あっさりと初恋が破れた俺、神からのギフトで倒して殺して奪う

火事はダメ

（さてさて、リザードマンジェネラルもラストがしっかり倒したことだし……どう動く？）

バゼスたちが標的のモンスターと戦っている間、ラストも非常に楽しそうな表情を浮かべながら牙竜を振り回し、強敵リザードマンジェネラルの討伐に成功。

増えた配下も含めて、キングワイバーン以外のモンスターは全て討伐された。

ティールの予想では、ここで逃げるという選択肢もあり得ると思っていた。

他種族のモンスターを従える力、器を持つ個体であれば冷静な選択を取れるかもしれない。

「ッ…………ギィィィイイアアアアアアアアアアアッ！！！！！！」

（……別に期待とかしてた訳じゃないけど、亜竜を相手にそんな選択肢を取ると予想するなんて、やっぱりあり得なかったか）

全ての配下が潰されたところで、既にキングワイバーンの闘争心には完全に火が付いている。

「っしゃ！！！！！！　燃えてきたぜおらっ！！！！！！」

「同感ね！！！！！」

「お前ら！！　あまり前に出過ぎるなよ！！！！」

数の力では完全に負けていようとも関係無い。

キングワイバーンは全員焼き潰すつもりで襲い掛かる。

対して、Cランクモンスターとのタイマン勝負で多少のダメージは負い、体力が消耗しているとはいえ……バゼスたちの戦る気もまだまだこれから。

（……これだけ動けるなら、下がっておいて良さそうだな）

バゼスやゼペラ、シャーリーやラストたちの動き具合を把握したティールは直ぐに後方へ下がった。

「バルバラさん。動きや攻撃の妨害は自分が行います」

「分かりました！！」

自分は攻撃に集中して良いと伝えられ、貴族出身であっても……既に冒険者の遺伝子が深く刻み込まれているからか、バルバラは無意識の間に昂り、自慢の攻撃魔法をぶっ放し始めた。

「チッ！！　降りて、戦えや！！！！！」

「バカね！　翼があって飛べるんだから、そりゃ空から攻撃、するでしょ！！！！！」

「男なら、真正面から殴り合い、だろ！！！！！！！」

（おっと、思わぬところから精神攻撃）

バゼスは全くティールの事は指していない。

ティールもバゼスにその気がないという事は把握している。

だが、シャーリーとゴルダ、バルバラは一度ツッコミたかった。

（にしても……Bランクなら普通に何とかなるだろ～と思ってたけど、ちょっと読みが甘かったな）

当然だが、岩窟竜ほどの戦闘力はない。

しかし、ラストもそれなりに本気で攻めてはいるが、キングワイバーンは上手く対処してダメージを最小限に抑えていた。

（偶に地上に降りてくるけど、タイミング良く得物をぶち込むには少し離脱時間が早いな）

決してバゼスたちの攻撃が全く効いていない訳ではないが、それでも長丁場になると全員が確信した。

（火魔法じゃなくて、風魔法まで使うみたいなんだよな……てか、風の魔力を翼に纏った扇ぎが凄く鬱陶しいな）

物理的な攻撃ではなく、翼から刃を放っている訳ではない。

ただ強烈な風を生み出しているだけなのだが……しっかり踏ん張っていないと、余裕で後方に押される。

貫通力や突撃力が高い攻撃魔法でなければ、あらぬ方向に飛んでいってしまう。

（常時そればかりしてる訳じゃないけど、あれがあると……バルバラさんが思いっきり攻撃できないな）

完全な魔術師であるバルバラは複数の属性魔法を使用することが出来るが、その中でも一番得意なのは火魔法。

しかし、森の中で木々に火属性の攻撃魔法をぶつけてしまうと、森林火災になりかねない。

バルバラにはそうならない、起こさせないだけの魔力操作技術があるものの、風弾き飛ばされてしまうと……万が一が全然起こりうる。

後衛の力が活かせないとなると、パーティーの戦力が半減したも同然。

であれば……どうするかは解りきった事。

「前衛の皆さん！　先にあの厄介な翼をなんとかしてください！！！」

「おうよ！！！！！！　任せてくれ！！！！」

最年少からの指示に一切疑問を持つことなく、バゼスは力一杯の手刀による斬撃刃をぶっ放した。