採ったら迷惑になる

「ここが遺跡の入り口か」


街から離れて直ぐの場所に遺跡があるわけではなく、数十分ほど離れた場所に向かわなければならない。

他に遺跡への入り口はあるのだが、現在ティールたちが立っている場所が一番近い。


「……なんかすごいワクワクしてきた。ラストはどうだ?」


「そうだな……確かにワクワクしてないといえば嘘になる」


ラストも遺跡を探索するという状況に冒険心が疼いている。

二人は意気揚々とヤドラスの遺跡に乗り込む。


遺跡に辿り着くまでモンスターと二戦行ったが、相手がCランク以下のモンスターだったので、せいぜい準備運動にしかならなかった。


本番はここからという気持ちで挑む。


「明かりはあるけど……ちょっと感覚が遠いな」


ライトロックというぼんやりと光る鉱石が存在する。


「ライトロック、か……少し欲しいなって思ったけど、多分採掘しない方が良いよな」


「あぁ、そうだな。他の冒険者から苦言が飛んでくるかもしれない」


何か道具や魔法を使わなくとも、視界が確保される。

そんな冒険者にとって有難い鉱石採掘すれば、非難の嵐が飛んでくる。


だが、ライトロックから造られるマジックアイテムもあるので、ライトロックが多く存在する場所では採掘が許可されている。


しかし現在二人が歩いている場所では量が少ないので、いたずらに採掘してはならない。


「二つあれば十分だろ」


「……魔法の腕もやはり一流か」


詠唱を唱えることもなく、ティールはライトボールを二つ生み出した。


ライトボール、もしくはファイヤーボールを浮かべて明かりの少なさを補うのがセオリー。

もしくは松明かランタン……明かりを灯すマジックアイテムを使う。


後者は片腕が使えなくなるので、あまりベテランは松明やランタンを使いたがらない。

だが、金がなく火魔法か光魔法を覚えていないルーキーはそれらを使うしかない。


「一流って、別にこれくらい普通……ではないと思うけど、一流ってのは大袈裟じゃないか?」


「そんなことはないだろう。完全に詠唱を破棄して行っている。それに加えて、今の状態で激しい戦闘も行えるだろう」


「あぁ、勿論」


「やはり普通ではない。それが出来るようになるまで、ティールさんが努力していないと思わないが、ややセンスによる部分が大きい気がする。そういうところも含めて、やはり一流だ」


「……ちょっとこそばゆいから、それ以上褒めないでくれ」


リースやジンから褒められることは何度もあり、村から出て知り合う人からも褒められた。

だが、やはり堂々と褒められるとむずむずしてしまう。


「おっと、客が来たみたいだな」


二人の前に現れたモンスターはポイズンスネーク。

Dランクのモンスターであり、体長六メートル。

数は三体……その口からは毒液が吐き出され、鋭く尖った尾に刺されると体に毒を注入される。


「……Dランクか。ただの蛇ではないが、楽しめる相手ではないな」


「体もそんなに大きくないし、もしかしたら三体ともまだ子供なのかもしれないぞ」


ティールの予想は的中しており、三体ともまだ成体とはいえない。

しかしその力は十分にDランクの領域に到達している。


「「「シャーーーーーッ!!!!」」」


三体揃って毒液を放つ。

毒耐性のスキルを習得していなければ、状態異常を回復するポーション。

あとはリフルヒールを習得していなければ、解毒できない。


ただ、放出されるスピードはそこまで速くはない。

ティールは前方に広範囲の風を放って毒液を全て防いだ。


二人に届かなかった毒液は地面に落ち、地面を少し溶かす。


「やっぱり毒は油断ならないな」


「ティールさん、二体頼んでも良いか? その方が速い」


綺麗に倒す。その条件を考えれば、ティールに全てを任せた方が速い。

だが、主だけを働かすのはラスト的に許せないので、一体は必ず自分が倒すと決めた。


「分かった任せてくれ」


二人の本日の目標はキラータイガー。

Dランクのモンスターに時間を掛けるつもりはない。

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