順調な出世
「やっぱりラストの力は半端じゃないな」
「……竜人族だからな。マスターこそ、その体格で俺と力があまり変わらないというのは……やや異常だと思うぞ」
「はっはっは、これでも頑張って鍛えてきたからな!」
相変わらずな会話をしている二人にニーナのパーティーメンバーであるティーラスが声を掛けた。
「よう、二人とも。良い試合してんな」
「ティーラスさん。どうも、調子はどうですか?」
「良い感じだぜ!! 二人はどうだ?」
「昼は先輩冒険者に飯を奢ってもらったんで……気分は良い感じです」
まだこの街に来て日が浅いティールに飯を奢る先輩冒険者。
いったいどんな冒険者なのか気になり、誰なのか予想しながら尋ねた。
「へぇ~~~、それは良かったな。ちなみにそいつの名前はなんだ?」
「イグラスさんです。まぁ、他の冒険者もそれなりに居たんで、その中のCランク冒険者であるイグラスさんたちが俺ら後輩に昼飯を奢ってもらいました」
「イグラスの奴か。なるほどね」
ティーラスと同じCランクの冒険者。
面倒見が良い性格をしているというのは知っているので、ティールたちが昼飯を奢ってもらったという話に納得。
だが、その場に他の冒険者もそれなりに居たという言葉が気になった。
「二人はあれか、何かの集まりに誘われたのか」
「集まりというか……今度、モンスターの巣を潰すのに参加してほしいってイグラスさんに偶々誘われたんですよ」
「モンスターの巣に……あぁ、あの件か」
コボルトとオークの二種族が巣をつくっているという珍しい話はティールの耳にも入っていた。
(あの件に二人を誘ったのか。さすがイグラスだな、この二人を誘うのは視る眼がある)
二人は冒険者ギルドの依頼を受け、キラータイガーを倒した。
それだけではなく、ティーラスたちを助ける為にレッサーヴァンパイアとヴァンパイアを倒した。
この話は冒険者ギルドに伝わっており、その場にいた冒険者の耳にも入っている。
ティーラスたち六人は二人の実力を完全に信用しているが、話を聞いただけの冒険者たちはいくらティーラスたちが本当だと言っても信じていない者が多い。
「てことは、今日はその作戦会議でもしてたのか」
「そんなところです」
「昼飯を奢ってくれたのは感謝しているが、マスターに無礼を働いた愚か者がいた」
今まで会話に参加していなかったラストが吐き出すように口にした。
「……他にも冒険者がいれば、そんな奴は現れるだろうけが……いったい誰なんだ、その馬鹿は」
冒険者の中ではある程度経験を積んでいるティーラスなので、そういったやんちゃ君が現れてしまうのは仕方ないと思ってしまう。
ただ、二人の……ティールの実力を知っている者としては、本当に馬鹿だなと憐れんでしまう。
「イギルって名前の冒険者です」
「イギル……あぁ、あのルーキーか」
ティーラスの記憶にはそれなりに優秀なルーキーという内容が残っていた。
(スーパールーキーってのは言い過ぎだけど、確かそれなりに優秀なルーキーって感じだったな。まぁ、この二人には負けるだろうけど)
ティールとラストはまさしくスーパールーキーと呼ぶに相応しい実力を持ち、順調に出世している。
(実力はあると思うけど、ちょっと気が強いというか上昇志向があるというか……冒険者らしいっちゃらしい性格ではあるタイプだったか?)
ティーラスがイギルに抱く感想は正しい。
付け加えるならば、まだ相手の実力を視る眼がないという残念な部分がある。
「結局殴られそうになったんでラストと俺で二回吹き飛ばしましたけど」
「ぶっ!! ルーキーはいつも元気ぐらいが丁度良いと思ってるが、お前ら元気過ぎるだろ」
「……俺やマスターは間違ってないぞ。大して実力がないにも関わらず、マスターに殴り掛かろうとしたあの馬鹿が悪い」
「はっはっは!! そりゃそうだぜ。ラストやティールが悪いなんて全く思ってないぜ」
二人から笑わせてくれる話を聞いた後、折角なのでティーラスは二人の模擬戦に参加することにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます