第15話 蒼志少年【後編】

○裏山(回想)


蒼志「一華!俺にビームしろ!」


   一華の家の近くにある裏山。

   そこで向かい合っている蒼志(15)と一華(14)

   傍らには詩歌(14)もいる。


一華「いや、嫌だよ」


   必死に首を振っている一華。


蒼志「いいのか?このままじゃ何にも変わんねえぞ!」

一華「……」

蒼志「また同じこと繰り返してぇのか!」

一華「(涙ぐむ)」


   蒼志が宇須岸うすけしの水の入った容器を取り、一気に飲み干す。


蒼志「一華!来い!」

一華「……」


   目に涙を一杯溜めながら、震える手をゆっくりと蒼志に向かって

   かざす一華。

   構える蒼志。表情が強ばる。

   ギュッと目を閉じて蒼志にビームする一華。

   ビームが直撃し、蒼志の顔が苦痛に歪む。


蒼志「!!!!!(声にならない)」

詩歌「!」


   異変に気づいた詩歌が声を上げる。


詩歌「一華!」


   詩歌の声でビームを止める一華。

   気を失ってその場に倒れる蒼志。


一華「蒼志?そーし!!!」


○病院(回想)


   医療機器に繋がれベッドに寝ている蒼志。

   傍に蒼志の父と母の恵子。郡司ぐんじもいる。

   泣き腫らした目の恵子。

   崩れ落ちそうになるのを横で蒼志の父が支えている。


   廊下にいる一華と詩歌。2人共泣いている。


    ×     ×     ×


   数日後。目を覚ます蒼志。恵子が駆け寄る。


    ×     ×     ×


   廊下で医者と両親が話している。


医者「今回は何とか一命を取り留めましたが、あと少しでも長くビームを受けていたら危なかったでしょう……」


   その声は病室の蒼志にも聞こえている。


    ×     ×     ×


   病院の屋上にいる蒼志。

   悔しそうに泣きながら、何度も何度も柵に拳を打ち付けている。

   その様子を離れた所から見ている一華。

   声を掛けずにそっと去っていく。


○蒼志の家・倉庫(回想)


   宇須岸の水に使った材料が並ぶ倉庫。

   それらを見つめ考え込んでいる蒼志。


   家の縁側を通りかかる郡司。倉庫にいる蒼志に気づく。


郡司「……」


○同・郡司の部屋(回想)


   険しい表情で座っている郡司。

   その郡司の前には蒼志。


郡司「あの能力を受け継ぐという事がどういう事か。お前は本当にわかってるか?」

蒼志「……」

郡司「並大抵の事じゃない。仮に受け継げたとして、そこから課される使命は、お前の想像してる以上だ」


   落ち窪んだ目から鋭い視線を向ける郡司。

   俯いていて、郡司の顔が見れない蒼志。


郡司「蒼志、お前に本当にその覚悟があるか?」

蒼志「……」


   唇を噛み締めている蒼志。

   俯きながらも口を開く。


蒼志「けど、一華はそれをずっと今までやって来た。今だけじゃない。それがこれからもずっと続くんだ。誰かが、誰かが代わりになってやんねえと……」

郡司「……」


   じっと蒼志を見据える郡司。

   引き出しから一枚の写真を取り出すと蒼志に見せる。


   その写真には壁画のような物が写っている。


郡司「縄文時代からの遺跡が函館から発掘されている事は知ってるな?」

蒼志「うん。俺が産まれる前に発掘されて、それで有名になったって」

郡司「これはその遺跡から発見された物だ。その壁画に描かれている物は、いにしえの怪獣退治を表してると言われている」

蒼志「!」


   丸(○)が五角形の頂点に配してあり、その中心にも大きな丸。

   その中心の大きな丸に向かって、五角形に配された丸から

   波線のような模様が伸びている。

   

   https://novelup.plus/story/421634554/569316014

   (壁画イメージ。文章 中程の挿絵参照)


郡司「この五つの丸が人を。この中心の大きな丸が怪獣を表していると言われている」

蒼志「……」

郡司「ビームを出せた人間は一人じゃない。昔はみんなで力を合わせて倒していた。その伝説を証明する元になったのが、この壁画だ」

蒼志「(息を飲む)」

郡司「いいか蒼志。怪獣との戦いはこれまで延々と続けられてきた。悩み苦しんでいるのは今のお前達だけじゃない」

蒼志「(郡司を見る)」

郡司「この町の歴史は長い。今まで培って来た歴史の中に必ずヒントがある筈だ。その中に、お前が求めてる物もあるかもしれない」

蒼志「(顔つきが変わる)」

郡司「この町を信じろ」


   力強く頷く蒼志。


    ×     ×     ×


   郡司の部屋に座っている蒼志(高校生)

   視線の先には郡司の遺影。


蒼志「……」


   郡司の遺影をじっと見つめ、やがて立ち上がると部屋を出て行く。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る