第7話 いっちゃんといっちゃん

○一華の家・外(夜)


   帰って来る一華と一閃いっせん

   一閃は先に家に入っていく。

   一華も入ろうとすると、庭から声が聞こえる。

   見ると、エプロン姿の一太いちたがビームを出す練習をしている。


一太「はー!はー!」


一華「……」


   少しして声を掛ける。


一華「ただいまー」

一太「あ、いっちゃん。おかえりー」


○同・リビング(夜)


   テーブルにはレベル高めの料理。


一華「すごーい!本当上手になったね?」

一太「こんぐらい出来ないとね(得意気)いっちゃん、いっつも頑張ってんだし」

一華「(嬉しい)」


   笑っている一太。その顔付きが少し変わる。


一太「いっちゃん、もう少しだけ待っててよ」

一華「?」

一太「俺もさ、早く大きくなってビームだせるようにすっから」

一華「……」

一太「父ちゃんにも言ってんだ。俺が中学になったら、いっちゃんからビームして貰って…」

一華「(遮って)いいの。あんたはそんな事考えなくて」

一太「でも、それだといっちゃん…」

一華「はいはい。この話はこれでおしまい。早くご飯食べよ?冷めちゃう冷めちゃう」


   廊下で一閃が2人の会話を聞いている。


一華「お父さーん」

一閃「お、おう」


   テーブルに座ってご飯を食べ始める3人。

   一太の奥に、愛華の遺影が見える。


一華M「一太は優しい。そしてとても強い子だ」


    ×     ×     ×


   夜。トイレに起きる一華。

   一太の部屋を通りかかると中からすすり泣く声が聞こえる。

   微かに聞こえる「お母さん…」という声。

   一太の部屋の壁にもたれ掛かる一華。


一華M「本当は私が代わりにならないといけない」


    ×     ×     ×


   朝。爆睡中の一華。

   するとリビングから一太の声。


一太「いっちゃーん、そろそろ起きないと遅刻するよー」

一華M「けど、寧ろその逆。一太はそれを望んでない」


   寝ぼけ眼でリビングに降りて来る一華。

   台所で一太が、せっせとお弁当を準備している。


一太「お弁当、いっちゃんの好きなイカリング入れといたから」

一華「……」


   小さな背中が愛おしく見える。

   後ろから一華がガバっと抱きつく。


一太「なに?離せよー」

一華「へへへ」


   抱きしめながら一華が囁く。


一華「私、頑張るからね」

一太「いっちゃん……」


一華M「これぐらい、私がやんなきゃ」

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