第3話 戸倉詩歌

○小学校・校庭(回想) 


   夏。ある日の体育。

   同級生達が元気に駆け回ってる中、一人だけ制服姿の一華(7)

   校庭の隅っこで見学していて、長袖の服を着て、その袖で手を隠している。

   そんな一華を見ている戸倉詩歌とくら しいか(7)

   前、一華を気にして見ていた女の子。

   一人輪を抜け出して、一華の元に駆け寄って行く。


詩歌「それだとさ、可愛いのしてても意味なくない?」

一華「……」


   一華の袖からピンクのリボンが少しだけ見えている。

   すると、詩歌が一華に向かって手を差し出す。


詩歌「女の子同士なら大丈夫でしょ?」


   戸惑う一華。

   詩歌は気にする事なく手を近づける。


詩歌「ほら」

一華「うん……」


   詩歌に迫られ袖から手を出す一華。

   恐る恐る詩歌の手を握る。


詩歌「あち!」

一華「(哀しい)」


   手をさすっている詩歌。

   が、その目は諦めていない。


○インサート(回想)


   帰り道。

   手を袖に隠して、とぼとぼと歩いている一華。

   後ろから詩歌がゆっくりと近づいていって、一華の手を握る。


詩歌「あち!」


    ×     ×     ×


   授業中。

   一華の後ろに座っている詩歌。

   隙を見て、一華の手を握る。


詩歌「あち!」


    ×     ×     ×


   校庭。

   みんなと離れて、一人遊びをしている一華。

   そこに後ろから詩歌が近づいていき、思い切って後ろから抱きつく。

   びっくり仰天の一華。

   四方八方にビームが飛び散る。


詩歌「あちあちあち、あちぃー!!!」


○公園(回想)


   向かい合っている一華と詩歌。


一華「しーちゃん、もういいよ……」

詩歌「ダメ!諦めんな!」

一華「でも……」

詩歌「いいの?このままだと、ずっと誰とも手ぇ繋げないまんまだよ!」

一華「(唇を噛み締める)」

詩歌「意識すんな!私はあんたの友達だ!」

一華「……」


   少し泣きそうになりながらも歯を食いしばって詩歌を見る一華。

   手を差し出す詩歌。そして目を閉じる。


一華「(覚悟した目)」


   差し出されたその手を握る一華。


詩歌「あち!……(目を開けて)くない」

一華「あ…あ…(嬉しい。そして泣きそう)」


   大喜びの2人。

   手を繋いだまま飛び跳ねる。


一華M「ビームが出るようになって初めて手を繋げた友達が、しーちゃんだった」


   袖で隠れていたリボンが見える。

   

   (これから一華は手を隠さないようになった)


○小学校・教室(回想)


   修学旅行帰りの子達が写真を見ながら盛り上がっている。

   一人離れて席に座って、ぼーっと外を見ている一華(12)

   するとそこに元気な女の子の声。


詩歌「一華ぁー」


   土産袋を抱えた詩歌(12)がやって来る。


詩歌「お土産買って来たよー」

一華「(笑顔)」

一華M「しーちゃんがいなかったら、きっと学校にも来れなかったと思う」


   笑っている一華。

   詩歌と一緒にワイワイと話し出す。


一華M「私にとってはお姉ちゃんみたいな。そんな、とっても大切な人」


   お土産を見ながら楽しそうに話している一華と詩歌。


一華M「そして、もう一人……」

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