ。月日が経ち、ついに良子が男の子を出産した。名前は飯沼俊夫(仮名)である。良子の養父も、俺の両親も手放しに喜んだ


「ハハハハハハ、これで俺の地位も安泰だ!」


俺の人生で一番の絶好調だった。あの時までは・・・・


「え、智子が死んだ。」


親戚の知らせで、智子が亡くなり、崇(12歳)だけ残った。すると良子から・・・・


「貴方、まさか引き取ろうなんて考えてないでしょうね。貴方の子供は俊夫だけなのよ。」


「わ、分かった。」


その後、崇は智子の実家に引き取られた。今にして思えば、それが間違いのもとになるとは、この時は思っていなかった






俺は岡本崇(仮名)、突然だが母が死んだ。母は仕事と家事等で、体を壊し、そのまま亡くなってしまった。俺はなるべく母の負担を和らげようと家事も積極的にこなしたが、ダメだったよ。なんで俺はこんな目にあわなければならないんだ。実父の五郎は葬式にこず、俺は母の親戚に引き取られた。その後の俺は親戚にたらい回しにされ、最後は施設に入った


「ぶち殺したる。ぶち殺したる!」


俺の心中は実父である五郎への復讐に燃えていた。死んだ母さんや俺がこんな目に遭っているのは、全部、実父である五郎のせいだと、俺と母が必死で生きているのにも関わらず、あの男は金持ちの婿養子になったと聞く。おまけに養育費が削られ、最近では途絶えてしまった


「母さん。」


俺は母の写真を見て、昔の思い出に浸っていた。それと同時に再び五郎への復讐に燃えていた。死ぬ間際の母は、俺の心配と同時にあの男への怨み事も言っていた


「復讐は何も生まないと言うが、そんなのは偽善者の戯言だ!この怨みは消えやしない、忘れやしないんだ!」


俺は施設を出て、町工場で働き始めた。学校なんて中学卒業して以来、行っていない。町工場で働く人々によくしてもらい、生活の方も何とか、生活でき、アパートを借り、1人暮らしができた。そこから歳月が経ち、俺は26歳になった。そんなある日、俺は休日の日、新しいズックを買おうと思い、デパートに行っていたところ、あの男を見つけた


「あ、あいつは!」


そう、俺と母さんを捨て、金持ちの生活をしていた五郎とその妻と息子と仲良く買い物をしていた。年を取っているが、間違いない、忘れもしないあの面影、俺は復讐の念を燃え上がらせた


「ぶっ殺す。」


俺は独自であの男の現在の住所、家族構成等を調べた。現在は飯沼五郎と名乗り、妻の良子、そして異母弟の俊夫(14歳)と養父母の5人で裕福な暮らしているそうだ。話を聞くだけで、怨みが込み上げてくる。俺はすぐに計画を練った。もちろん殺人だ。俺と母さんを苦しませたあの男に酷い苦しみを与えることにした。そう、あいつらの大切なもの、飯沼俊夫を殺すことだ


「くくく、お前も俺と母さんの苦しみを味わえ。」


俺は俊夫の学校と帰宅時間、そして帰宅経路を調査した。計画実行を前に俺は勤めていた町工場に辞表を出した。町工場のみんなには、新しい転職先を見つけたと報告を上げ、みんな喜んでくれた


「社長、みんな、あんたたちだけは俺の味方だったよ。でも俺は止められないんだ!」


俺は社長とみんなに感謝しつつ、工場を後にした。俺がいては会社の評判ががた落ちになると思い、俺はすぐには行動を移さなかった。そして凶器を準備した後に、俊夫の通う学校へ行った


「見つけた。」


俺は学校から出た俊夫を発見した。そしてなるべく人目の避けるところで計画を実行しようとした。俊夫の後を着いていた。俺はゴム手袋をはめて、サングラスとマスクをつけ、帽子をかぶり、包丁を取り出しそして・・・・


「ぎゃあ。」


俺は背後から俊夫の腰を包丁を刺した。俊夫は呻き声を上げながら、倒れ、そこから俺は俊夫を滅多刺しにした。俊夫はまだ動き、助けを求める声をあげようとしたが、隙を与えずに刺し続け、そして俊夫は息絶えた


「ははは、やった、やったぞ。ははは。」


俺はとうとうやった、あの男と浮気相手の大切な子供を殺した。辺り一面は血の水溜まりができており、俺の衣服も俊夫の血に塗れていた。俺は念のために学生証を確認したら、間違いなく飯沼俊夫(仮名)だった。住所も間違いない。俺はその場を退散し、アパートへ帰った。幸い、誰にも会わずに帰ってこれた


「あの男の苦しむ顔が目に浮かぶは、アハハハハハ。」






俺は飯沼五郎(仮名)、突然だが俺に訃報がもたらされた。俺の愛する息子である俊夫が殺されたのだ。良子から連絡が来たときは、俺は頭が真っ白になった。なんで利夫が殺されたんだと、自問自答を繰り返した。そして犯人への憎しみが沸いた


「なんで息子が殺されなきゃいけないんだ!」


俺は仕事を切りやめ、警察署に行った。そこには既に良子と養母がおり、大切な息子や孫を失って焦燥しきっていた。そして霊安室に案内され、変わり果てた姿の俊夫に対面した


「う、う、う、アアアアアアアアア!」


良子は俊夫の姿を見た途端、大声で泣き叫んだ。養母も良子ほどではないが、号泣していた

俺はというと、不思議と涙が出なかった。むしろ息子を殺した犯人への恨みが残っていた。なぜ息子が殺されなきゃいけないんだと・・・・


「絶対に、絶対に許さんぞ!」


俺は犯人への恨みで悶々した日々を送っていた。目撃者がおらず、監視カメラもなく、人目がつきにくい場所で犯行が行われていたこと、検視により、背中に複数の刺し傷があったや、金品が盗られていないことから、怨恨による計画的犯行と警察が決め、捜査が行われた。俊夫の遺体はまだ帰ってきていない、良子はあれ以来、涙に明け暮れていた。養父母も孫が殺されたことで焦燥しきっており、仕事が手に着かなかった。俺はというと、仕事ばかりの毎日だった。家に帰っても、お通夜状態で、仕事で発散するしかなかった。そんな日々が続いたが、時が動いた。何と〇〇〇新聞社にある封筒が送られた。中身は飯沼俊夫を殺した犯人からの怨恨による手紙と血の付いたハンカチだった


「おい、もし本当ならスクープだぞ!」


新聞社は早速、新聞に作り、発布され、世間に衝撃を与えたのである。手紙には指紋はついておらず、ハンカチについていた血液はDNA鑑定の結果、俊夫の血液と一致したことが明らかになった。その後、俺は警察から任意同行を求められた。手紙には俺への恨みが並べ立てられていた


「五郎さん、貴方は誰かに恨みを買うことをいたしましたか?」


「私には身に覚えが・・・・」


「でもこの手紙には貴方への恨み言がびっしり書かれていたんですよ。」


「そうは言われても・・・・」


結局は何の進展もなく、警察署を出た俺を待っていたのは、マスコミだった


「五郎さん、容疑者は貴方への恨みによる犯行についてお聞かせください!」


「本当に身に覚えがないのですか!」


マスコミは事あるごとに俺にインタビューを求めた。勿論、警察署だけではなく、自宅にも会社にも押し入られた。おかげで近所や会社から、あまつさえ身内にも疑いの目を向けられた


「なんで俺がこんな目に遭わなければいけないんだ!」


俺が何をしたというんだ、俺に恨みがあるなら、なぜ俺に向けないのか、俊夫は関係ないだろうと、俺は犯人への恨みと憎しみが増すばかりだった。その後、事件は意外な結末を迎えた


「俺が、俺が飯沼俊夫(仮名)を殺した。」


何と俺と智子の息子である岡本崇(仮名)が警察署に出頭をしたのだ。勿論、凶器に使った包丁を持参してだ。岡本崇(仮名)は殺人容疑で緊急逮捕された。たまたまテレビを見ていた俺は衝撃を覚えたのである


「崇が俊夫を殺しただと・・・・」


俺は頭が真っ白になった、崇が俊夫を殺した。俺は一気に恨みが消え去った。俺はただただ、テレビの前で立ち尽くすしかできなかったのである






犯行を起こした崇はというと、刑事の取り調べを受けていた


「なぜ犯行に及んだ。」


「決まってるでしょ、あの男へ復讐ですよ。あの男の大切なものを奪ったら、どんな顔をするか、見たかったんですよ。」


「そのために関係のない俊夫君を殺したのか!」


「関係ありますよ、なんせアイツは何も知らずにヌクヌクと育ったんだ。母さんが死んだあと、俺は親戚にたらいまわしにされ、地獄の日々を送ったんだ。だから同じ目に遭わせてやるとな。」


俺は後悔していない。むしろ恨みを晴らしたことで、スカッとした心地だ。ああ、やっぱり復讐は甘美な味がする。刑事たちからの叱責も俺には響かなかった。その後、俺は検察庁に再び取り調べが行われ、同様に罪を自供した


「君のお母さんは、きっと草葉の陰で泣いていると思うよ。」


「母さんは喜んでますよ、なんせ死ぬ間際にアイツの恨み言を言ってましたから。俺もアイツに恨みがあったし。」


「復讐は何も生まないよ。」


「でも気分はスカッとしますよ。」


取り調べを行った検察官は呆れた表情で俺を見ていた。俺の復讐は成し遂げたのだから・・・・






俺こと飯沼五郎(仮名)は孤立無援になっていた。マスコミによって俺のやったことが明るみになり、取引先が離れていき、会社は追い詰められていた。養父母は俺と良子をなじり始めた。どうやら俺と良子が不倫関係だったことが明らかになったのだ。俊夫が殺されたのは、お前たちのせいだと!孫を返せと!


「どうしてよ!私たち被害者なのに、なんでこんな目に遭わなきゃいけないのよ!」


良子は泣き喚きながら、酒に溺れる日々を送っていた。俺は後悔していた。一時の感情に動かされた結果、罰が下ったのである。現時点で、良子の親戚や俺の親戚や智子の親戚も犯罪者の身内ということで世間で白い目で見られており、仕事をクビになり、離婚になり、学校でもいじめられ、中には自殺した人もいた。連日、マスコミが取材に訪れ、心身ともに疲弊していた


「崇、俺を苦しめて楽しいのか。」


俺たちは被害者だけど、世間では俺たちが悪者扱いされていた。崇が新聞社に送った俺への恨み節と血のついたハンカチの効果は絶大だった。世間では「俺が悪い」「浮気相手が悪い」「親戚が悪い」等の声が多数占めており、崇を非難する声は少数のみだった。その後、○○○裁判所で、岡本崇(仮名)の裁判が行われた。被害者遺族席には俺が行くことになった。良子は心身ともに疲弊しており、養父母は会社の再建に勤めていたため、俺が行くことになったのだ。俺が家を出た瞬間、マスコミのカメラが一斉に俺を取り出した。そしてインタビューを求められた


「飯沼さん、息子の崇さんを訴えるのですか!」


「実の息子に対し、どのような御気持ですか!」


「やはり崇さんを怨んでいますか!」


マスコミの口々からアイツをどうするのかという質問だった。正直言うと複雑だ。俊夫を殺したのは崇だが、崇を殺人犯にしたのは、まぎれもなく俺のせいだ、俺があの時、離婚なんて考えていなければ・・・・


俺はマスコミの問いを無視し、〇〇〇裁判所へ向かった。もちろん裁判所前にもマスコミが待ち構えていて、同じように質問してきた。もちろん無視し、俺は裁判所に入り、被害者遺族の席に座った。周囲の視線が冷たく、これでは加害者と同じではないかと思いつつも、裁判が始まるのを待った。そこから裁判官・陪審員・書記官・弁護人・検察官も着席した


「被告人は入廷してください。」


扉が開き、入ってきたのは息子の岡本崇(仮名)だった。アイツが10歳の時に離婚以来、ずっと会っていなかったが、昔の面影がなかった。ふと俺の方を見た瞬間、崇はニヤリと笑った。俺は背筋が凍った。アイツはこれを望んでいたのか、断罪されるのは崇じゃなくて、俺なんじゃないのかと思えてきた。刑務官は崇の手錠を外し、崇は被告側の席に座った


「これより飯沼俊夫(仮名)殺人事件の裁判を始めます。被告人は証言台に立ってください。」


裁判官の宣言で裁判が始まった。証言台に崇が到着したと同時に裁判官から氏名、生年月日、本籍、住所、職業を聞いた


「岡本崇(仮名)、〇〇〇〇年〇月〇日生まれ、本籍は〇〇、住所〇〇〇、職業は無職です。」


そこから検察官の起訴状が朗読され、裁判官が起訴状を呼んだ後に聞いてみた結果・・・・


「起訴内容は間違いありませんか?」


「はい、間違いありません。」


「そうですか、では一旦、元の席に戻ってください」


裁判官が指示を出すと、崇はそのまま、被告人の席に戻った。そこから検察官の事件の経緯と内容による冒頭陳述、証拠の提示を行い、弁護人は問題なしと断定し、そのまま裁判が続けられた。証人尋問についてだが、智子が亡くなっており、親戚も来なかったため、行われなかったため、弁護士の証拠説明だけで終わった。そして被告人質問に移った・・・・


「では被告人は証言台に立ってください。」


崇が証言台に立ち、弁護人の質問と検察官の質問が交互に聞かれたが・・・・


「はい、全て飯沼五郎(仮名)への復讐のためです。」


ただ、その言葉のみで何も喋らなかった。裁判官からの質問にも同じように答えた。そこから裁判が白熱した。検察側は【懲役の求刑】、弁護人は【精神鑑定及び減刑等】を主張し合った。一旦、休憩に入った後に再開され、再び白熱した法廷闘争が行われた。崇はというと我関せずの態度を崩さなかった。そこから時が過ぎ、判決の日が来た


「被告人は証言台の前へ立ってください。」


崇は証言台の前に立ち、裁判官から判決を言い渡された


「被告を懲役13年に処する。」


裁判官が判決を言い渡した後、崇は裁判官に向かって一礼した。そこから裁判官は主文を読み上げ、崇は黙って聞いていた。そして裁判が終わった。俺はというと、黙って見ていることしかできなかった。記者会見があったが、俺は拒否し、そのまま家に帰ろうとした。マスコミの質問も無視した


そこからは俺の地獄が始まった。とうとう養父が経営する会社が倒産し、養父は首を吊って自殺したのである。養母は心労で倒れ、そのまま返らぬ人になってしまった。良子は酒の飲みすぎでアルコール依存症とうつ病を発症し、そのまま病院の世話になっている。俺はというと目の前に怖いお兄さんたちに囲まれていた


「飯沼さん、借金はどうするのです?」


「もう少しだけ待ってください!金は用意しますので!」


「その言葉は聞き飽きたんだよ!仕事はこっちで用意してやるから来い!」


俺はそのまま怖いお兄さんに連れていかれた。現在はいわゆるタコ部屋労働をさせられている。四六時中、監視され、地獄の日々を送っている


「ああ、あのころに帰りたい。」


俺はそう呟きながら、明日に向けて眠るのであった・・・・






俺は岡本崇(仮名)、今は刑務所にいる。俺はここでは真面目にお勤めを果たしている。このまま行けば、仮釈放が出るみたいだが、犯罪を犯した者は就職活動も厳しくて仕事が見つからないのだ。娑婆の世界で長続きせず、再び犯罪を犯して、刑務所に戻ることは聞いており、俺にとってはあまり嬉しくなかった


「ああ、仮釈放が出ても、どうしろって言うんだよ。」


俺は独居の中で日々を過ごしていると、刑務官がやってきた


「おい、面会だ。」


「面会?」


誰だろうと思い、面会室へと向かった。面会室に入ると、俺の務めていた町工場の社長がいた


「社長、なんで・・・・」


「久しぶりだな、崇。元気そうだな。」


社長は俺を心配して訪ねてきた。そして社長は刑務官に2人だけで話がしたいと言い出した。刑務官は許可し、そのまま退席した


「実はな崇、俺も元はお前と同じ前科者なんだ。」


「え。」


話を聞くと、社長は過去に傷害容疑で逮捕されていたという。その後、出所したが世間の目が厳しく、再び犯罪に手を染めようとしたが、そこへ町工場を経営していた恩人である社長に拾われ、無事に更生ができたのである


「俺はあの人に拾われなければ、今の俺はなかったよ、俺だけじゃない、工場で働いているみんなもワケありで世間に冷たい目で見られていた奴らがいっぱいいる、俺はそんな行き場のない奴らを守るために頑張ってるんだ。崇、もし仮出所が決まったら、ここに帰ってこい、俺は、いや、俺たちはずっと待ってるぜ。」


俺はそれを聞いた途端、目から涙がこぼれ堕ちた。こんな俺を受け入れてくれる人がいるなんて・・・・


「社長、いいんですか。」


「ああ、男に二言はねえよ!」


「う、う、う、うわああああああああ!」


俺は声を上げて泣いた。刑務官は何事かと部屋に入ってきたが、理由を聞いた途端、優しくしてくれたよ


その後、俺はしっかりと罪を償いながら、無事に仮釈放をし、そのまま町工場へ向かった。社長とみんなは俺を温かく迎えてくれた。俺は嬉しかったよ、生きていてこれほど、嬉しいことがなかったよ。その後、俺は再び町工場で働きはじめ、無事に更生を果たした。その後、嫁を迎え、無事に子供が生まれた。嫁も俺と同じ犯罪者の身内として世間で白い目で見られた過去があり、俺は同情し全てを打ち明けた後、正式に付き合い、結婚したのだ


「この世も捨てたもんじゃないな。」


俺は嫁と子供たちを連れて、母の墓参りに行ったときから、そう思うのであった






※この物語はフィクションです。実在の人物や団体などと関係ありません








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被害者(息子)と加害者(息子)の父 マキシム @maxim2020

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