情報が多い

「というか、その感じだとキラータイガーにも勝ったんだな」


「あぁ、勿論勝ったぞ。見つけるまでがかなり面倒というか、時間掛かったけどな」


強さ自体は厄介さはあれど、単純な戦闘力は二人が大苦戦するほど高くはない。

ただ、簡単に見つかると思っていたティールだが、予想以上に発見するまで時間が掛かった。


(態度は悪かったが、あの冒険者と出会って情報を得たお陰だな)


態度が悪かったのはパーティーの一人だけだが、有力な情報を得たからこそ、その日の内に見つけることが出来たと思っている。


「でもさ、遺跡の中だと倒すのに苦労したんじゃないかい?」


サイクロプスを一人で倒してしまう様なティールと、特別な武器ありとはいえ一人でヴァンパイアを倒してしまったラスト。


二人がいればCランクのキラータイガーに負けるとは思わない。

だが、情報として明かりが少ない状態ではかなり相手しづらい、ということだけラックは分かっていた。


「そうだな。隠動のスキルを持ってたから、暗さも相まって中々攻撃を当てられなかったんだよ。なっ、ラスト」


「暗さという優位性が向こうにあったとはいえ、あのスキルは厄介だったのは確かだ。こう……攻撃を当てる際の感覚を狂わされるという感じ? だったのを覚えている」


光がある場所であったとしても、隠動を使われると速攻で倒すのは厳しい。

ラストにとって、あまり相性が良くないタイプと言えるだろう。


「そ、それでいったいどうやって倒したんだい」


隠動という厄介なスキルを持ち、周囲は暗いというキラータイガーに有利な戦況。

そこからいったいどのようにして勝利をもぎ取ったのか。


同じ冒険者であれば気になって仕方ない。


「ただ気配を消すのが上手いだけじゃなくて、上下左右関係無しに動き回る脚も厄介だったんだよ。だからラストと距離を取ってストーンランスを上下左右に何本も展開したんだ」


強制的に滞在できる場所を空中に移動させる。

アイデアとしてはティール以外に思い付く者はいるが、そう簡単に実行出来る案ではない。


「そうすれば空中に跳んで逃げるしかないだろ」


「なるほど。確かに逃げ道はそこしかないね」


「後はその隙を狙ってキラータイガーの脳天を貫いて終わりだ」


「……サラッと凄いことを言うね」


確かに脳天を貫けば、大半のモンスターは活動停止に追い込まれる。

しかし空中に追い込んだとはいえ、キラータイガーを相手に……ネコ科のモンスターにそれを行うこと自体が凄いことなのだ。


(スーラなら出来るか? いや、多分無理だろうな。ティール並みに身体能力が上がれば出来るかもしれないけど……そんなことを聞けば、馬鹿なのかって言い返されそうだね)


空中に追い込まれたとしても、体を捻って躱す。

そういった動作にネコ科のモンスターは慣れている。


しかしティールはその回避動作を許さずに急所を貫いたと宣言した。


「その前のストーンランスで上下左右を大尽くすというのも……並みの腕じゃない出来ない、ということだけは分かるよ」


「ユキにウォーターランスで同じことを出来るかって聞けば、絶対に無理って言われそうだな」


「間違いないね。本当に……とんでもない倒し方をするね」


「そんなに褒めたってなにも出ないぞ。あっ、それでその後そろそろ帰ろうかって時に、ニーナさんたちと偶然会ったんだよ」


「へぇ~~~~、それはまた偶然……ん? でも、キラータイガーと戦った後にその、ヴァンパイアと遭遇したんだよね」


ラックの記憶が正しければ、そういう流れになる。

二人の記憶は間違っておらず、次に零れるティールの言葉にまた驚かされてしまう。


「ニーナさんたちがヴァンパイアと数体のレッサーヴァンパイアに襲われてたんだよ。ティーラスさんが後ろにいた俺たちに逃げろって声を掛けてくれたんだけど、俺たちの意志でその戦いに加わることにしたんだ」


「……なるほど、状況は分かったよ。でもちょっと頭が混乱してきたかな」


「俺もだ。一度に受け取るには情報量が多いな」


あまりにも忙し過ぎる一日を聞き、二人は一旦ティールからの情報を整理した。

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