第2話 ハンバーグ
「ふええ〜〜ん!!つらかったよ〜!!ふみくんたすけてくれてありがと〜〜!!」
今、僕は家に帰って来たと同時に涙と鼻水を流しながら抱きついてきた涼子さんを抱きしめて、頭を撫でている。
どうしてこんなことになっているのか、時間は約2時間前に遡る。
「成宮ちゃ〜ん!今日こそ俺と飲みにいこ〜よ〜!!ねっ!いいでしょ?」
「用事があるので。」
「え〜!それ昨日も言ってたじゃん!ねっ!ちょっとでいいからさ!」
最近、毎日のように涼子さんを誘っているこの男は、会社の重役の息子というバリバリのコネで入社してきた奴で、仕事はできないがそこそこの立場にいて、さらに顔だけは良いため、自分よりも下の立場の女性社員を隙あらば誘っていたようなクズ男(32歳)である。
会社内にこの男の女性関係の悪い噂が流れまくっているので、社内では鳴りを潜めていたが、社内一の美人である涼子さんが27歳になってもまだ男性関係の噂が全くないので、狙い出したらしい。
涼子さんを誘うなど、はらわた煮え繰り返っているが、一応僕はもちろん涼子さんよりも役職は上なので、強く言えないのである。
どうしたら涼子さんを助けられるのだろうか。
僕と付き合っていることを公表してしまうか?
いや、だめだ。「仕事とプライベートは完全に分けておかないと、仕事場でもふみくんに甘えちゃって仕事にならなくなっちゃうからっ!」という涼子さんのなんだかよくわからないがとてつもなくかわいい理由で、付き合っていることは秘密になっている。
あ〜もう!どうしたらいいんだ〜!!
「もういいじゃん!行っちゃおうよ〜!」
そう言って、クズ男が涼子さんの手を掴んだ。
その瞬間、僕は立ち上がり、声を出していた。
「すみません!!次の会議のプレゼンと資料でわからないことが多々あるので、成宮先輩!教えていただいてもよろしいでしょうか?」
涼子さんは少しびっくりした顔で僕を向き、ほっとした様子になった。
「申し訳ありません。彼が一人前になるまでは教育係としての役目を果たさなければならないですし、他の仕事もあり、忙しくて飲みに行くことができないので、もう誘わないでください。それでは失礼します。」
バッサリ断られたクズ男は、そのまま固まっていた。ざまあみやがれ!!
その後、実際、仕事を教えてもらい、時間差で家に帰ってきたというわけである。
これが事の顛末である。
そして話は冒頭に戻る。
「ふええ〜〜ん!!毎日毎日、いやらしい目で私を見て、誘ってくるからほんとに嫌だった〜!!ふみくんのおかげでキッパリ断れたよ〜!!ほんとにありがと〜!!」
「いえいえ、情けない助け方しか出来なくてすみません。もっとガツンと言えればよかったんですけど。」
「ううん!ふみくん、ほんとにかっこよかった!!私、ふみくん、だ〜いすきっ!!」
そう言って、涼子さんはまた僕の胸に顔を埋める。
なんだこのかわいい生き物は!!!!
世界中に自慢してやりたいが、このかわいさは僕だけが独占したい!!
誰にも教えたくないかわいさだ!!!!
僕はさらに力を込めて、涼子さんを抱きしめる。
「僕も涼子さんのこと、大好きですよ!」
「えへへ〜!!」
涼子さんがめちゃくちゃニヤけている。
最高にかわいい!!多分僕の顔もめちゃくちゃニヤけてるんだろうなぁ〜。
ぐぅ〜〜。
かわいらしい音が部屋の中に響いた。
「安心したら、お腹空いちゃった。」
えへへと笑いながら涼子さんが少し顔を赤くした。
「じゃあ、晩ご飯食べましょうか!」
「今日の晩ご飯はなに〜!!」
ワクワクした表情で涼子さんが聞いてくる。
なんか犬みたいでかわいいな。しっぽが見えてきそう。
「今日のご飯は、ハンバーグですよ〜!朝、下ごしらえはしておいたので、すぐ焼きますね!!」
「わ〜〜い!!ハンバーグだ〜!!やった〜〜!!!!はんばーっぐ!!はんばーっぐ!!」
涼子さんが子供のようにはしゃいでいる。
この喜びを見れただけでももう朝早く起きて準備した甲斐があったな。
僕は冷蔵庫から、小判型に固めておいた、ハンバーグの種を取り出す。
そして、一気に焼く。
じっくり焼いたら、ケチャップ、ウスターソースかけて煮詰めて、バターを入れてソースを作り、盛り付けして、ソースをかけたら完成!
急いで、ご飯などを盛って、食卓に並べる。
さて、このハンバーグには1つ仕掛けがある。
涼子さんの反応が楽しみだ!!
「わ〜!!おいしそう〜!!」
涼子さんがはしゃいでいる。かわいい。
「「いただきます!!」」
「わくわく!!わくわく!!」
ワクワクしすぎて、「わくわく」と口に出してしまっている涼子さん。かわいい。
「涼子さん!ハンバーグを真ん中から開いてみてください!」
「え?うん!わかった!」
少しびっくりしながらも涼子さんが僕の言葉通り、箸でハンバーグの真ん中を開こうする。
「わーーーー!!!!チーズだーーーーー!!!!」
するとハンバーグの中から、チーズがトロりと出てきた。
そう、内緒でチーズインハンバーグにしていたのだ!
サプライズ成功だ!!
「チーズ!!チーズ!!チーズ!!チーズ!!」
興奮しまくった涼子さんのチーズコールが止まらない。かわいい。
「涼子さん、落ち着いて落ち着いて!冷めないうちに食べてみてください!」
「うん!!いただきます!!」
涼子さんは、トロりとしたチーズの入ったハンバーグを掴み、口の中へと運ぶ。
「おいしいーーーーーー!!!!」
超幸せそうな顔で涼子さんが叫ぶ。
「ふみくん!!このハンバーグおいしい!!ふみくん天才!!すごい!!」
「そ、そんなに褒めます?」
褒められすぎてちょっと恥ずかしいが、めちゃくちゃ嬉しい。
練習して、よかった〜!!
その後も涼子さんは箸を休めることなく、チーズインハンバーグを食べ続ける。
その様子を見ながら僕も幸せな気分になりながら、ゆっくり食べ進めていると、急に涼子さんが箸で掴んだハンバーグを僕に近づけてきた。
「ふみくん、今日助けてくれたから、そのお礼にあ〜んしてあげる!!はい!!あ〜ん!!」
「え?え?」
「はい!!あ〜ん!!!!」
「あ、あ〜ん。」
急展開に僕がびっくりしていると、涼子さんが有無を言わさずハンバーグを近づけてきたので、口を開く。
口の中にハンバーグが入ってくる。正直、味があまりわからない。
「えへへ〜!!」
涼子さんも少し照れている。
くそっ!!かわいすぎるじゃないか!!
急展開すぎて焦ってしまった!!!!
悔しいから僕だって、やり返してやる!!
僕はハンバーグを掴み、涼子さんの口に近づける。
「お、お返しです!!はい!!涼子さんも!!あ〜ん!!」
「あ〜ん!!」
涼子さんは少しびっくりしていたが、とても嬉しそうに口を開く。
「えへへ〜!!ふみくんにあ〜んしてもらうと、もっとハンバーグがおいしくなる〜!!でも、今日はお礼だから、私がふみくんにあ〜んするの!!はい!!あ〜ん!!」
「じゃあお返しに僕も涼子さんにあ〜んします!!」
結局、そのあと、残りのハンバーグ全てあ〜んして食べさせ合うこととなった。
甘えん坊で食いしん坊な僕の彼女、かわいすぎるでしょ!!!!
2人の甘々で最高なイチャイチャ日常はまだまだ続くのであった。
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クールな美人上司が家に帰ると甘えん坊かつ食いしん坊になるのでかわいすぎます! もろもろこしこし @moromorokoshikoshi
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