気付かせてくれる出会い
「ん~~~~……そういう内容だと、ヴァルターさんから動いて関係を改善するのは難しいかもしれません」
「っ……何も、方法はないのですか?」
「その、自分もまだ子供なのでこれが最善という案は思い浮かびませんが、ヴァルターさんがオリアス様たちに何か言葉を掛けたとしても、余計に関係が拗れそうとしか思えなくて」
「おそらく、マスターの言う通りになるだろうな」
ヴァルターはティールが思い浮かんだ制御方法、扱い方を学んだことによって才能が開花し始めている。
ティールとラストという冒険者を特別教師として雇った……まずこの件だけで、更に妬みや嫉みといった感情を買ってしまっている。
「多分、俺やラストが何か伝えたとしても、素直に聞いてくれるとは思えません」
「こう言うのはあれだが……ヴァルター、お前は強くなった。一皮むけたとでも言えば良いか? 加えて、お前は俺やマスターと別れた後も努力を続けるだろう」
「は、はい! 勿論です!!!」
非常に良い気合である。
だが、兄弟との関係といった点に関しては……より悪化させる結果に繋がる。
「それは良いことなのだが……弟、兄からすれば目障りと言うか……天才が努力するなよ、と思われるかもしれない」
「っ!!!!!」
まだ……まだ兄弟たちのことを、血の繋がった家族だと思い、自分が諦めなければ仲良くなれると思っている。
そんな幼くも清い心を持つヴァルターには厳しい現実を突き付ける内容だった。
「……俺も、授かったスキルの影響から強くなる為に本格的に努力するのが早かったから、その成果もあって同世代の子供たちとはあんまり仲が良くなかったんだよ」
「マスターと同世代の男子に関しては、自分とあいつは違う……明確な違いという感覚があるからこそ、あいつは嫌いだ……そう割り切るだけで済んだのだろう」
ラストの想像通り、ティールと……ティールのことが嫌いな筆頭男子、マックスは憎さや嫉妬を暴走させて殺そうとまではしなかった。
「しかしだな、ヴァルター……お前とオリアスや他の兄弟は、血の繋がった兄弟なのだろう」
「はい。そう、です」
実はヴァルターだけ捨て子を拾った……などといった変なドラマはない。
正真正銘ギャルバとフローグラ夫人の間から生まれた令息。
「であれば、何故あいつだけが特別なのか、何故俺にはあいつと同じ様な力がないのか……そう思ってしまうのが自然な流れなんだ」
「で、では……もう、関係は修復、出来ないんですか」
「…………マスター、何か良い案はないのか?」
ティールほど頭が回らないラストは即座にギブアップ。
目の前の今にも泣きそうな顔をしている弟子(仮)の思いに応えてやりたいとは思う。
しかし、平凡な考えしか思い浮かばず、戦闘力だけではなく思考力もレベルが違う主人へと託した。
「………………」
必至に悩む。
一緒に訓練場に居る騎士と魔法使いも何か良い案はないかと考える。
「……おそらく、ですが……俺は俺で、ヴァルターはヴァルターなんだと……そう思える機会、もしくはそう思わせてくれる最愛の人と出会う。これが、最善の策と言いますか……自分の頭では、これしか思い浮かびませんでした」
俗に言う、運命を変える機会、出会いがあれば今よりも良好になる……という案が精一杯だった。
騎士と魔法使いはなるほど、と思いはした。
ティールの案を聞いてそれを名案だとは思ったが……そういった機会、出会いはそう簡単に用意出来るものではない。
「難しいことに変わりはないが、それが最善の案なのかもしれないな。とはいえ、それを気づかせてくれる相手はどうやって用意するんだ?」
「そこなんだよな~~~。正直、ギャルバ様が色々と考えて用意したところで、オリアス様でも勘付きそうだからなぁ~~~」
どう考えても難しいことに変わりはない、が……まだ十歳になっていないオリアスだけに限れば、絶対に不可能という話ではなかった。
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