第16話 この町の歴史【前編】

○遺跡発掘所(夕方)


   縄文時代の史跡跡。

   そこで蒼志(19)が発掘作業をしている。

   そこに戸倉(45)がやって来る。


戸倉「おーい蒼志君、今日はそろそろ終わりにしないか?」

蒼志「はーい。でも、もうちょっとだけ」

戸倉「……(やれやれな顔)」


○戸倉の家・玄関(夜)


   帰って来る戸倉。

   2階から降りて来た詩歌しいかと出くわす。


詩歌「あ、おかえり」

戸倉「おう。ただいま」


   玄関に置いてある時計を見る詩歌。

   時間は10時を過ぎている。


詩歌「最近遅いんだね」

戸倉「ああ。ちょっと蒼志君に付き合わされててな」

詩歌「へー…そう…」

戸倉「最近ちょっと様子が違うんだよな。何かあったのかな?」

詩歌「……」


○高校・教室(放課後)(日替り)


   HRが終わった一華のクラス。

   そこに詩歌がやって来る。


詩歌「一華ぁ。帰ろー」

一華「あれ?補習はいいの?」

詩歌「うん。今日は休み」

一華「あ、ちょっと待って。コレ書いちゃうね」


   そう言うとパーッと何か書き出す。

   見ると進路希望の紙。少し顔をしかめる詩歌。


詩歌「いいの?そんな急いで出すもんじゃないでしょ?」

一華「うん。でも、もう決まってるから」


   笑って答える一華。


一華「あ、先生」


   出て行こうとする北美原を呼び止めて紙を渡す。

   そのまま教室を出て行く一華と詩歌。

   紙を見る北美原。そこには『就職』と書かれている。


北美原「……」


    ×     ×     ×


   廊下を歩いている一華と詩歌。

   笑いながら話している一華。

   そんな一華を気にしている詩歌。


○函館山・駐車場(夜)


   バイト終わりの蒼志。

   バイクに股がってヘルメットを被ろうとすると詩歌がやって来る。


詩歌「お疲れー」

蒼志「おう」

詩歌「……」

蒼志「……」


   無言で向かい合う2人。


    ×     ×     ×


詩歌「そっか。そんな事あったんだ……」


   柵に寄り掛かって夜景を見ている詩歌。

   蒼志はバイクに座っている。


蒼志「学校ではどうなの?」

詩歌「別に。いつもと変わんないって感じ?いつも通り……無理してる?」

蒼志「(少し笑って)一華らしいな」

詩歌「ね」


   ぼんやりと景色を眺める詩歌。


詩歌「今日もさ、進路希望の紙書いてたんだけどさ。ソッコーで出してたよ」

蒼志「どっか進学すんのか?」

詩歌「そう思う?」

蒼志「……」

詩歌「多分さ、将来の事なんて考えた事ないんだろうね。てか、考えさせてくれないのか……」


   蒼志も町の方を見る。


詩歌「いつまで続くんだろうね……」

蒼志「……」


   今日も函館の町は光り輝いている。


○遺跡発掘所(日替り)


   作業中の蒼志。

   汗だくになってやっているが手がかりになりそうな物は出て来ない。

   苛立ってきて手つきが乱暴になる。

   端で戸倉が気にして見ている。


    ×     ×     ×


   夕方。道具を片付けている蒼志。

   そこに戸倉がやって来る。


戸倉「お疲れさん」

蒼志「あ、お疲れさまです…」


   片付けを手伝いながら話し出す。


戸倉「君がここに来だしてから、もうどれぐらいだ?」

蒼志「ああ。もう4年ぐらいですかね」

戸倉「もうそんな経つか……」

蒼志「はい……」


   表情の冴えない蒼志。


戸倉「一華ちゃんの事かい?」


   少しハッとする蒼志。そして静かに頷く。


蒼志「はい……」


   少し微笑んだ後、戸倉が話し出す。


戸倉「確かに一華ちゃんについては不憫に思う事もある。この遺跡の発掘にしても怪獣退治に役立つ物が何か出ないかと、こうしてずっとやってる訳だ」

蒼志「……」

戸倉「なかなか成果は出ないけどね」


   自虐的に笑ってみせる戸倉。

   蒼志は黙って片付けている。


戸倉「それに、何もやってるのはコレだけじゃない。他にもやろうとした事はあるんだ」

蒼志「(戸倉を見る)」

戸倉「ビーム砲って聞いた事あるかい?」

蒼志「ビーム砲?さあ…」

戸倉「海岸沿いに砲台が設置されてるだろ?あれがそうだ」


    ×     ×     ×


   海岸沿いに設置されているビーム砲 (インサート)


    ×     ×     ×


戸倉「君達は知らないと思うが、まだ一閃いっせんさんが現役だった頃に一閃さんのビームを再現しようとした事があってね。普通の銃火器じゃ怪獣に通用しない事もあって、この町もテクノポリスに指定されたり技術革新は続いていたからね。それで作ったのがビーム砲なんだ」

蒼志「全然知りませんでした」

戸倉「って言っても出来たのは足止めくらいで、ほとんど使い物にはならなかったんだけどね」

蒼志「そうですか……」

戸倉「それでも、今も町の漁師さんが手入れしてるって話だ。何かあった時の為にってね」

蒼志「……」

戸倉「この町の人も何とかしたいとは思ってる。その気持ちは君と変わらないよ」


   そう言って蒼志の肩に手をやる戸倉。

   やるせない表情でいる蒼志。


○海岸沿いの道(夕方)


   夕日に照らされたビーム砲。

   そのビーム砲を漁師達が手入れしている。


啄三「おう、テメーら!手ぇ抜くんじゃねえぞ!」

漁師達「へい!」


   漁師達に声をかけると、しわくちゃのタバコをポケットから取り出し

   燻らし始める啄三たくぞう(75)

   

   落ち窪んだ目を海に向け、少し遠い目をして眺めている。

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