役割に忠実に
(こいつら、マジでいったい何なんだっ!!!!)
自ら首を突っ込んでおいて吐く言葉ではない。
だが、馬車を襲っていた盗賊が使っている武器などの質、黒装束の男たちの技量。
どれも一般的な襲撃者のレベルを遥かに超えており、その戦闘力は本物だった。
「貴様ッ!!! いったい何者だ!!!!!」
黒装束の男が前に出て戦うティールに尋ねるが、逆に問われてしまう。
「お前らこそ、一体何者だ!!! 貴族の馬車を狙うとか、アホ丸出し、だろっ!!!!」
「がっ、ぁ」
尋ねた男が言葉を返す前に、雷刃が首を斬り裂いた。
ティールは馬車を守っている人達が直ぐ傍に居る手前、主にモンスターが使うスキルこそ使用しないが、その他のスキルを全開で使用。
馬車を守る騎士や魔法使いに攻撃が当たらない様に調整しながらも、全力でおそらく屑であろう者たちの命を奪っていく。
「まずはそのガキを殺せっ!!!!!」
襲撃者たちのリーダーは思わずそう言わずにはいられなかった。
時間にすれば二十秒足らずの時間ではあったが、その間に腕の立つ暗殺者が二人も殺された。
これ以上観察せずとも解る。
この戦場で一番危険な存在は……いきなり自分たちの戦いに割って入ってきた少年だと。
故に、まずは第一に少年を殺すために盗賊も含めて動いた。
(チャンスだ)
ラストは主人が敵を引き付けている間に騎士、魔法使いたちにポーションとマジックポーションを配布。
何故自分たちに……とは問わない。
そんな門答を行っている間に、せっかく襲撃者たちの意識を引き寄せてくれている少年が狙われ続ける。
騎士たちはラストに感謝の言葉を一言だけ述べ、一気にポーションを煽る。
(さて……とりあえず、構えておくか)
騎士たちは賊や暗殺者が背を向けている絶好のチャンスに向かって走り出し、魔法使いたちはそれを援護する。
魔法使いたちを守るために二名の騎士だけは盾として残り続けるが、まだ残っている敵の数を考えると、少々心伴い。
ラストとしては今すぐにでも駆け出して戦闘にがっつり加わりたいが、ティールがいれば賊や裏の人間を倒せると確信している為……不意を突いてくるかもしれない襲撃者から彼らの身を守るためにその場から動かなかった。
「こ、小僧! 依頼者が誰か解ってるのかっ!!!!」
「知らん!!! お前らこそ、人を殺そうとしてるんだから、自分たちが殺されることもあるって、解ってるんだろうなッ!!!!!」
もう首を突っ込んでしまったこともあり、今更引き返すことなど不可能。
そして、自ら首を突っ込んだことは後悔していない。
「ふんッ!!!!」
「ごはっ!!??」
「ッ!! てめぇら、逃げてんじゃねぇぞ!!!!」
黒装束の男たちは騎士、魔法使いたちの援護もあって無事に討伐成功。
盗賊たちは黒装束の男たちに使われていただけであり、最後まで戦う義理はない。
そのため……依頼者である男達が全滅するのを察し、何人かの盗賊は事前に逃げ出そうと考えていた。
「おらっ!!!!!」
「「「ッ!!!???」」」
扱っていた武器こそ、盗賊が持つには少々上等な物ではあったが、防具は大した物ではない。
そんな状態でティールに背を向けるなど、殺してくれと言ってるのと同じだった。
一瞬のうちに幾つもの刺突が放たれ、決して小さくない風穴を開けられ、結果として証拠を吐き出すことが出来る人物こそいないが、馬車を襲撃していた者たちを返り討ちにし、全滅させることには成功した。
(はぁ、はぁ……対人戦の、腕は、明らかにBランク以上だったよな……俺やラストを、ダンジョン内で襲ってきた奴らより、数段上だった、な)
正確にはヤドラスの遺跡でティールたちが偶々遭遇してしまった黒フードの集団よりも一枚上手といったところであり、ティールとしては一度乗り越えた壁ではあるものの、数はその時よりも確実に上だった。
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