お詫びの品
「レグレザイアさん……やっぱり、俺たちは失格か」
「はっはっは!!! バカなことを言うでない。儂が途中で手を加えなければ、そもそもティール。お主だけの攻撃で終わっとったわ!!」
「……へっ?」
まさかの回答に固まる。
間抜けな声は出なかったが、レグレザイアから伝えられた言葉が予想外だったのはラストも同じだった。
「それに、最後のラストの攻撃で儂は全力ではないとはいえブレスを放った。どう考えてもお主らの勝ちじゃよ」
「そ、そうなん、ですね。はぁ~~~……よっしゃッ!!!!!!」
何はともあれ、己の力でレグレザイアが用意した壁を乗り越えた。
その事実を嬉しく思い、両腕を上げてガッツポーズを取る。
「……岩窟竜殿。一つ質問しても良いか」
「あぁ、構わんよ」
「何故……わざわざ俺たちの攻撃をそこまでガードした」
先程放った一撃、自分でも会心の一撃が放てたと思う。
そんなラストの自己感想は間違っておらず、二撃目を託したティールもその威力に目を丸めて驚いた。
「ふっふっふ、痛いところを突くのう」
確かな自信を持てる一撃ではあったが、到底レグレザイアの命を一撃を奪えるとは思えない。
ラストの考えは……少し違っていた。
放たれた斬馬刀による会心の一撃は、当たり所が悪ければレグレザイアといえど、重傷に繋がっていた可能性が高い。
そして……ティールが放った渾身のブレイクスラッシュも含めて、確実にレグレザイアの闘争心に火を付ける威力を有していた。
「儂はお主らを気に入った。だからこそ、今回の様な試練を出した。だがな……お主らが放った攻撃を食らえば、
ドラゴンの本能が刺激されてしまうというものよ」
「……なるほど、理解した。非常に光栄なことだったのだな」
「はっはっは! まっ、そういうことじゃな!」
「………………なるほど!!!」
数秒後にティールもレグレザイアが何を言ったのかを理解。
ラストの言う通り、とても光栄なことだと感じた。
ただ……それと同時に、Aランクモンスターを二人で倒すという壁の厚さを改めて感じ取った。
(俺とラストは、じっくりと溜める時間があったからこそ、レグレザイアさんが警戒する攻撃を放てた……でも、実戦ともなれば話は別だ)
これまで何十、何百、何千と戦闘を経験したからこそ、戦闘中に今持てる最高の一撃を放つのが、どれだけ難しいか理解している。
「ほれ、儂の涙をやろう」
「ありがとうございます!!!」
亜空間から用意していた超ビッグサイズのビンを取り出し、その中に無理矢理捻りだされた涙から数滴零れる。
たった数滴でビンは一杯になり、目的は達成。
「ところで、涙の件が終わっても冒険者たちはまだまだ来ると思いますけど、構わないんですか?」
「お主らの様な面白い連中ばかりであればちっときついが、そんな連中はそうそうおらん。しばらくは退屈しない日々が続くと言ったところ。だからお主らは何も心配せんで良い」
「そう、ですよね」
二人は頭を下げ、下山しようとしたところで、レグレザイアは待ったと口にする。
「ほれ、持ってけ」
「「ッ!!!???」」
唐突に投げられた物は……いくつかの鱗と尻尾だった。
「えっ、あの……えっ?」
「なんだかんだで約束を破ったみたいなもんじゃからな。ほれ、持ってけ持ってけ」
「……あ、ありがとうございます」
再度偉大なドラゴンに頭を下げ、今度こそ二人は下山。
(いやはや、本当に良い一撃をかましおるわい……どうせなら、戦っても良かったか? しかし、それなら二人がもう少し成長してからの方が……う~~~~む、悩ましい)
気に入った人間とはいえ、ドラゴンの本能的には是非とも戦いたい相手だった。
しかし、成長したら未来の二人を楽しみにし、ぐっと本能を堪えて次の挑戦者を待つ。
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