驚いた顔は面白い

「私たちの生還と、二人の強さに、乾杯!!!!」


「「「「「「乾杯!!!!」」」」」」


遺跡から戻り、六人はまずギルドへ向かった。

五人は元々依頼を受けていなかったので、単なる付き添い。


そしてティールとラストはキラータイガーの討伐依頼を受けていたので、討伐したと証明できる部位を渡した。


「ぷは~~~~、美味い!!! いやぁ~~~、しっかし二人がキラータイガーの討伐依頼を受けてたとはな。しかもきっちり倒してた。あの受付嬢の驚き顔は面白かったな!!」


「ティーラス、あまり女性の表情を面白がるものではないですよ」


「だってよぉ、あんなに受付嬢が驚いた顔なんて滅多に見ないだろ!!!」


依頼達成の確認を行った受付嬢は、二人が持ってきた依頼を受理した受付嬢。

どう考えても無理だろうと思っていた二人が、きっちり討伐して証明部位を持ってきた。


ラストという竜人の青年がそれなりに強いのは分かっていた。

ティールという人族の少年に関しては雰囲気に疑問は感じたが、ラストよりは強いと思えなかった。


驚いたのは担当した受付嬢だけではなく、他のギルド職員や受付近くにいた同業者たちも大なり小なり驚いていた。


「にしても、あのキラータイガーをどうやって倒したんだ? 明るい場所ならともかく、遺跡の中であいつと遭遇したらなるべく背を向けないように戦いながら逃げる、もしくは外まで連れ出して仕留めるのが一般的だが」


「別にそんな難しいことはしてませんよ」


特に秘匿するような技でもないので、どうやってキラータイガーを仕留めたのか全て話す。


「まず二人でキラータイガーを逃がさないように挟んで、岩の槍を発動しました。だいたいキラータイガーの周囲を全て覆う様な感じで」


足元だけではなく、周囲全てを覆うことで壁を蹴って動けないようにする。

後ろに逃げようものなら、ラストが鬼の様な気迫を放ちながら待ち構えている。


まずは逃げ場をなくす。

その流れに関しては五人とも理解した。


しかし、魔法をそれなりに扱うシルとアルス、そしてセイラは流れを聞いた瞬間、冗談かと思ってっしまった。

だが、ティールが嘘をついている様には思えない。


(確かにティール殿は私たちを助けに入る際、フレイムランスを複数放っていた。レッサーヴァンパイアと直接戦う際には接近戦だけで仕留めていたが……いや、しかしキラータイガーが逃げられないほどのロックランスを周囲から生やすなんて)


(この子、難しいことはしてないって言ってるけど、自分がどれだけ凄いことをやってのけたのか理解していないのかしら? 多分そうよね。ニーナたちに完璧に守られながらなら多分同じことは出来るけど……二人だけで戦ってたんでしょ。だったら一瞬で……詠唱破棄で無数のロックランスを発動したってことよね)


(剣士か戦士……ですよね? でもフレイムランスを使って間に入ってくれたことを考えれば……いえ、あまり光源がない遺跡の中でキラータイガーを相手にそんなことを……神童、なのでしょうか?)


三人は少しの間食事の手が止まった。

中堅どころの冒険者が深く考え込むほどの内容なのだが、話はそこで終わりではない。


「そしたら作戦通り空中に跳んだんで、武器を投げつけて額を貫きました」


「なるほどなぁ……でもよ、空中で躱されたりしなかったのか? 四足歩行の獣系は身軽な奴が多いだろ。キラータイガーな壁を蹴って躱せなくても、体を捻って躱しそうだけどな」


「俺が一番最初に鍛えた武器は投擲です。それなりにスキルレベルを上げてるんで、例え体を捻って躱そうとしても軌道修正しますよ。ただ、投擲時はそれなりに腕力が上がるんで、避けさせずに倒せました」


「投擲か。確かにスキルレベルを上げればコントロールや軌道修正、腕力強化の効果を得られるが……相当なレベルに達してそうだな」


冒険者のマナーとして、先輩冒険者であってもスキルレベルなどまでは尋ねなかった。

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