第8話 町の人
○高校・グラウンド
体育をしている女子のはしゃぎ声。
○同・保健室
保健室でサボっている
友人の美優(18)と亜美(18)もいる。ギャルっぽい見た目のその子達。
養護教諭は不在でベッドに寝転んで悠々自適。
ベッドから立ち上がる茜。上着のポケットに手を突っ込んで窓に近づく。
窓から体育中の女子が見え、隅っこで見学している一華に気づく。
茜「ねえねえ、何であの子ってさ、いっつも見学してんの?」
美優「(外を見て)
亜美「違う違う(笑って)何か、手ぇ繋ごうとするとビームでちゃうんだって」
茜「ガキかよ?どんだけウブなんだよ」
美優「でもさ、繋いでる子いなかったっけ?」
亜美「ウソ?いた?そんなの」
美優「いるいる。私、見た事あるもん。ほら、誰だっけ?あの、いっつも一緒にいる子。確かC組のさ(詩歌の事)」
茜「じゃあ何?繋げる子と繋げない子がいるって事?」
美優「さあ?わかんないけど」
茜「めんどくせー」
亜美「てか、ビームでるってウケるよね?」
美優「ヤバいよね(笑)今度出るトコ見せてもらおっか?」
亜美「あ、それ私も見たい。はー!って、やるトコ?どんな顔してやるのかな?」
美優「こんなんじゃない?はー!(思いっきり変顔)」
茜「それバケモンだから(笑)」
笑っている3人。
と、怪獣サイレンが鳴る。
美優「うるせー」
グラウンドにいる一華の所に北美原がやって来て、
一華と一緒に走っていく。
そしてヘルメットを被りバイクに股がる。と、思いきやサイドカー。
そこにちょこんと座る一華。
そのまま走っていくサイドカー。
保健室の窓から一連を見ている茜。
茜「めんどくせー……」
○テレビの画面(日替り)
中継中のリポーターを一華のファンが取り囲んでいる。
男1「一華ちゃーん!愛してるよ!」
男2「俺の嫁になってくれ!」
男3「いやいやいや、俺の嫁、俺の嫁、光一華は俺の嫁ぇー!」
リポーター「(カメラに向かって)す、凄まじい熱気です!」
もみくちゃにされているリポーター。
全員がカメラに向かって叫ぶ。
男達の野太い声「一華ちゃーん!誕生日おめでとー!」
○市内のホール・中
『光一華 生誕祭』と書かれた垂れ幕。
特別に作られたお姫様席に一華が座らされている。
壇上には子供達がいて、歌のプレゼント。
一華も微笑ましく見ている。
と、子供達の出番が終わると少し会場の雰囲気が変わる。
法被を着た市民達が壇上に勢揃い。
そして市の職員がマイクの前に立ち、大きく息を吸い込む。
職員(若)「光一華のぉー!前途を祝してー!」
の声と共に陽気なイントロ。
音楽「函館名物いか踊り~♪」
職員、町の人、親衛隊が歌って踊って盛り上げる。
「いっか刺し、塩辛♪」の大合唱。
一華「……(心ここにあらず)」
舞台袖に待機している市長の陣川松次郎(65)
一華の様子を見ながら、厳しい表情で職員に何か耳打ちしている。
職員(老)「続きまして、陣川市長から祝辞を賜りたいと存じます」
堅苦しい雰囲気で出て来る陣川。
そのままマイクの前に立つと、突然スーツを脱ぎ捨てる。
上着の下にはロックTシャツ。
そして軽快なビートが流れ始める。
陣川「どこまで~も広が~る空に~光がさして~!」
生誕祭は続く。
○茜の家(夕方)
ソファに座ってスマホを弄っている茜。
テレビから騒がしい声。
テレビの声「一華ちゃーん!誕生日おめでとー!」
ローカル枠で一華の生誕祭が取り扱われている。
茜「……」
無言でチャンネルを変える。
弟「あー何すんの!オレ見てたのに!」
後ろでご飯を食べながら見ていた茜の弟。
テレビに映る一華に釘付けである。
茜「(うぜえ)」
○市役所・会議室(日替り)
会議中の職員達。
会議室には生誕祭で使った法被や衣裳が積まれている。
職員(女)「一華ちゃんクスリともしてませんでしたね」
職員(若)「市長のGLAYがマズかったんじゃないですかね?やっぱり女の子にはYUKIじゃないと」
職員(老)「何言ってんだ!アレが一番ウケてたよ。ですよね市長?」
陣川「……(何とも言えない)」
やいのやいのとやりあって。
陣川「とにかく、彼女はこの町を守るヒーローであって、町のシンボルでもある。これからも町に貢献して貰う為にも、我々が盛り上げてかなきゃならない。遊びじゃないという事だけは理解しておいてくれ」
厳しい表情で語る陣川。
職員達も真剣な様子で頷いている。
陣川「で、次は?」
職員(若)「はい。来月の、一華ちゃんビームでちゃうようになった記念日についてですが…」
会議は続く。
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