その心は消えない
「もし武器を買い替える、予備の武器を買うならここがお勧めかな」
まだティールもヤドラスの店全てを知ってる訳ではないが、それでも遺跡で探索する上で必要な物であれば、何処で揃えたら良いのか。
それぐらいは既に頭の中に入っている。
お勧めの店を数店ほど教えられたところで、ボルガは気になっていたことを二人に尋ねた。
「あのさ、二人はなんであんなに強いんだ? 特にティールはまだ……十二歳か十三歳だろ」
「あぁ、まだ十二歳だよ」
「だよな……俺たちみたいな令息や令嬢の中にも子供の頃からとんでもなく強い奴ってのはいるけど……多分、二人の方が上だと思うんだよ」
実際にその子供の頃からとんでもなく強い子供の戦いぶりを、実際にボルガ見たことがある。
それはディックスやソニア、ララも同じ。
そして今日ボルガはラストと、ソニアはティールと模擬戦を行って実際にその強さを肌身に感じた。
ボルガは同じ学園に在籍している化け物よりも、二人が強い。
もし二人の内どちらかと化け物級の生徒が戦っても、ラストかティールが勝つと断言出来る。
「褒めてくれるのは嬉しいな」
「そうだな」
先程まで下に見られていたところを考えると、あまりにも手のひらを返し過ぎでは? と思うかもしれないが、四人からそういった傲慢さなどが感じないので特に二人は気にしていない。
「なぁ、その……ティールは、もしかして貴族の令息、だったりするか?」
「ふふ、何度かそう言われたことはある。でも、俺は正真正銘平民の子供だよ。村出身だし、貴族の隠し子とかでもないよ」
ティールの出生には特別なところはなく、知性と奪取≪スナッチ≫というギフトを授かったところ以外は、平民と変わりない。
「四人とも令息や令嬢なんだし、俺にそういった雰囲気がないことは分かるだろ」
「ま、まぁ……それはそうかもしれないけどさ」
例え貴族特有の雰囲気がなかったとしても、四人がそう予想してしまうことは仕方なく、ティールもそう思われることに慣れた。
ティールの答えを聞いた後、ボルガはチラッとラストの方を見るが、それに気付いた本人は首を横に振った。
「言っておくが俺も種族はお前たちと違って竜人族だが、血統はいたって普通だ」
「そうなのか……話を戻すけど、なんで二人はそんなに強いんだ」
そう尋ねられたティールはいつも通りギフトに関してだけは隠し、村を出るまでのことについて話した。
「……ティールは、あれだな。クールというか……冷静なタイプかと思ってたけど、結構無茶するんだな」
「そうね。普通は子供が一人で森の中に入ってモンスターと戦うなんて、無理よ。というか、家の者たちがまず許さないわね」
「あぁ~~、そうだな。貴族の子供だとそもそも自由に動ける範囲が狭そうだな」
ティールの言う通り、平民の子供と比べれば自由に動ける範囲は広くない。
ティールは村で暮らしていたちうこともあり、森までサラッと村を抜け出して探索していた。
「でも、エルフの先生と元Bランク冒険者の模擬戦相手がいたんだ。それを考えると、平民出身の中でも結構特殊な方ではあるな」
「エルフの先生の元Bランク冒険者が模擬戦相手、か……それは僕たちからしても、羨ましい環境ではあるね」
今のティールの力は、ギフトと努力の量によるところが大きいが、環境による影響も少なくない。
「えっと、ティール君は冒険者になってから何度も危ない目に合ってるけど、怖くないの?」
「そりゃ怖いというか……死ぬかもしれないなって思う時はあるよ」
ララの質問を聞くと、今でも最初に本気で死ぬかもしれないと思った出来事を思い出す。
森を散策している最中に、Dランクモンスターのグレーグリズリーに遭遇。
今まで遭遇してきた中で一番体が大きく、迫力があったモンスターと遭遇し、全力で対応。
放ったウィンドカッターが偶々油断していたグレーグリズリーを斬り裂き、事なきを得た。
「でも、冒険者になって世界を見て回りたいと思ってたし……冒険者にならなかったら出会わなかった人たちもいるし、今さから怖い思いをするからって辞められないな」
冒険者になってからも死ぬかもしれないと恐怖を感じたことはあるが、それでもメラメラと燃える冒険心が消えることはなかった。
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