今度見つけたら飯を奢ろう
「おい、こいつはお前らにやる」
「えっ!! いや、こいつらを倒したのは実質お前だから、俺らは受け取れねぇよ」
自分たちの実力では、絶対にオークたちに敵わなかった。
悔しい思いはあれど、その現実は受け止めている。
なので、オークの素材や魔石を受け取ることは出来ない。
「俺はちょっと用事が出来たから直ぐに移動する。こいつの死体はここに置いていくから、お前らの好きにしろ。じゃあな」
「あっ、ちょ!!! ……いっちまった」
自分たちを助けてくれた恩人の名前を聞く間もなく、その恩人は何処かへ行ってしまった。
残った冒険者たちはオークの死体に目を向ける。
「なぁ、これどうする」
「どうすって……どうしようか」
「このままにするのは勿体ないわよね」
オークが二つとオークソルジャーの死体が一つ。
肉や内臓は当然売れる。中でも睾丸の買取価格は高い。
冒険者としては、死体はこのまま放っておくのは勿体ないと思ってしまう。
「でも、こいつらを倒したのは俺たちじゃなくて、直ぐにどっかにいっちまった人だろ。あの人がいらないって言っても、それを解体して自分たちの金にするのはなんかな……」
「バカ、私たちにはそんなこと言ってる余裕はあんまりないのよ。あの冒険者はこのオークを私たちにやるって言ってくれたのよ。それなら解体して売っても問題無いじゃない」
自分たちはあまり金に余裕がない。それはパーティーメンバー全員が感じている現状だった。
目の前にある死体は綺麗に切断されて殺されたので、解体すれば多くの素材が売れる。
「罪悪感でも感じてるなら、売ったお金で今度会ったらご飯でも奢ったら良いじゃない」
「……そうだな。うっし、お前ら! 他のモンスターがこない間にさっさと解体するぞ」
一同はサクッとオーク二体とソルジャーを倒したティールに感謝しながら解体を進めた。
一方、名前も名乗らずその場から去ったティールは近くにサイクロプスがいないか、全力で探し回っていた。
(オークソルジャーにあれだけの傷を負わせることが出来るモンスターは限られてくる。傷痕からして棍棒でやられた様な傷だったから可能性を削除していくと、傷を与えたのはサイクロプスのはず!)
自分の予想が当たってほしいと思いながら動くこと探すこと三十分……ついにティールは目的のモンスター、サイクロプスを発見した。
「……よし!!! あれはどう見てもサイクロプスだよな!!」
念のため鑑定で確認すると……名前の欄にはサイクロプスと記されていた。
(はぁ~~、良かった。本当に良かった。今日結構探したからな……これで見つからなかったら、明日も頑張って探そうって気が起きなかったかもしれない)
一度依頼を受けたのだから、諦めるつもりはない。
だが、それなりに必死で探して見つからなければ捜索する気力が落ちる。
翌日も朝から探そうとしても、前日と比べて怠い空気を出しながら探すことは確定。
そうならずに済んで心の底からホッとしている。
(まだ気付かれていないみたいだな……ちょっとストレス溜まってるし、打撃で倒すか)
まだこちらに気付いていないサイクロプスの前にわざと立つ。
すると当たり前だが、戦意をむき出しにする敵の存在に気付いたサイクロプスは手に持つ棍棒で叩き潰そうと振りかぶる。
「遅い」
振り下ろされるよりも先に身体強化を使い、拳に魔力を纏ったティールのパンチが炸裂。
棍棒は振り下ろされず、サイクロプスは数歩ほど後ろに後退。
その一撃でただの小さい人間ではないと解り、身体強化と腕力強化のスキルを使用し、更には棍棒に魔力を纏った。
「おっ、やる気になったみたいだな」
魔力を纏った棍棒を万が一食らうのは不味い。
危機を察し、万が一に備えて脚力強化も発動。
(これで捕まることはないだろう)
準備万端の状態でサイクロプスに殴り掛かった。
「ゴアアアァァアアアアアアッ!!!!」
サイクロプスはただ棍棒を振り回すだけではなく、棍棒術の技や拳や蹴りを使いながらティールを吹き飛ばそうとするが、掠りもしない。
そんな状況に対し、ティールの攻撃はどれも的確に叩きこまれ、徐々に痣が増えていく。
(ふっふっふ、丁度良いストレス発散相手だな)
動くサンドバッグを相手に、嬉々とした表情で肉弾戦を続けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます