第9話 蒼志のバイト

○函館山・漁火公園


   バイトに精を出している蒼志。

   そこに客で来ている一華。バーガーが出来るのを待っている。

   少し離れたベンチに詩歌しいかが座っていて、

   クラスメイトの麻衣(18)と一緒にバーガーを食べている。

   詩歌は普通のバーガーで、麻衣は塩辛バーガー。

   一口食べて「おえっ」となる麻衣。

   バーガー屋のテナントに掲げられている宣伝文句を見る。

   『函館名物、塩辛バーガー!騙されたと思って食べて見て!』


麻衣「いや、これ本当に騙してる奴じゃん!」

詩歌「(笑ってる)」


   ジュースのストローに吸い付いて口内を緊急リセット。

   ほっと一息付いた後、バイト中の蒼志を見る。


麻衣「ねえねえ、そういえばさ。何で高丘先輩って、ずっとココでバイトしてんのかな?」

詩歌「え?」

麻衣「確かさ、超頭良かったよね?北大余裕で入れるって聞いた事あるけど」

詩歌「……」

麻衣「何で行かなったのかな?こんなトコでバイトしなくてもね」

詩歌「さあ……」


   蒼志を見る詩歌。

   笑いながら一華と話している蒼志。


○海岸沿いの道(日替り)


   海岸沿いに砲台が設置されているのが見える。

   そこをサイドカー付きのバイクが駆け抜けていく。


○遺跡発掘所


   バイクから降りてヘルメットを脱ぐ蒼志。

   そこに戸倉(45)がやって来る。


戸倉「おー蒼志君」

蒼志「あ、お疲れさまです。今日も宜しくお願いします」


   発掘所の中に入って行く蒼志。


○一華の家・一華の部屋(夜)


   ベッドの上で枕を抱いている一華。

   ウキウキとした様子でタブレットを見ている。

   画面にはネットTVで配信されている恋リア。

   スピーカーホンにしたスマホから詩歌の声が聞こえる。


詩歌の声「このタクミ君って子さ、ちょっと優柔普段な感じするよね」

一華「うんうん。そんな感じする」

詩歌の声「ミクちゃんとリョウ君のカップルは成立して欲しいな」

一華「だね」


   同じ番組を見ながら話している2人。

   高校生達の恋愛模様に、あーだこーだ言いあっている。

   デートシーンになり、ペアになった男女が手を繋いで歩く。


詩歌の声「あれ?この子、本命別の子って言ってなかったっけ?」

一華「あ。そうだね」


   その子のインタビュー。

   男の子との手繋ぎデートの事を聞かれて。


女の子「好きとかそういうのはないですけど。手ぇ繋ぐぐらいならいいかなって。向こうから繋ごうって言われただけだし」

一華「……」

女の子「手ぐらい誰だって繋ぎますよ(笑)」


   笑いながら話しているその子。


詩歌の声「まーこういう子もいるよね。私はあんま好きじゃないけど。こう何ての?リア充って感じ?苦手だわ」


   詩歌が話しているが、一華の反応がない。


詩歌の声「あれ?一華?聞こえてる?」

一華「あ。うん。ゴメンゴメン何だっけ?」

詩歌の声「しかも、この子ってさ…」


   話し続ける詩歌。一華も笑いながら相槌を打つ。

   画面には容易く手を繋いで歩く男女が映っている。

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