スタミナは大切

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……さ、さすがに疲れたぜ」


虎の獣人であるティーラスはわりと体力には自信があった。


だが、目の前の先程まで模擬戦を行っていた相手にはまだ余裕が見えた。


(そりゃ途中で休憩挟んで水飲んだりしてたが、どう見てもまだまだやれるって雰囲気だな)


ラストはティーラスと同じく地面に腰を下ろし、立つ気力が起こらない。

だが、ラストの主人であるティールだけは地面に腰を下ろさず立っており、もう一勝負できるぐらいの余裕があった。


「はぁ~~~~、実戦での実力だけじゃなくて、体力まで桁外れなんだな」


「色々鍛えたり、実戦でモンスターと戦ってたりしてましたけど、一番メインで頑張ってたのは体力づくりと投擲でしたから」


「そういえば投擲が得意って言ってたな。いや、でも獣人である俺がスタミナで負けるとは思わなかったぜ……なぁ、ラスト」


「あ、あぁ。そうだな……マスターはあらゆる面で、本当に優れていると感じる」


「はは、褒めたって何も出てこないぞ」


お世辞ではなく、超本音。

ティーラスもラストの言葉に同感した。


(人族が俺みたいな獣人族やラストの様な竜人族に劣っているとは思わねぇけど、平均的に見れば差はあるんだ。なのに、あれだけ動き回って俺とラストより歳下のティールが一番元気ってのは……普通は驚くよな)


レベルが上がれば多少は身体能力だけではなく、スタミナも強化される。

しかし根本的な部分は日頃のトレーニングや、体の使い方。


森の中やダンジョンの中であれば、どれだけ上手く力を抜いてやるべきことはやっているのか。

その辺りの調整が重要になってくる。


「ティールぐらいスタミナがあれば、ダンジョン探索も上手くやれそうだな」


「ダンジョン探索……ティーラスさんはダンジョンに潜ったことがあるんですか」


「おう、勿論あるぜ。それなりに冒険者として活動してるからな。ダンジョンの中は地上で探索してるよりも遥かにモンスターと遭遇する確率が高いんだよ。もちろん、階層ごとにある程度強さが区切られてるから、階層によっては楽々進めるんだけどな」


ティールはダンジョンという存在は知っているが、まだ一度も潜った経験がない。

それは最近冒険者になったばかりのラストも同じだった。


「それでも、一日の間に何度もモンスターに遭遇するから基本的に動き続ける前衛はスタミナ管理が重要なんだよ」


「そ、そんなに一日に何度もモンスターに襲われるんですか?」


「まぁ、絶対ってわけじゃねぇけどな。感知力が優れた仲間がいれば、先にモンスターの気配を察知して遭遇しないように進むって手段もある。ただ、ダンジョンに出現するモンスターは若干狂暴というか……荒々しいんだよ」


理由は明確に解かってないが、ダンジョンに潜ったことがある者は皆、口をそろえて同じことを言う。


「荒々しいか……俺としては大歓迎だ。逃げられるとつまらん」


「はっはっは!! 勇ましいな。確かに二人の実力を考えれば、金が逃げてくのは良くねぇよな。まっ、後衛職を悪く言うつもりはねぇが、スタミナの消費量にはそれなりに差が出るってことだ。覚えといて損はねぇと思うぞ」


「ありがとうございます!」


「良いってことよ」


村に居た頃の偶に模擬戦をしてくれたジンはややダンジョンの良いところを話すことが多かったので、ティールはダンジョンについて全てを知らなかった。


「お前らもそのうちダンジョンには潜ると思うが……なぁ、これからずっと二人で冒険者生活を続けるつもりか」


「ずっとかは分からないですけど、今のところ増やす気はありませんね」


「そうか……そこら辺はお前らの自由だが、ダンジョンを探索するなら三人か四人がお勧めだぜ」


二人がベテラン以上の実力を持っているのは身をもって知っている。

だが、ダンジョンでは実力だけではどうしようもない事態が起こる。


「……考えておきます」


ギフトに関しては言えないので、そう答えるしかなかった。

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