第2話 無敵転生
俺は徴兵所に向かうと、世界最強の力をいかんなく発揮して速攻で勇者に認定された。
そして王宮にある最強装備を貰ってさっそく魔王を倒す旅に出た。
俺は超強いんでパーティなんていらないんだけど、途中で1人だけ旅に連れて行くことにした。
仲間というわけではなく、選びに選んだ嫁さん候補である。
世間ずれしてなくて、優しくて美人で可愛くて、一途で浮気しそうになくて俺のことが大好きな駆け出しのエルフの神官だった。
魔獣の群れが出没して苦労しているエルフの里を助けてくれる勇者を探していたそうなので、俺の嫁になる代わりに、俺が貰った最強チートスキル『グングニル』で魔獣の群れをマッハで跡形もなく蒸発させて助けてあげたのだ。
「お前はもう俺のものだ、勝手なことはするなよ」
「もちろん、オーディン様にわたしの生涯を捧げます!」
おっとそうそう。
この世界の言語では大神=オオジンというのは大変発音しにくいらしい。
なのでちょっと
あとこの子は高速・長距離移動魔法が使えたので、旅のお供には最適だったのだ。
その後、俺は魔王に忠誠を誓う最強の暗黒四天王とやらをぶっ殺しに行った。
まずは最強チートスキル『グングニル』の超必殺技『
続いて玄武は地下迷宮ごと消滅させ、白虎も大地神殿ごと消滅させ、朱雀は巨大な火山の火口に作られた煉獄要塞ごと消滅させた。
害虫駆除は巣をつぶすことが肝要、元から絶つのが大切だからね。
そして俺はついに諸悪の根源たる魔王と相対することになった。
「ふははははは、よくぞここまで来たな勇者! どうだ、その強さを見込んで我から提案がある。お前に世界の半分をくれてやるから、我と手を――ゴファッ!?」
「『
なんか話が長くなりそうだったので、俺は魔王を即死させた。
秒だった。
格が違うからな。
ってなわけでついには魔王もサクッと倒した俺は、莫大な報奨金と領地を貰って、ついに念願のスローライフを始めることになったのだった。
長いプロローグを終えて、俺と可愛いエルフの神官嫁との平和な新婚スローライフ生活が始まった。
「オーディン様、あの、そろそろ子どもが欲しいです……きゃっ、言っちゃった!」
「よーし俺がんばっちゃうぞー」
うん、最高だ!
最高過ぎるじゃないか異世界!
世界ってこんなにも素敵に輝いてるものだったんだな!
だがしかし平和なスローライフは長くは続かなかった。
遠い異国からやって来た赤髪の少女が、俺に会うなり、
「我が国に魔王をも超える魔龍が出現したのです。どうか私どもを助けていただけませんか」
とかなんとか言ってきたからだ。
ぶっちゃけ魔龍を倒すのは楽勝だ。
魔王よりちょっとくらい強くたって、世界最強のチートスキル『グングニル』と超必殺技『
レベルが違いすぎる。
だけど、
「はぁ? 魔王をも超える魔龍? 俺に助けて欲しい? ごめん却下」
俺はさくっと断った。
「な、なぜですか?」
「なぜって、俺はスローライフをするために魔王を倒しただけだから、楽しくもない勇者ごっこはもう店じまいしたんだよ。後は気楽にオンリー・フォー・ミー」
「自分のため……?」
「俺はさ、もう誰かのために生きるのはうんざりなんだ。この領地で自分のためだけに生きると決めたんだ。だから誰がどうなろうと知ったこっちゃない」
「あ、あなたは! それだけの力を持ちながらなんて自分本位な……! あなたの力は世界最強かもしれませんが、あなた自身は世界最低です!」
俺の答えに、赤髪の少女は憤慨して俺をひどく
でもまったく俺の心には響かなかった。
「ふぅん。じゃあそんな世界最低なやつに助けて下さいと必死にお願いしなきゃいけないお前はいったい何様なんだ? ミジンコか?」
「くっ……」
俺のその言葉に、赤髪の少女は悔しそうに歯を食いしばった。
可哀そうだとは思わない。
俺は俺のためだけに生きる、決してブレないこれが俺の信条だから。
前の世界で苦しむ俺を、いったい誰が助けてくれようとしたんだ?
「ま、今日のところは泊めてやるから、朝になったらとっとと帰れ。国が大変なんだろう?」
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