うっかり死亡
「岩窟、竜? ……超ヤバいドラゴン、ってことっすか?」
「噂だけどな。その超ヤバいドラゴンが、ウリプール付近の山にいるらしいぜ」
狩り、依頼、訓練。
その三つ以外の時間は、全て急速に費やしてきたティール。
訓練も朝から晩まで行うことはなく、昼過ぎには切り上げて稀に歓楽街のカジノに行くこともしばしば。
怠けてはいないが、十分休息取っていたティールの耳に、面白良さげな情報が入った。
「その超ヤバいドラゴンは、何かやってたりするんですか?」
「いや、特に自分から人間に被害を加えてはいないみてぇだぜ」
「えっ……なら、なんでわざわざ割と人の街から近い場所に住んでるんですか?」
「そんなの俺にだって解んねぇよ。単純にあれじゃねぇか、住み心地が良いとか」
モンスターは割と気ままなこともあり、先輩冒険者の言う通り、住み心地を優先して拠点を選ぶ場合もある。
「でも、被害を出してるとか関係無しに、ドラゴンと聞けば挑みたくなるのが冒険者だろ」
「……そうっすね」
超ヤバいドラゴンと聞き、体に僅かな武者震いが起きた。
ラストにとっても非常にヤバ過ぎて畏怖する存在……ではあるが、主人と同じ様に武者震いした。
「まっ、その超ヤバいドラゴンは超強いが、どうやら温厚な性格らしい」
「超ヤバいのに、温厚なんですね」
「ランクが上になれば、そういうドラゴンもそこそこいるらしいぞ。ただ……岩窟竜としても、ただ殺られるわけにはいかねぇんだろう。戦闘に負けてもウリプールに戻れる冒険者もいるらしいが、殺される奴もいるらしい」
「……そのドラゴンも、力加減が完璧ではないのだろう」
「多分ラストの言う通りなんだろうな。挑んでも絶対に生きて帰ってこれる訳じゃねぇから、挑戦者は減ったみてぇだが、強欲な奴らはそう簡単に消えねぇだろうな」
言葉通り、岩窟竜レグレザイアのランクはA。
仮に……仮に討伐に成功すれば、一攫千金ゲットは確実。
素材を利用すれば、装備の質が上がって更に強さが増す。
(気になる……気になりはするが、勝負を挑んでも無駄だろうな)
興味津々ではあるが、喧嘩を売る気が一切湧かないティール。
ラストも一人の竜人族として興味が尽きない存在ではあるが、勇気と無謀をはき違えるほど愚かではない。
しかし……なにはともあれ、次の目的地は決まった。
いつでも準備万端な二人は、翌日にはウリプールへと向かい出した。
「岩窟竜、か……やっぱり、超防御力が高いよな」
「土属性のドラゴンは、ドラゴンの中でも一番強固な鎧を持つ。その分敏捷性は欠けるが、生半可な攻撃では掠り傷すら与えられない……らしいぞ」
同じ竜人族の猛者から聞いた話であり、ラストはその防御力の高さを体験したことはない。
ただ……やはり、無謀な勇気は湧いてこない。
その感覚は正しく、Bランクモンスターとは桁が違う戦闘力を持つ。
今まで何度も修羅場を潜り抜けてきてレベルアップしてきた二人だが、Aランクモンスターには挑むのは……あだ時期尚早。
「……防御力が恐ろしいく高いってことは、多分物理攻撃の威力も高いよな」
「経験上、そう予想出来るな」
人には向き不向きがある。
万能そうに思われるティールでも、不安になる部分はある。
それが防御力。
同世代と比べれば勿論一歩先を行っているが、仮に今ブラッディ―タイガーの爪撃を食らえば……依然として致命傷となりうる。
モロに食らえばの話ではあるが、相変わらず防御面はやや心もとない。
岩窟竜の物理攻撃など食らえば、文字通り潰れてしまう。
そんな戦えばおそらく死ぬであろう超強敵ではあるが……一目見てみたいという気持ちがあった。
(皆、岩窟竜に挑もうとするから死ぬんだよな。それなら……別に挑まなければ、死にはしない、よな?)
ティールはウリプールに到着後、早速岩窟竜が住処を正確に調べ始めた。
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