淡々と攻める

(……あぁ、そういう事か。ナイスコンビネーション? だな。それを言われたら、冒険者としての面子、プライドの方を優先してこの場では声を掛けられないだろうな)


十階層のボス部屋にはメタルスケルトンソルジャー、ただ一体。


ランクはCと高く、討伐は決して楽ではない。

楽ではないが……ラストとアキラ、この二人を目の前に「人数が少ないんだし、俺たちと一緒に組んで倒さないか?」と声を掛けるのは、自分に視る眼がないと自爆してるのと同じ。


アキラは冒険者の中でも一人前とされているCランク。

対人戦の技術に関しては確実にBランクの域に入っている。


そしてラストとティールに関しては実際にギルドがBランクだと……超一流の実力を有していると認めている。


(別に俺があの人たちの心配をする必要はないんだけど、意地を通そうとしなくて正解だったな、あの人たち)


ティールはわざわざ同業者とはいえ、自身のランクを自慢することはない。

ただ、面倒を対処する為であれば、惜しむことなく使う。


そこまで実力が高くないだろうと低く見積もった結果、一人はCランクで二人はBランク……全くもって恥ずかしい状況になる。


「やはりそうか。マスター」


「ん?」


「マスターはどう思う」


(……俺にも話を振るのかよ)


二人のやり取りだけでバカを追い払い終えたと思っており、完全に油断していたティール。


「……本当に強い人ほど、冒険をしてる最中は……特にダンジョンにいる時は、そういう下手な事を考えないんじゃないかなって思うかな」


「プロだからこそ、前だけを見て進んでいるといことか」


二人の様にバッサリと斬り捨てるような言葉ではなく、逆にそういった気持ちを抑えられる人物こそ一流だと、持ち上げる言葉を選んだ。


それからティールたちの後ろにも冒険者たちが並ぶが……誰も三人に声を掛けることはなく進んでいき、ティールたちの番が回って来た。


「ふぅ、ようやくだな」


「Cランクのモンスターだからな。それなりに時間が掛かることもある)


場合によっては後ろに並んでいる冒険者たちに挑発するような言葉だが……ティールは既にボス部屋で行われる戦いにしか興味がなかった。


「……あれが、メタルスケルトンソルジャー、か」


「…………」


ボス部屋の中に入ると、中央には重厚な輝きを持つ骸骨戦士が佇んでいた。


「では、私が戦らせていただく」


「存分に楽しんでください」


一階層から十階層まで……特に楽しさを感じる戦いは一つもなかった。


冒険者ギルドから購入した情報を見る限り、十一階層からニ十階層の間でも……満足出来る戦いが何回体験できるか解らない。


(さて……どうしようか)


溜まった闘志を爆発させたいという思いと、この戦いをそんな簡単に終わらせてしまっても良いのかという思いがせめぎ合う。


「ッ!!!!!!」


しかし、ボスモンスターであるメタルスケルトンソルジャーにそんなアキラの心情を気にする優しさはない。


アンデット系のモンスターは素早くないという情報を覆す速さで迫り、自身の体と同じく鋼鉄のロングソードを振り下ろす。


(っ、予想していたよりも速いな)


一度柄から手を離し、ひらりと振り下ろされる斬撃を躱す。


アキラの愛刀はそこら辺の刀と比べて高い強度を持つが、刀という武器の性質上、相手の攻撃を受け止めるのには向ていない。

それが解っていないアキラではなく、メタルスケルトンソルジャーの斬撃を冷静に観察し、見切っていく。


「……短気な冒険者であれば、今頃怒鳴り声の一つでも上げていそうだな」


「ふ、ふっふっふ。確かにそうだな。でも、相手は骸骨の戦士……感情がない、ただの殺戮戦士だ。何度も何度もアキラに斬撃を躱されたからといって、変に焦ることはないだろ」


ティールの言う通り、メタルスケルトンソルジャーはただ淡々と……後ろで観戦しているティールやラストの事など気にも留めず、アキラを攻め続けた。


だが、戦いが始まってから数分後……ついにアキラが柄に手をかけた。

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