長生きする為ではない
「君たちに討伐してもらうモンスターは、キングワイバーンが率いるリザードマンとコボルト、オーク。三体のジェネラルとグレートウルフだ」
「はっはっは!!! 中々燃えてくる面子じゃねぇか!!!!!」
(……脳筋過ぎないか? 一般的に考えて、燃えてくるどころの面子じゃないと思うんだけど)
言葉には出さないものの、バゼスと同じく約二名の冒険者が好戦的な笑みを浮かべている。
受験者たちの戦る気は十分……とはいかなかった。
「ロズルさん、キングワイバーンがその四体を率いているという情報は……本当なんですか」
「うん、本当だよ。いやぁ~~~、ギルドとしてもちょっとびっくりな事態だよ」
ジェネラルの名を冠するモンスターは基本的に同系統の上位種にしか従わない。
しかし、ワイバーンは曲がりなりにもドラゴンの一種。
ランクは通常のワイバーンと同じBランクではあるが、身体能力は明確に一回り上がっている。
加えてその高い統率力、支配力によって……同種族以外のモンスターを従えることが出来る。
「普通に考えてキングワイバーンだけでも討伐が困難な上に、付き従うモンスターの内三体がCランクに、残り一体がキングワイバーンと同じBランク、ですか…………」
バルバラとしては、盛大に文句を吐き散らしたいところ。
事前に先輩たちから情報を集めており、過去に討伐系の試験でBランクモンスターが標的になったという話は聞いている。
ただ、普段であれば討伐隊を編成して討伐するような集団と戦うといった内容は聞いたことがない。
聞いたことがないのだが……今回一緒に試験を受ける面子の中には、ぶっ飛んだ噂を持つ冒険者が二人いる。
そして普段と比べ、同時にBランク昇格試験を受けるメンバーも多い。
「中々難しいとは思うよ。だから、上手く撤退出来たのであれば、それまでの戦闘はちゃんと評価するよ」
「はっ!!! ざけんじゃねぇよ! そんな面白過ぎる奴らから逃げるとか、ぜってぇあり得ねぇだろ!!!!」
全くあり得ない話ではない。
寧ろ彼らがまだCランクという事実を考えれば、戦況を冷静に判断して逃げてもおかしくない。
冒険者としては、そういった冷静な判断を下せることが長生きできるコツではあるものの……この場に居る者たちは皆、長生きするために冒険者として活動している訳ではない。
そこはティールやゴルダも同じだった。
「ふふ……今回の受験者たちは特に活きが良いね。それじゃあ、三日後の九時に東門前に集合してね」
絶対に忘れてはならない試験開始なとなる時間を告げ、ロズルは部屋から出て通常業務へと戻る。
(……キングワイバーンだけではなく、他四体を率いる集団との戦闘が今回の試験内容なのは……二人がいるから、
というのは明白そうね)
シャーリー、バルバラ、ゴルダの三人は自身の実力に自信を持ちながらも、冷静な頭を……判断力を持つタイプの冒険者であるため、何故今回の昇格試験内容がこれほどまでにハードなのか、完全に理解していた。
「んじゃ、三日後の為に今からバトっとくか!!!!!」
お前が戦いたいだけだろ、と全員がツッコミたいものの、今のうちに各自の戦力を把握し、連携やスイッチのタイミングなどを確認しておくのは悪くなく……即席で組むことを考えれば当然の打ち合わせ。
「……そうですわね。今のうちに互いの手札を確認しておきましょうか」
「はっはっは!!!! それじゃ、さっさと訓練場に行こうぜ!!!!!」
我先にと部屋から出て訓練場へと向かうバゼス。
バゼス程声高らかではないが、歩く足取りが非常に軽いゼペラ。
顔を見ずとも背中から戦る気満々なのが見て取れる。
(……どうしようか? 多分、前衛過多だよな)
ラストやシャーリーと共に訓練場へ移動する途中、ティールは真剣に今回の昇格試験に揃った面子のことを考えていた。
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