彼らが決めること
「って感じで、五人ともこのままいけば、十分Dランクモンスターが相手でも戦えるようになると思いますよ」
「思ったより気張ってたんだな」
「シーアも気合が入ってたみたいね」
子守を終えた夜、今回はリースも交えて今回の子守について二人に報告を行っていた。
「俺から見ても、五人は上手く戦えていたと思う。これからに期待という部分はあるが、それでも教わったことを実戦に出せるだけの力は持っている」
「現役の連中にそう言ってもらえると、あいつらに指導してる俺としては嬉しいね」
「…………ねぇ、ティール。あの子たちが、冒険者になりたいって言ったら……どうする」
師からの質問に対して、正直なところ……最後に決めるのは彼らとしか言えない。
「本人達が強く希望するなら、止めることは出来ませんよ。ただ、お二人の指導を真面目に受けて、実戦でしっかりとその成果を出せている。それを考えると、この村から下手に出なければ……よっぽど強いモンスターと遭遇しない限りは、天寿を全う出来るかと」
「……あのガキ共が冒険者になった場合、どうなる」
「また難しい質問ですね……あと数年、真面目に訓練を積めば、同年代の冒険者たちよりは強くなると思います。ただ、俺は体験してきたんで断言します。ルーキーが一定ライン以上の強さを持っていれば、横だけじゃなくて上からも嫌われます」
全員が全員才能、実力がある者を嫌う訳ではない。
しかし、大半の者たちがその才能と実力に嫉妬してどうにかして排除しようと考える。
気にせず暮らせば良いのに、大人げなさなど無視して潰そうとする。
「数年後……お二人の眼から視て、ベテランに目を付けられても対処出来るほどの実力を身に付けたなら、学園に通わせずとも冒険者になっても良いんじゃないですか」
「弟弟子たちには、危ない目にあってほしくない、って思わないんだな」
「……そりゃ冒険者として活動すれば、いくらでも危険に遭遇しますけど、その分楽しい事だってあるのは知ってます。なのに、危ないからって理由であいつらの行動、勇気を踏みにじることは出来ませんよ」
本音を言えば、ティールとしてはロウたちにあまり自分と同じ道に進んで欲しくないとい。
とはいえ……そんな自分にロウも含めて憧れており、敬意すら持っている。
そんな彼らに対し、死ぬ可能性が高いから止めとけ!! とは言えない。
「まっ、それもそうなんだけどよぉ……」
「それにあれじゃないですか。この村だけだと、男子としては嫁があまり多くないから、そこも心配するポイントじゃないんですか」
「……なるほどな。一財産築いてちゃんと戻ってきてくれるなら、村としても有難くはあるな」
「そうね~。村長さんもそこら辺をどうにかしないとって考えてるみたいだし……可愛い子たちには、旅をさせないと駄目なのかしら」
村の繁栄など大それたことは考えておらず、村長としてはせめて村は存続させたいと本気で悩んでいる。
「とにかく、あいつらが本気なら……二人がしっかりラインを決めて実力を測って、後はこれまでの経験から気を付けないと駄目なことを、全力で叩きこむしかないんじゃないですか?」
「おいおい、ティールはそこら辺教えてやらねぇのかよ」
「俺の場合は特殊と言うか、結構力技で解決してきたんで、あんまりロウたちの参考にならないと思いますよ」
「……そうだったな。でも、お前やラストの意見も参考になる。一緒に考えてくれ」
「分かりました」
ティールはまだ次の目的地を全く決めていないため、昼間は村人たちの手伝いや子供たちの訓練相手となり、夜は師二人とラストと一緒に、将来冒険者を目指す……かもしれない子供たちに、絶対に教えなければならない項目などを考える……そういった日々を何日も送った。
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