こちらも数が必要
「コボルトとオークの巣が……それは、珍しいですね」
まだ実際に巣を見たことはない。
見たことはないが、他種族のモンスターが同じ場所で生活している。
それは非常に珍しいことに変わりはない。
「そうなんだよ、非常に珍しいんだ。ただ、その巣の中にはCランクのモンスターもいてね……数もそれなりに多い」
「それなりに、ですか。だいたいどれ程の数が巣にいたんですか」
「……巣にいた数だけだと、約五十体ほどだ」
「五十体、ですか。なるほど、巣の中にいる数だけと考えると少々不味い数ですね」
巣にいる数ということは、巣にいない数は含まれていない。
イグラスの予想だと、総合的には八十体ほどいると予想している。
その数が一斉に街を襲えば……少なくない被害が出てしまう。
「街の近くに不味い存在が……団体がいるのは分かりました。ただ、なんでそれを俺に話したんですか」
「キラータイガーやヴァンパイアを倒したスーパールーキーに声を掛けるのは当然だと思うよ」
ティールはまだDランク。
そしてラストは冒険者になったばかりということもあり、まだまだ冒険者としてのランクや期間的にはルーキー扱いとなる。
ランクや期間を考慮すれば、キラータイガーやヴァンパイアを倒したという結果が事実であればスーパールーキーと呼ばれても決しておかしくはない。
「……それ、本当に信じてるんですか」
「内容だけ聞けば、確かに信じない人の方が多いだろうね。僕も、ラガス君に会うまでは半信半疑だったよ。でも……人を見る眼はあるつもりでね。ラガス君は決して成果を誇張するようなタイプの人じゃないと思ってね」
実際に面と向かって会い、信用に値する人物だと思った。
そうストレートに伝えられ、そこに関しては素直に嬉しいと感じた。
「ヴァンパイアを倒したって話の方は確かに実証人が少ないから、怪しむ人が多いと思うけどキラータイガーに関しては、実際に君と……そこのラスト君が依頼を受けて達成した。それだけで十分二人の強さを信用出来るよ」
討伐依頼は最低限の素材をギルド職員に見せなければ、依頼達成にはならない。
此処が冒険者にとって必要な技量となってくる。
ただ倒せば良いという訳ではなく、依頼によっては必要な素材を残さなければならない。
高威力の魔法で全て消し飛ばしてしまっては、実際に達成したとしても中々証明し辛い。
「そう、ですか……ラスト、どうする?」
足音を出さずに傍に来ていた仲間に声を掛け、相談。
「マスターが受けたいと思ったのなら、受ければ良い。軽く話は聞いていたが、そこまで危険がある依頼というわけでもないだろう」
コボルトとオークが何十体いようとも……たとえCランクのモンスターがゴロゴロいようとも、自分たちの敵ではない。
そう言い切ったラストにイグラスは少し圧された。
(凄い、自信だね。一応これでも僕は先輩なんだけどな……多分、そういうの関係無いってスタイルかな。実際、そういう態度が取れるだけの実力は持っているようだし)
年齢はラストの方が下ではあるが、体格はラストの方が大きい。
実際に戦っているところを見てはいないが、目の前の竜人族の青年もただものではない。
それだけは本能的に解った。
「そう、だな……イグラス。そのコボルトとオークの巣を討伐するのは、自分たちだけではありませんよね」
「あぁ、勿論だよ。他にも複数のパーティーがこの討伐に参加する予定だ」
コボルトとやオーク単体であれば、倒すのにそこまで数は必要ではない。
しかし、今回挑むのは何十体といる大きい部類に入る巣。
こちらもそれなりの数を用意しなければ、倒せたとしても多くの犠牲が出てしまう。
冒険者は、いざとなれば冒険しなければならいが、それでも基本的にはなるべく犠牲を減らして依頼を達成したいという気持ちが圧倒的に強い。
「……分かりました。俺たちもその討伐依頼に参加します」
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