耐えられるのか?
波状試練から戻って来た翌日、ティール達は予定通り休日にあてた。
そして次の日……リフレッシュした三人は再びダンジョンに潜り、十一階層に転移。
因みに三人の噂はある程度は広まっているため、ダンジョンに入る三人に声を掛けようとする冒険者たちは一人もいなかった。
「んじゃ、頑張っていきましょうか」
「おぅ」
「あぁ」
波状試練は一階層から五階層まで洞窟タイプで、六階層から十五階層までは遺跡となっている。
環境の変化……これもまたアキラの好奇心を盛り上げる要素であり、まだ楽しみな相手がぞろぞろといる階層ではないが、その眼には楽しさが宿っていた。
「っと、ティール。あそこに宝箱があるな」
「みたいですね。ただ…………一歩手前の上下左右には触れない方が良いみたいですね」
宝箱はダンジョンを探索する冒険者にとっては、貴重な収入源。
中に入っている物を売って金に換えるも良し、そのまま自分たちの装備にするもよし。
なんなら、宝箱に硬貨がそのまま入っている場合もある。
「そういうトラップか。解った」
事前にティールから情報を伝えられたアキラは上下左右、どこにも体触れない様に跳び、宝箱を回収。
(……ヤバいな。超美人が子供みたいな嬉しそうな顔を浮かべるとか、反則過ぎて……反則過ぎるよな)
一時的に語彙力が死んだティール。
既に一階層から十階層の探索時にも、フィールド上に落ちている宝箱を手に入れた事はあるが、それでもまだアキラは宝箱を発見する度、テンションが上がる。
「ニ十階層まで攻略し終えたら、纏めて解錠してもらいましょう」
「うむ! 何が入っているのか非常に楽しみだ!!!」
ティールは子供っぽい笑みを浮かべるアキラの顔が見られるだけで、非常に楽しかった。
(…………少し、心配だな)
主人の横顔を見て、表情には出さないがティールの事を心配に思うラスト。
何が心配なのかというと……いざアキラと別れる時に、本当に別れられるかということ。
アキラがどこまで自分たちと共に行動するかは解らないが、最長で約三年。
ラストとしては、頼れる仲間だと認識しているため、アキラがこちらの大陸に滞在できる間、ずっと共に行動しても構わないと思っている。
だが、いずれ別れは来てしまう。
それは避けられない事実である。
(アキラと別れるまでの間に、また新しい恋が巡ってくれば良いのだが…………おそらく、マスターはこれまでの人生の中で、一番アキラの事を気に入っているよな)
ラストはティールから、出会う前までの恋的な感情を抱いた相手についての話は聞いていた。
そして、共に行動するようになってから、そういった感情を誰かに抱いたときの表情や雰囲気を知っている。
それらの情報も含めて……今、アキラと共に行動している時が一番楽しそうに、幸せそうにしている。
(……マスターの奴隷である俺としては、是非ともアキラと結ばれてほしいところだが、婚約者がいるとなれば、なぁ………………故郷に残っている婚約者が浮気でもすれば、アキラの気持ちが明確に変わってしまうか?)
アキラに婚約者がいる、それ自体はラストも知っているが、相手の詳細……どういった流れでその男と婚約者になったのかまでは知らない。
(相手の男が、女にだらしない人物であればそういった可能性も…………そういえば、あの時アキラは悪くない笑みを浮かべていたな)
婚約者になった。それから初めて顔を合わせた人物を思い浮かべる顔ではなかった、ラストは記憶している。
(アキラがあぁいった顔を浮かべる相手という事は、少なくともアキラにとっては信頼出来る男ということだろう。であれば……傍に婚約者がいないからといって、浮気などすることはない、か)
思わず小さな溜息を零してしまうラスト。
「ん? 大丈夫か、ラスト。もしかしてまだ疲れが抜けきっていなかったか?」
「いや、大丈夫だマスター」
そう……自分を大丈夫だが、この先……その時が来たティールの感情が心配なだけである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます