破壊される?

基本的に女性冒険者は、気に入った相手であれば貴族出身の令息との結婚は寧ろ望むところ。


だが、シャーリーはあまりそういうのに乗り気なタイプではない。


「やっぱり、伝えられたら答えないと駄目だと思う?」


「そりゃ答えないと駄目という義務はないと思いますよ。ただ……仮にその時、シャーリーさんにお付き合いしてる人がいる。もしくは結婚して伴侶がいて……子供までいたりしたら、あれですね。脳が壊される? という状態になるんじゃないでしょうか」


「ふむ……その結果、何をしでかすか解らない状況になる、という事か」


「勝手な俺の予想だけどね」


「いや、俺も同じ結論に至った」


最低でもこの話を聞いて、二人が最悪の結末に至るかもしれないと思った。


「……常識が全て通じなくなる、ということよね」


「言い方は悪いですが、貴族ですからね。そういう可能性は十分あり得るかと」


因みに……そういった色恋関係でぶっ飛んだ行動を起こしてしまうのは権力者に限った話ではない為、オリアスが全てに絶望して何かやらかしてしまう可能性は十分あり得る。


「仮に恋人、もしくは結婚して子供などが出来たら、ギャルバ様に報告はしておいた方がいいかもしれませんね」


これもティールの勝手の想像ではあるが、ギャルバは……いざとなれば子供斬り捨てられる覚悟を持っている様に見えた。


「まっ、シャーリーさんがヴァルター様とくっ付かなければ、そういう未来に発展する可能性は一応下がるので、最低限そこさえなんとかする……というか、普通に避けていれば問題無いかと」


「ふ~~~ん……私、遠目からチラッとだけしかオリアス様のお兄さん見たことないのだけど、そんなに何もかもが完璧な人なの?」


「そこまでプライベートなことは知りませんけど、少なくとも戦闘面に関してはあのスキル二つを除いても、頭一つ抜けてると思います」


「……やっぱり、オリアス様がヴァルター様を越えるのは厳しそうね」


貴族から依頼されただけということもあり、そこまでオリアスに対して強い感情などは持っていない。

ただ……それでも兄を越えたい、自分という存在を他者に認めさせたいという強い意志は感じ取れる。


だからこそ、シャーリーの力になってあげたいという気持ちも本物だった。



「マスター、実際のところヴァルター様の弟が、ヴァルター様を……一瞬でも越えられると思うか?」


「さぁ、それはどうだろうな。世の中……絶対にあり得ないと断言出来ないことばかりだからな。それに、オリアス様もヴァルター様と同じ血統ってことを考えると、他のあり得ないと比べて起こる可能性は高いと思う」


可能性はゼロだと断言出来ない。


しかし、ティールは一つ欠点があると考えている。


「まっ、問題があるとすれば、オリアス様の努力がいつまで続くかってところだな」


「……ヴァルター様の様に、元々誰に言われずとも、傍に誰かおらずとも努力を続けられるタイプかということだな」


二人はオリアス様の存在を知っていれど、中身は詳しく知らない。

元々超優れた先天性スキルを持っているという理由で、一方的にヴァルターを嫌っているという事情もあって、二人のイメージは今のところマイナス。


今は張り切って頑張っているかもしれないが、シャーリーが指導係の期間が終わった場合、どうなるか……あまり良い未来が予想出来てない。


「もしかしたら、専属の指導係になってもらうよう、父親に頼み込むかもしれないな」


「シャーリーさんにとっては可哀想な未来だけど、全然あり得そうだな」


Cランク冒険者から、伯爵家令息の指導係……普通に聞けば、出世と捉えられる内容ではある。


安定した給料が懐に入り、わざわざ危険な冒険をする機会など殆どなくなる。

それらを聞くと確かに出世と思われてもおかしくないが、シャーリーからすれば本当に勘弁してほしい申し出だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る