権利はある?
「こちらが買取金額になります」
「ありがとうございます」
一階層から十階層に出現するモンスターの素材とは言え、ティールたちは遭遇したモンスターを全て倒し、全ての素材を回収しているので、それなりの大金が手に入った。
とはいえ、これまで一度に何体ものDランクモンスターやCランクモンスターを討伐してきたティールからすれば、そこまで大金というほどの大金ではなく、特に買取金を受け取る手が震えることはない。
「よし、今日は美味い料理にでも食べに行こうか」
「構わないが、今から行って空いてるのか?」
「多分空いてるだろ」
ティールは今回の買取金額で手に入れた金額を、全て夕食代に使っても良いと考えていた。
そんなお坊ちゃんに思えなくもない言葉を口にするティールに……負の感情がこもった視線を向ける者がチラホラといるものの、中には色々と理解したのか……様々な表情を浮かべる者たちもいた。
「いやぁ~~、相手て良かったな」
適当に外装から高級で美味い店だろうと選んだ店に入った三人。
ティールは早速メニュー表を広げ、何を注文しようか考える。
「…………ティール。あまり大量に食べてしまうと、今回の探索で得た報酬を全て使い切ってしまうのではないか?」
「全然使い切っても大丈夫ですよ。また数日後にはダンジョンに潜り始めるんですから。それに、アキラさんが上手くメタルスケルトンソルジャーの魔石を破壊せずに倒してくれたんで、あまり金額は気にしなくても大丈夫ですよ」
モンスターによって魔石以外の素材が一番高く売れる場合もあるが、基本的には魔石が一番高値で売れる。
そのため、ティールは見栄を張っている訳ではなく、本当に酒場の様な店ではない場所でもたらふく食べて問題無いと宣言した。
パーティーのリーダーがそう言うのであればと、アキラも真剣にメニュー表を見て……気になった料理を一気に数種類頼んだ。
「それにしても、やはりマスターに面倒な視線を向ける連中は何処にでもいるな」
「今更な話だろ。それでも、絡んで来ないだけ悪くない。とはいえ、これから先どうなるか解らないけどな」
ラストがその力を大勢の前で示したとはいえ、ルーキーたちの中にはティールほど考えて行動出来る者はあまり多くない。
付き合いがある面倒見の良いベテラン冒険者でもいれば、彼らがルーキーたちの暴走を止めるかもしれないが、そういった者たちがいなければ……いつ、謎の自信が振り切れて絡んできてもおかしくない。
「……解ってはいたが、ティールも苦労してるな」
「いざとなったら、上手く訓練場に移動させてボコボコに出来るんで、そんなに苦労と言える苦労はしてませんよ。それに、年齢を重ねていけばそういった人たちも減りますから」
当然だが、ティールの成長期はまだ止まっていない。
このまま順調に身長が伸び続ければ……百八十センチを越えることも夢ではない。
少なくとも、百七十は越えられる。
しかし、それでも一般的に嘗められない身長に到達するには、まだ数年ほど必要であった。
「けど……俺としては、冒険者ギルドがルーキーたちに無駄な喧嘩は止めましょうって注意喚起ぐらいはしてほしいかなって、思うな」
「思って当然だ。マスターには、それをギルドに進言する権利すらあるだろう」
「はっはっは! 確かにこれまで面倒な人に絡まれてきた回数を考えれば、ギルドも少しは真面目に考えてくれるかもな」
ほんの少しだけ真面目に進言してみようかと考えるティールだが、直ぐに考えをゴミ箱に捨てた。
(勘の良い人なら、誰からの頼みでギルドが注意喚起したのか解るだろう。そしたら、ギルドに贔屓されやがって……ってな感じでまたクソみたいな妬みを買いそうだし……現状維持って選択肢しかないな)
相変わらず一流のシェフが作る料理は美味いものの、改めて自分の人生はやや辛いなと感じた。
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