尽きない興味
「おらよ、ジン。お前の新しいロングソードだ」
「お、おぅ。ありがとよ、おやっさん……にしても、本当に造ったんだな」
「んだよ、気に入らねぇ点でもあるのか?」
「そんな事言ってねぇだろ。マジで……本当に良い剣だよ」
冒険者としてそれなりの武器を視てきた。
そんな武器たちの中でも、親方がジンの為に造ったロングソードは、トップクラスの武器だった。
「でも、あれだな。こんな良い武器を造るのに、アサルトレパードの素材とか、ミスリル鉱石を使ったんだろ……なぁティール、何が望みなんだ?」
「別に見返りとか求めてないですよ。アサルトレパードの素材に関してはまだ残ってますし、全然気にしなくて大丈夫ですから」
「元冒険者として、そういう訳にはいくかって話だ」
元冒険者として……そういった言葉を出されては、ティールも返答の言葉が詰まってしまう。
「……あれですよ。ジンさんは俺の疾風瞬閃をくれたじゃないですか。だから、それのお礼みたいなもんですよ」
「あぁ~~~……いや、でもあれは旅立ち祝いみたいなもんだしな」
「ごちゃごちゃ考えず、弟子が良いと言ってんだから素直に受け取っとけ」
「う、うっす」
親方の言葉により、ジンはもうこれ以上新しいロングソードの件について何も言わなくなった。
「ところでティール。お前、いつまでここに居るんだ?」
「えっ、早く旅立った方が良い感じですか?」
超ショックと早とちりするティール。
「アホか。誰もそんな事思ってない。村人たちとしては、もうこのままずっと住んで欲しいと思ってるだろうな」
「それは……無理ですね。まだまだ冒険したりないんで」
「だっはっは!! ティールらしいな。あれか、別の国にも行く予定はあるのか?」
「別の国、ですか…………超興味ありますね」
まだまだ国内での冒険を終えてはいないティールだが、自身が育った国以外での冒険に興味がない筈がなく、非常にテンションが上がる案件。
「別の国に行くのは良いけど、あまり問題を起こさない方が良いわよ」
「それは勿論解ってますけど……えっ、そんなに問題起こしやすいって思ってるんですか、リースさん」
「だって……ティール、あなた売られた喧嘩は買うでしょ?」
「冒険者だからって訳じゃないですけど、売られてもスルーは出来ないかと」
男として……戦場に身を置くものとして、あまりそのままやり過ごすというのは好ましくない。
その気持ちに親方とジン、ラストは大いに賛同。
「でも、最近はあまりにくだらない挑発とかだったら、軽く流してますよ」
「本当?」
「はい。何と言うか……そういう場面を色々見てきて、逆に同じ歳……歳上の冒険者であっても、普通に仲良く接してくれる人はいます。そういう事実を考えると、なんだが怒りを通り越して可哀想に思えてきて」
それなりに冒険者経験があるジンは弟子の考えが解らなくもなかった。
(そういう領域に辿り着いたか……って、いくらなんでも早過ぎねぇか? 最低でも、そういう考えを持てるのは二十を過ぎてからだと思うんだけどな)
いったいティールの頭がどうなってるんだ?
そういう思いが浮かぶも、ティールだからという理由で無理矢理納得した。
「ティール、そういう考えで無駄な喧嘩を避けられたら一番だけど、あまり他の同業者の前で言っちゃ駄目よ」
「解ってますよ……というか、そういうのは冒険者を目指そうとしてる子供たちに伝えた方が良いんじゃないですか?」
十三から十四に成長したとはいえ、まだまだクソガキな年齢であることに変わりはないが、考え方はやや歳不相応であり、ある程度の冷静さも持っている。
だが、ティールに憧れる村の子供たちは……このまま順調に成長すれば、確実に同世代の者たちより高い実力を身に付ける。
そうなった場合、どうしても同業者に対してデカい態度を取ってしまう可能性がある。
一度や二度程度であればまだしも……そんな態度を取り続けてしまえば、孤立してしまうのは火を見るよりも明らかだった。
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