追放は勘弁だが
冒険者ギルドの職員、そして討伐隊に参加した冒険者たちの恨みを買っているとは知らず、二人は再出発時と同じく特に目的地を決めずに歩いていた。
目的地を決めていないため、討伐後に直ぐ出発。
それはそれで怪しいと思ったギルド職員もいたが、本人たちがいなければ調査のしようがない。
一応アリバイと言えなくもない点もあるため、他のギルドにも呼び掛けて調査する必要がないという結論に至った。
「マスター……報告しなくても良いのではと提案した俺がこんなこと言うのもあれだが、問題になってないだろうか」
「……仮に問題になってたとしても、最終的にそうしようと決めたのは俺だ。今更ラストがあれこれ考える必要はないよ」
「そうか。それなら、良いのだが」
リーダーで主人であるティールがそう言うのであれば、ラストとしてもこれ以上先日の一件については考えない。
「討伐隊に参加した人、後はゴブリンジェネラルやヴァルガングに恨みがあった人には申し訳ないと思うけど……実力主義の冒険者なら、そういう部分で恨みを持つのはダメだと思う。理論的な話だけどな」
「……間違ってはいないな」
「そうだろ。一応間違ってはいないんだ。俺たちはゴブリンとウルフ系モンスターの群れを倒せるだけの実力があった。だから誰にも相談せずに自分たちだけで倒した。同業者たちに被害を与えたりした訳じゃないんだ。ギルドが怒ってたとしても、厳重注意で済むはずだ」
ギルドからこれ以上勝手な行動を起こすようなら、ランクアップさせないと言われても……ティールとしてはそこまで困る内容ではない。
冒険者ギルドから追放すると宣言されたら流石に困るが、それはそれで冒険者ギルドとしては絶対に選べない選択。
何故なら……ティールとラストというタッグの戦闘力が異常過ぎるから。
現時点でもトップクラスに食い込める実力を有している。
そこに加えて、二人は年齢などを考慮すればまだまだ伸びしろだらけ。
冒険者ギルドはギルドに所属している冒険者を好き勝手に動かせる訳ではないが、それでもいざという時になれば冒険者側も動かなければならないため、ある意味縛りがあると言えなくもない。
そういった大人、組織の事情が関係してくる内容に関して……ティールはこれまでの経験からある程度把握していた。
「ッ! マスター」
「武器と武器がぶつかってる音、だよな」
「おそらくその通りだ」
二人は不意に耳に入ってきた音に即反応。
ダッシュで音が聞こえる現場に向かうのだが、ティールは寸でのところでラストに待ったを指示。
その指示に対して感じた違和感は一瞬内に吹き飛んだ。
(あの組み合わせは……いったい何なんだ?)
一つの馬車を襲う者の中に盗賊と……明らかに盗賊とは異なる服装をしている人物たちがいた。
(あれはどう見ても、森林暗危で俺たちを狙ってきた連中と同じ、裏の人間……だよな?)
パッと見黒ずくめの男達が盗賊に交じり、馬車を守る騎士や魔法使いたちを襲撃している。
ただ、騎士や魔法使いたちも負けておらず、一進一退の攻防が続いている状態。
ティールはもしかしたら自分たちの援護は必要ないかもしれない……そう考えた瞬間、馬車を守る前衛の一人が重傷で倒れた。
「ッ!! ラスト、お前は守備だっ!!!!」
「了解!!!!」
声でこちらの存在が知られてしまうなど、知った事ではない。
明確に仲間へ指示を伝え、ティールは愛剣である二振りを抜剣。
強化系スキルを全力で使用し、強化系のマジックアイテムも使用。
(油断してたら、こっちが殺られるッ!!!!!)
疾風瞬閃、豹雷を抜剣したティールは全力で戦場に割って入り、風刃と雷刃を振るう。
「「「「「「「「ッ!?」」」」」」」
突然現れた竜人族の青年と人族の少年。
彼等はこの戦場において、確かな異分子だった。
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投稿ミスをしてしまいました。
申し訳ありません。
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