どちらにしろ……

合同探索の三日目。


なんとなく三人は何かしらの依頼を受けながらエルダートレントを探すことにした。


(まぁ、こうなるよな)


三人が冒険者ギルドの中に入ると、当然の様に視線が集まる。


エルダートレントの捜索を終えて帰って来た時も同じ状態になるが、朝の方が人の数が多く、集まる視線も自然と多くなってしまう。


そんな中、ティールに向けられる視線と言えば……好奇、もしくは嫉妬。

これまで通りそういった視線が殆どである。

一番の理由としては、アキラという美人と共に行動していること。


「どういった依頼を受けようか」


女性にしては、言葉遣いは男よりだが……そんな事は、冒険者として活動している女性の中ではそこまで珍しくはない。


特筆すべきは……その美しさ。


同じ人族であろう女性と比べて、やや異なる凛とした美しさを持ち、漆黒の黒髪がアキラの美しさをより際立てている。

加えて、彼女は……超強い。


ティールとラストと出会う前、当然他の冒険者から……特に男性冒険者から声を掛けられることが多く、一緒に依頼を受けないか……もしくは固定パーティーを組まないかと誘われることが何度もあった。


その度、アキラは特に煽る訳でもなく基本的に断り続けてきたが……中にはその断り方が気に入らず、試合に発展してしまうことも多い。

場合によってはその場で戦り合いに発展してしまうこともあるが、アキラはその全てに勝利してきた。


強さと美しさ、加えて彼女をそれなりに知る者であれば、優しさ……それらの要素が揃っている彼女を是非とも仲間にしたくない訳がなく……そんなアキラと共に行動しているティールに対し、猛烈に嫉妬してしまうのは致し方ない。


ただ……ティールという子供冒険者? の事が気に入らずとも、その隣に立つ竜人族の青年の圧が怖く……結果として変な絡み方は出来なかった。


「無難に討伐系が良いかと」


「それもそうだな」


三人はCランクモンスターの討伐依頼を受け、そのまま何かが起こることはなく……ギルドから出て仕事へ向かった。



「けっ! なんであんなガキンチョがアキラと一緒に組んでんだか」


「あんまりそういう言葉を使わない方が身のためですよ~~~」


「あっ? そりゃどういう意味だよ」


一度アキラにパーティーを組まないかと誘い、あっさりと振られた冒険者が面白くない状況に対していると、面倒が起きてロビーの椅子や机が壊れないようにと思い、一人の職員が忠告した。


「そのまんまの意味ですよ~。あの竜人族の青年はBランクで……あっちの人族の少年? も同じBランクの冒険者なんですよ」


「…………おいおい、なんの冗談だ」


「冗談でもなんでもありませんよ。あなた達みたいな人がどれだけ疑おうとも、あの少年……ティールさんは正真正銘のBランク冒険者なんですよ」


勝手に冒険者の情報を後悔するのはあまり褒められたことではないが……問題が起こってからでは遅い。

受付嬢の勝手な見解から、ティールはわざわざ自身のランクをひけらかして威張るタイプではないと思い、被害が出る前にバカそうな連中に情報を伝えた。


「あの竜人族の奴におこぼれを貰ってるってわけかよ」


「あなたみたいにそんな現実を直視できないバカたちが絡んだ結果、何人もの冒険者が両手両足の骨をバキバキに折られてるんですよ~~」


「……あの竜人族がやったんじゃなくてか?」


「そうですよ~~」


何人も……というのは少々噂が大きくなってしまっているが、実際にダル絡みをした冒険者が両手両足の骨をバキバキに折られたという情報自体は間違ってない。


「それに、Bランクの昇格試験の際には一人で余裕な感じでCランクモンスターを倒して~、Bランクモンスターを倒す際にも凄い活躍したらしいですよ~~」


「…………」


「まぁ~~~、実際にそれらが誇張された噂だとしても、同じパーティーのラストさんにぶん殴られて終わるんですから、あんまりバカな事は考えないでくださいね~~~~」


「チッ!!!!」


バカっぽい喋り方をする奴に言われたくねぇ!!!! と言いたいところだが、男は直感的にラストには敵わない認めており、結局のところ何も出来ることはないに等しかった。

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