どれほどの差があるのか

「ティーラスさんは逃げろって言ったけど、二人はほっとけずに助けに向かったんだよね」


「そうだな……だいたいそんな感じだよ」


助けに行こう。

確かにその思いもあったが、本当のところはラストがヴァンパイアと戦ってみたいという思いが強かったから。


ティールもブラッディ―タイガーと戦った時よりも強くなった自分の強さを確かめられる相手だた思ったが、ティールにとってラストは奴隷という名の戦闘道具ではなく一人の仲間。


この先、全く強いモンスターと戦わないチャンスがないわけではない。

というわけで、主はレッサーヴァンパイアの始末に向かい、奴隷は主から二つの武器を受け取って強敵に挑んだ。


「普通は逃げると思うんだけどね……ラスト的には、ティールから借りた武器がなかったら、倒せなかったんだよね」


「そうだな。あの二つがあったからこそ、大した傷を負うことなく始末できた。武器の恩恵がなければ……倒せたとしても重傷は負っていただろう」


斬馬刀とソードブレイカーを装備したことによる恩恵。

それがなければ倒せるか怪しい一戦。


どれだけティールが褒めようとも、ラストの認識は変わらない。


「ん~~~……いや、とりあえず二人とも本当に躊躇いなく助けに行ったね。僕たちとしては慕ってる先輩たちが戦死せずに嬉しいんだけどさ」


「ラックの言う通りだな。ニーナさんたちは俺たちと比べ物にならないぐらい強いけど、レッサーヴァンパイアが数体とヴァンパイアが相手だと厳しい筈だ」


慕っており、尊敬している先輩たち。

しかしさすがに相手が悪い。


Dランクのモンスターが複数体。

それだけであればなんとかなるが、Bランクのモンスターがいるとなれば話が変わってくる。


倒せる可能性が決してゼロではないが、倒すまでに何人死ぬか分からない。

それだけ厳しい戦況に追い込まれる。


「仮に、二人がその群れに挑むならどうやって戦うんだい」


「俺たち二人だけか? それならまず、先日と同じ通りラストは一直線にヴァンパイアの方に向かって、俺はレッサーヴァンパイアを速攻で殺す。それからすぐに加勢して二人でヴァンパイアを殺す。超シンプルだけど、二人で戦うならこんな感じかな」


特に難しいことは考えない。

群れを即座に殺す能力であれば、ティールの方が長けている。

そういう理由から雑魚の殲滅はティールが行い、その間ラストは少しの間時間稼ぎ。


そして直ぐにティールが加勢し、二人でフルボッコ。


「た、確かにシンプルだね……二人なら、Bランクのモンスターでも余裕で倒せそうだね」


「余裕かどうかは分からないけどな。でも、装備は冒険者になったころと比べてそれなりに整ったし、大きな傷を負うことなく倒せるとは思う……かな」


ブラッディ―タイガーと戦ったころと比べて、肉体的に強くなったのもあるが、高品質の装備が増えた。

強い武器も持っているだけでは真の強敵には敵わないが、武器は冒険者の命を預ける大事な相棒。


その質が高くなればなるほど、生き残れる可能性が高くなる。


「Bランクのモンスターか……いつかは倒したいと思うが、先は遠いな」


「僕たちはまだまだEランクだからね……実際にBランクのモンスターと戦ったラストとしては、他のモンスターと比べて大きな違いはあったかな」


「他のモンスターと比べて、か……まず、根本的に身体能力が高い。ヴァンパイアの前に戦ったキラータイガーもそれなりの身体能力を持っていたが、それよりも高い」


特殊なスキルや魔法など関係無く、まずはそこが恐ろしい点だとラストは思っており、同じくBランクのブラッディ―タイガーと戦ったティールも同じ感想だった。


(解る、本当に解る。なんだかんだでCランク以下とBランクのモンスターってそこの差が大きいんだよな)


ブラッディ―タイガー戦から強くなったティールでも、Bランクのモンスターと戦うとなれば余裕は完全に消える。


「ラックたちもこの先冒険者として活動を続けていれば、いつか遭遇するかもしれないだろう。そうなった時、まずはその点に関して圧倒されないことだ。こちら側にはモンスターが身に着けていないマジックアイテムがある。今は厳しいと思うが、なるべく武器に関しては惜しまないことを勧める」


冒険者としては二人の方が遥かに先輩だが、そういうのは関係無しに己の意見を真っすぐ述べた。

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