我慢するしかない
街の案内を終え、夕食を食べながら交友を深めた六人は翌日の朝……早速遺跡へと向かった。
六人はそれなりにモンスターと戦う力を持っているが、今回やって来た目的はヤドラスの遺跡を調査してレポートに纏める。
その為、必然的にティールとラストが襲い掛かるモンスターを全て倒すことになる。
ただ……それはいつも二人が行っていることと変わらない。
襲い掛かって来るモンスターや、気付かれる前に発見したモンスターをサクッと倒す。
そう簡単にヴァンパイアやリザードマンジェネラルと同じ様なBランクのモンスターと遭遇することはないので、二人は調査の時間を無駄にしない様に、効率的に強化系のスキルを使用しながら敵を倒していく。
「……解ってはいたけど、やっぱり二人ともとんでもなく強いな。Dランクモンスターをたった一撃かよ」
「Dランクのモンスターなら、もう今まで何度も戦ってきたからな。サクッと倒すぐらい簡単だ」
その歳で何度も戦ったことがあること自体がおかしいのだが、そのおかしさを身に染みて分かっているので、誰もツッコまない。
「今日は鹿の肉がメインかな?」
「クラッシュディアのお肉は煮込むと美味しいのよ」
「へ~~~、そうなのか。それなら……いや、さすがに野営で煮込むのはちょっと時間が掛かり過ぎるな」
最低でも料理に数時間が掛かるので、クラッシュディアの肉を煮込むのは却下。
だが、焼いても美味しいので特に今日の夕食に関しては問題無い。
森の中に入る前に街で野菜なども買っているが、やはり成長期の六人はがっつりとした肉が欲しい。
大人しい雰囲気を持つララも、意外と肉好き。
(こんなに遺跡に辿り着くまでサクサクと進めるのは本当に有難い……素直に二人の実力を受け入れて正解だったね)
クラスメート、友人があっさりと模擬戦で負けた。
そしてその二人が殺す気で襲い掛かって来るモンスターたちを容赦なく倒している。
そんな光景を観て、あそこで変なプライドを発揮せずに良かったと……心の底からディックスは自分たちの判断は英断だったと思えた。
(あそこで模擬戦を行い、実際にその強さを観たからこそ……二人のことを全面的に信用出来る)
ここまで二人は一切四人の手を煩わせることなく、瞬時に敵を仕留めている。
それは体力を遺跡で使いたい四人にとって、本当に有難い。
これはディックスだけではなく、他の三人も同じ気持ちだった。
ただ、物凄くティールとラストに感謝している四人とは裏腹に、ティールは野営時の見張りについて少し頭を悩ませていた。
(普段なら酸で生み出したモンスターと結界に任せるんだけど……四人がいる前で結界はともかく、あまり酸を使った技は見せたくないな)
見た目以上の強さを持っている。
これについてはもう、基本的に隠すつもりはない。
ただ、奪取≪スナッチ≫というギフトに関してだけは別だった。
結界というスキルを持っている人は決して多くはないが、そこまで珍しくもない。
しかし酸に関しては一般的に人が習得出来るスキルではない。
(でも、結界だけだとなぁ…………流石にぐっすり寝れない。というか、今はこの四人の護衛なんだし、がっつり寝るのはアウトだよな)
ボルガたちも野営の演習授業を受けているので、野営の際に後退で見張りを行うということについて反論や押し付けたい気持ちなどはなく、既に見張りの順番を決めていた。
(それに、酸のモンスターを使わないのであれば、結界だけを見張りがわりにすることになるけど……森の中ならともかく、遺跡の中はちょっとな……いや、リザードマンジェネラルとスカーレットリザードマンの件を考えれば、森の中でも結界だけで夜をがっつり寝て過ごすのは良くないか)
ティールが今考えている愚痴をラストが聞けば、喜んで一日中見張をやるからぐっすり寝ていてくれと言われるが、ティールはラストにそんな無茶をさせるつもりは一切ない。
(……仕方ない。これは冒険者の仕事だ、きっちりやろう)
今一度依頼を完全に達成する前に気合を入れなおし、周囲を警戒しながらヤドラスの遺跡に向かう。
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