その道に近づけば、死

大きな爆発音を耳にし、順番待ちしている者たちの意識が集中。


その結末が解るまで……誰一人として言葉を口にする事はなく、時間だけが経過。

しかし十数分後、ボロボロになりながら山の方から現れた一組の冒険者たと。


ティールは即座に気配感知をとある方向に全集中。


(……うん、まだ全然気配があるな)


戻ってきたパーティーが討伐しながらもボロボロな状態になった、という訳ではないことにホッと一安心。


他の戦闘者たちも同じ表情を浮かべる。

そんな者たちを見て岩窟竜との戦闘を終えてボロボロな冒険者たちは、少しばかり文句を吐きたくなる気持ちが芽生えたが、自分たちもそっち側だったことを思い出し、何も言うことはなく時が過ぎた。


そしてティールたちの番が来るまでいくつものパーティー、部隊が岩窟竜に勝負を挑んだが、結果として討伐に成功したパーティーはゼロ。


運良く鱗などを持ち帰ることが出来たパーティーは、それだけで満足気な表情を浮かべていた。


「ようやく、か」


腰を上げ、山の中へと向かう。


たった二人という少人数で向かう背中に「お前らが行ったところで時間の無駄だから、俺たちに変われ」と告げたい者が何人もいた。


だが仮にもここまで辿り着いた冒険者。

喧嘩を売るような真似をすれば……殺し合いに近いバトルに発展してもおかしくない。



「……ちょっとぐらいモンスターがいるかと思ったんだが、殆どいないな」


「多くの冒険者や騎士たちが岩窟竜の住処へと向かった。それまでの道中で全て葬ってきたのだろう」


「ってなると、あまり考える頭がないモンスターたちでも、ここら辺をうろつけば殺されるって脳に刻まれたのか」


「十分あり得そうだな」


これからAランクモンスターと対面するには、あまりにもリラックスしている。


意識して精神状態を落ち着かせている……わけではない。

二人は確かにこれからAランクモンスターと遭遇するのだが、決して命のやり取りをしに来たわけではない。


故に、基本的にいつも通り……ややワクワクした状態で道中を進む。


「あそこ、だな」


「そうみたいだな」


とはいえ、岩窟竜の圧が届く距離にくれば、自然と表情が強張る。


岩窟竜本人は、特に自分の元へ来る人間たちを警戒はしてない。

ただ……そこにいるだけで、戦闘者たちに圧を感じさせる存在感を持っているだけ。


「ふむ、二人だけの挑戦者とは珍しいな」


流暢な人の言葉を発する……巨大なドラゴン。


(これが……正真正銘、マジのドラゴン!!!!)


(圧倒的な存在感、という言葉だけでは全く足りない!!)


目の前の存在に、完全に脚を止めてしまった。


(ふむ……闘志が感じないな?)


目の前に現れた存在が自分に対し恐怖、恐れを感じるのはいつものこと。

しかし、それらの多くは直ぐに恐怖を耐えて闘志をむき出しにする。


今回自分の元にやって来た人間は既に恐怖を耐える……どころか、克服している。

ただ戦闘者として肝心な闘志が感じられない。


「岩窟竜、レグレザイア。あなたと少し話がしたい」


「話、とな? 儂を殺しに来たのではないのか?」


「殆ど死ぬと解っていて、生き残れるであろう面会で、わざわざ死のうとは思いません」


「ほぅ……珍しい人間、いや子供だな」


完全に警戒を解くことはない。

やって来た人間は、自分にあなたを殺せるほどの力はないと口にした。


だが、伊達に生きていないドラゴンには解かる。

攻撃力に限っては、上手くやられた場合……自分の命に届く可能性を秘めていると。


「こうして死なずに高位のドラゴンと喋れる機会は滅多にないので、どうせならと思って」


「……悪くない考えだ」


色々と聞きたいと思ったティールは、亜空間の中から色々と取り出し……料理を始めた。


その光景に岩窟竜は爆笑しそうになったが、人間の邪魔になると思い、心の中だけに留めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る