第19話 僕たちの町【前編】

○函館山・観測所 (インサート)


   観測所を訪れている蒼志と戸倉。

   怪獣警備の職員と話をしている。

   蒼志が見ている資料には怪獣の現れた時間と場所が書かれてある。


○蒼志の家・蒼志の部屋 (インサート)


   蒼志の部屋に一華と詩歌が来ている。

   床に函館市内の地図を拡げ、蒼志と3人で話をしている。

   そこに飲み物を持った恵子が入って来る。

   挨拶する一華と詩歌。

   一華は少し気を使っているように見える。


○山奥の家 (インサート)


   山間にある一軒家。

   家の外には焼き物が幾つも置かれている。

   そこにやって来る蒼志。手には中空ちゅうくう土偶の写真。

   家の表札には『南茅部勝見みなみかやべ かつみ』とある(いつぞやのビームじいさん)


○蒼志の家・蒼志の部屋 (インサート)


   夜。部屋に拡げられた市内の地図を見ている蒼志。

   地図上の五稜郭を見て、何か考えている。


    ×     ×     ×


   廊下。トイレに起きた恵子。

   蒼志の部屋から漏れている灯りに気づく。

   廊下にある時計は午前3時を過ぎている。

   心配そうに蒼志の部屋を見つめる恵子。



○町の遠景(時間経過)



○博物館・事務所


   数日後。事務所で話している蒼志と戸倉。

   机には壁画の写真と函館中心部の地図が拡げられている。


蒼志「一華のビームじゃ怪獣を倒せないとして、何で5人だと出来るのか?改めて考えてみたんです」


   蒼志が郡司の壁画の方を指しながら話す。


蒼志「この5つの丸から中心の丸、つまり怪獣に向かってビームする。これは、ほぼ同時に行う事だと思うんです。で、同時に行うとどうなるか?」

戸倉「逃げ場所がなくなる。つまり方角が関係してたって事か」

蒼志「はい。一華のビームは倒してたんじゃなくて、どこかに飛ばしてたって事です。それを裏付ける為に観測所のデータと一華に聞いて照らし合わせてみたら、わかったんです。怪獣に向かって東に向けてビームすれば東から。南に向ければ次は南から出ていました」

戸倉「なる程。ならその逃げ場所さえ無くせば…」

蒼志「はい。5方向からビームを撃てば怪獣は行き場を失う。完全に倒せるって事です」

戸倉「理屈はわかった。けど、それをどうやってやるかだな。5方向と言ってもどこでやるかも問題だ……」

蒼志「うってつけの場所はあります」


   蒼志が地図の一角を指す。


戸倉「なるほど。五稜郭か……」

蒼志「……」

戸倉「確かにこの5つの丸は五芒星の頂点を表しているようにも見える。やるには五稜郭が一番だろう。ただ、それだと……」

蒼志「はい。怪獣を五稜郭まで誘導する必要があります…」

戸倉「町を歩かせるって事か?それは幾ら何でも無茶過ぎないか?」


   不安気に返す戸倉。蒼志の表情も険しい。

   だが、その目は諦めていない。


○漁港・事務所(日替り)


漁師の声「ビーム砲を使いたい?」


   蒼志が漁港の事務所を訪れている。

   事務所の机には蒼志の作った計画書。


蒼志「そうです。怪獣を五稜郭まで誘導するのにビーム砲が必要なんです」


   計画書には市内の地図にビーム砲が設置された図が書かれている。


漁師1「んな事出来る訳ねえべ!五稜郭着く前に町が壊されちまう!」

蒼志「それをさせない為にビーム砲を使うんです!ビーム砲を使って歩くルートを絞らせる」

漁師2「無茶言うんでねえ!この若造が!」


   蒼志の無茶な要求に思わず声を荒げる漁師達。

   そんな中、黙って計画書を見ている啄三たくぞう(75)

   いつぞやのいぶし銀の男である。


漁師1「それにな坊主、ビーム砲つったってありゃほとんど効果ねーんだぞ?」

蒼志「けど足止めぐらいなら出来る。だから今でも手入れしてるんですよね?いつでも使えるようにって」

漁師2「そりゃ、そうだけんどもよ…」


   諦める様子のない蒼志に漁師達も呆れ気味。


漁師1「啄さん、コイツどうにかしてくれよ」


   計画書を見ていた啄三。

   鋭い視線を蒼志に向ける。


啄三「坊主、目的はなんだ?」

蒼志「怪獣を倒して一華を解放する。それだけです」


   啄三の鋭い視線に、負けじと蒼志も力強い視線で返す。

   その目をじっと見据える啄三。

   ふっと笑って、少し口元を緩めると話し出す。


啄三「……確かに足止めくれえなら出来ねぇ事はねえ。ビーム砲自体も数はある。ただ、そんな一遍には使えねえぞ」

蒼志「?」

啄三「ビーム砲つったって元になるのは電気だ。威力こそ大した事ねえがバカみたいに電気食っちまう。せいぜい一遍に使えんのは2、3ってトコだろう。それでやれんのかい?」


   蒼志の作った計画書には大量のビーム砲が書かれている。


蒼志「これ、全部使うにはどれぐらい必要なんですか?」

啄三「詳しい事は数値出してみねえとわかんねえが……函館中の電気使ってようやくってとこだろう」

蒼志「……」

漁師1「電気もそうだけどよ、ビーム砲使うにしたって俺達だけじゃ無理な話だぞ」

漁師2「んだ。管理してんのは役所だからな。第一役所の人間がこんな話し飲む訳ねえよ」

漁師達「んだんだ」


   周りの漁師達も頷き、否定的なムードが漂う。

   ただ、蒼志に諦める様子はない。

   そんな蒼志を啄三がじっと見据えている。

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