本件が絡んでいなければ
(今日は何を教えようか……ってか、そもそも聖剣技と暗黒剣技はある程度扱えるようになったんだから……俺って必要ないんじゃないか?)
もう自分たちはヴァルターの指導係卒業なのではと考えながら歩いてると、通りすがりの騎士に制止させられる。
「すまない、こっちに寄って頂けないだろうか」
「あ、はい。分かりました」
何故いきなりそこまで面識のない騎士に言われたのか直ぐに察し、ティールは言われた通り数歩後ろに下がる。
「……もしかして、あの人がオリアス様の指導者? なんですか?」
「その通りだ。先日、腕前を見せてもらったが、中々悪くなかった。君たち二人には劣るかもしれないがな」
殆ど面識がない騎士もティールとラストの凄さを同僚からの口伝で把握していた。
そんな二人の実力と比べるとやや見劣りするが、歴戦の騎士が唸る技量を有している。
(へぇ~~~~……ヴァルター様、オリアス様の件がなければ、うっかり惚れそうなほど美人で……強いな)
オリアスの指導係として呼ばれた女性冒険者の名はシャーリー。
淡い水色の髪をポニーテールに結んでおり、やや幼さが残るものの凛とした美しい容姿の持ち主。
スタイルも文句なしのバランスであり、ティールの好みを捉えていた。
「先程、オリアス様の指導冒険者を見ました」
「僕も先日チラッとですが見ました。とても美しい女性でしたね」
「……ヴァルターさん。仮に……万が一オリアス様の指導冒険者……シャーリーさんと遭遇してしまっても、絶対にそう言った言葉を口にしてはダメですよ」
「??? は、はい」
オリアスも中々の美男子ではあるが、ヴァルターはその一歩上を往く美男子。
加えて……性格的に、オリアスはそういう事を思っても中々口に出来ないタイプ。
大してヴァルターはナンパが得意という訳ではないのだが、サラッとそういう言葉を口に出来てしまうタイプ。
年齢さを考えると、シャーリーがヴァルターのそういった言葉にキュンッ、としてしまうことはないのだが、オリアスよりもヴァルターの方が可愛い存在だと思ってしまうと、当初の予定が崩れてしまう。
「よし……では、ヴァルターさん。今日は俺たちから何を教わりたいですか?」
「えっと、どういうことですか?」
「正直なところ、俺もラストもこれ以上聖剣技と暗黒剣技の技量を上げる方法、切っ掛けなどを知りません」
切っ掛けを知り、技量は飛躍的に向上した。
後は訓練と実戦を繰り返し、研鑽を繰り返していくしかない。
「なので、これからはヴァルターさんが何か知りたい、覚えたい攻撃や戦法などがあれば、自分たちに教えられる範囲であれば教えていこうという方針に決まった」
「…………ティールさんは、戦場を驚異的な早さで駆け回りながら武器を振るい、同時に魔法を発動していると聞きました」
「そうですね。俺の強味の一つです」
「そのやり方を、教えていただけないでしょうか」
聖剣技と暗黒剣技はヴァルターの先天性スキル。
ヴァルターは接近戦だけに特化したタイプではなく、既に複数の属性魔法を習得している。
だが、戦闘中に戦場を駆け回りながら攻撃魔法を放てるテクニックはない。
「分かりました」
「い、良いんですか?」
「えぇ、勿論ですよ……どうかしましたか?」
「いや、その、自分で言っておいてあれですけど、絶対に断られると思ってたので」
「あぁ~~~~~、なるほど。俺としては、自身の感覚を伝えるだけです。特に特別な方法があるわけではありませんから、そもそも本当に役立つかは分かりません」
魔法を詠唱なしで発動、戦場を縦横無尽に駆け回りながら武器を振るい、同時に発動するテクニックに関しては、ティールの明確な才能と言える部分が大きく関わっている。
それでも良ければと前置きをしてから説明を始めた。
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