第17話 この町の歴史【中編】
○遺跡発掘所(日替り)
今日も作業している蒼志。
すると、何やら周りが騒がしくなる。
調査隊「おーい、みんな!ちょっと来てくれ」
蒼志が見に行くと土壁が崩れていて、奥に壁画のような物が見えている。
そこに記された記号を見てハッとする蒼志。
調査隊「誰か、戸倉さん呼んで来てくれないか?」
蒼志「あ、俺。すぐ呼んで来ます!」
× × ×
壁画の周りに集まっている人達。
そこに戸倉もいる。
戸倉「垣ノ島で出た壁画と良く似てるな」
横にいる蒼志が頷く。
出て来た壁画は
五角形の頂点に丸(○)が配置されていて、その中心にも丸がある。
(挿絵参照)
そして中心の丸に向かうようにして波線が描かれている。
戸倉「この外側の5つの丸が人。中心の少し大きいのが怪獣。で、この中心に向かって伸びている波線がビームを表している」
蒼志「昔はこうやって倒してたんじゃないかって言われてるんですよね?」
戸倉「そうだ。昔はビームをだせる人間は一人じゃなかったと聞くし。怪獣も、もっとたくさん出たって話だからね」
調査隊「今は一華ちゃん一人でやっちまうってのにな」
蒼志「……(何か考えている)」
戸倉「けど何で同じような物が出てきたんだ?こっちの遺跡から出て来たって事は、前に出た壁画とは描かれた時代は異なる筈だ……」
考え込んでいる戸倉。蒼志の方を見る。
戸倉「蒼志君、一応写真を撮っておいてくれないか?で、それを博物館にある事務所に届けておいてくれ」
蒼志「はい。わかりました」
○博物館・展示室
函館で発掘された縄文時代の土器や石器が展示されている博物館。
(参考 函館市縄文文化交流センター)
写真を届けた蒼志が事務所から出て来る。
ふと展示されている土偶が目に入る。
その土偶には『
蒼志が見入っていると学芸員がやってくる。
学芸員「綺麗な物でしょう」
蒼志「はい」
学芸員「函館で唯一の国宝ですからね」
中空土偶の説明に目をやる蒼志。
中が空洞になっていると書かれてある。
蒼志「何で中が空洞になってるんですかね?」
学芸員「うーん。諸説あるんですが、まだ明確な理由はわかってないんですよね」
蒼志「そうなんですね……ありがとうございます」
学芸員「いえいえ。ごゆっくりご覧になって下さい」
学芸員が去ると、蒼志もその場を離れる。
途中、土偶の方を振り返る蒼志。
展示されている中空土偶は独特のオーラを放っている。
○遺跡発掘所(日替り)
作業中の蒼志。
そこに戸倉がやって来る。
戸倉「蒼志君、ちょっといいか?」
蒼志「はい」
○博物館・事務所
壁画の写真を見ながら蒼志と戸倉が話している。
戸倉「前、出た壁画を見て、より確信を持った事があるんだが。一華ちゃんのビームじゃ、怪獣を倒せないんじゃないかな?」
蒼志「どういう事です?」
戸倉「前から思ってた事なんだけど、怪獣の出る頻度が多過ぎるんだよ。もし本当に一華ちゃんが倒してるなら、こんな頻繁には出ない筈だろ?」
蒼志「確かに。それは俺も思ってました。倒したって言っても消えていくだけでしたし」
戸倉「けど5人なら倒せる」
蒼志「!」
戸倉「あの壁画はその事を示してるんじゃないかな?」
蒼志「でも、だとしたら、今は一華一人しかいないから倒せないって事になりますよね?」
戸倉「そういう事になるな…」
蒼志「……」
表情が曇る蒼志。
戸倉「何もネガティブな事ばかりじゃない。逆に言えば倒す事が出来れば怪獣はいなくなるって事だ。一華ちゃんが怪獣を倒してないなら、今出ている怪獣が繰り返し出てるって事になる。つまり、あの一体だけって事だ。なら、その怪獣を倒しさえすれば、怪獣はいなくなる。一華ちゃんを解放してやれるかもしれない」
蒼志の顔つきが変わる。
戸倉「希望はあるさ」
蒼志「はい」
力強く頷く蒼志。その目には光が射している。
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