観察中
SIDE 試験監督
(……話は聞いていたが、本当にまだ二十を越えていないのか?)
ギルドに所属している元冒険者で、狼人族の男性はひっそり……ほぼ完全に気配や匂いなどを隠しながらティールたちがキングワイバーン等と戦うところを観ていた。
(まだ十三? で、Cランクのモンスターを倒すというのも驚きだが……いくらなんでも、あっさりと倒し過ぎではないか?)
鑑定系のスキルを使わない場合、試験監督の男は……何となくティールが普通ではないことは解るが、完璧にどれぐらいヤバいのかは解らない。
色々とな噂や功績は耳にしているものの、やはりその功績等と本人にギャップがあれば、実際にその戦いっぷりを見てみないと、完全に受け入れられない。
(バイコーンの突進を蹴りであっさりと……本当に歴戦の戦士、多くの修羅場を乗り越えてきたベテラン並みのジャストタイミングだ)
試験監督なので、ティールだけを見る訳にはいかず、他のメンバーの動きも見なければならない。
だが……あまりにも見た目とのギャップが大きく、ついついその行動を眼で追ってしまっていた。
(いかんいかん、もう少し他のメンバーの動きを注視せねば)
シャーリーの剣技、ゼペラの槍技にバゼスの体技。
そしてゴルダの防御力と受け流し技術に、バルバラの攻撃力とサポート力。
ティール以外のメンバーも上手く動いており、Cランクのモンスターを単独で撃破。
加えてゴルダはキングワイバーンの遠距離攻撃を的確に対応し、バルバラはも遠距離攻撃の相殺と行動の妨害を並行して行い続けた。
(うむ、やはりどいつも既定のラインを越える戦闘力は持っているな)
冒険者という職業柄、求められる方向性は色々とあるが……上に登れば上るほど、第一に求められるのはやはり強さ。
強さがなければ倒せる、勝てず、採れず、守れない。
その強さを……彼等は一応越えていた。
(それにしても、あの竜人族の青年……ラストだったか。あいつも大したものだ)
キングワイバーンを除いた唯一のBランクのモンスター。
本来であれば、最低でも三人以上のメンバーで挑む相手だが、ラストはたった一人で交戦中。
しかも、その表情は切羽詰まっておらず、鬼気迫るといったものでもなく……小さな笑みを浮かべていた。
(Bランクモンスターとの戦いで、笑っていられる、か。中々にぶっ飛んでいるのか、それともそれだけ自分の実力に自信があるのか……おそらく両方だろうな)
ティールもだが、ラストに対する評価も高い。
そうこう観察している内に全ての配下を倒し終わり、いよいよキングワイバーンとの戦闘が始まった。
(ッ…………何でも出来るオールラウンダー……にしては、異様な技術力だな)
ラスト、シャーリー、バゼス、ゼペラの四人が前衛。
ゴルダがタンクとして動き、ティールとバルバラが後衛。
前衛が四人いることを考えれば、ティールが後衛を担当するのは解らなくもないが……だとしても、攻撃魔法の威力は勿論のこと……魔力操作、技術力が普段前衛として活動している者とは思えなかった。
(ここ最近であそこまで仕上がった訳ではないだろう…………元冒険者としては嫉妬する部分はあるが、だからこそ苦労してきた部分が、あの子にはあるだろうな)
男はギルド職員のロズルと同じく、元Bランクの冒険者であり、主に斥候として活動していた。
一般的には羨まれる域まで到達し、引退後はギルド職員として再就職という安泰な道に収まってた。
男もそれらの経歴を考えれば羨まれる側だが……本当にやれることが多いティールを見てると、二回りほど歳が離れているティールの実力に嫉妬を覚えた。
(なるほどな……あれだけの実力や技術があれば、ロズルさんがあの子を……ついでにラストも、半分は保険と言っていた意味も良く解る)
結果、最後はバルバラのウィンドランスによって、標的であるキングワイバーンの討伐に成功。
(さて、今のうちに書き記さないとな)
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