二人ほどでは……ない

竜人族は他の種族と比べて力が強いのが特徴。

思いっきり全力で殴られれば、数十メートルは吹き飛んでしまうだろう。


そんなソルートでは出会うことがなかった種族に驚き、目を輝かせていると目的の場所に到着した。


「おぉ~~……これまたデカいな」


ソルートの冒険者ギルドも外の世界を知らなかったティールからすれば大きかったが、ヤドラスの冒険者ギルドは更に大きい。


ただ、大きいという理由だけで立ち尽くしてしまう程、ティールは臆病ではない。

一瞬はその大きさに驚いて立ち止まってしまうも、直ぐに足を動かして中へと入った。


「これは……なんというか、やっぱり都会って感じがするな」


中に入ると、全て大理石などで地面や壁が制作されており、ソルートの木造ギルドとはガラっと雰囲気が変わる。


(外装からして結構豪華だなって思ってたけど、内装もかなり豪華だな……貴族の屋敷とか、超高級宿屋とかじゃないよな?)


あまりにも綺麗な内装に数秒ほど止まってしまうが、また直ぐに歩き出してクエストボードの位置まで歩を進めた。


(採集クエスト、討伐クエスト、護衛クエスト……やっぱり遺跡の探索に関する依頼もあるみたいだな)


今日は受けようと思っていない。

しかし、どんな依頼が張り出されているのか見てるだけでも十分に楽しめる。


(ん? オーガジェネラルって確かBランクのモンスターだよな。やっぱり高ランクのモンスターも遺跡の中を徘徊してるんだな)


Cランクの冒険者ではそれなりの数を揃えなければ倒せないモンスター、Bランク。

そのランク帯のモンスターを一度倒しているティールは、思わず口端を上げていた。


(今の俺なら……もしかしたらやれるか?)


一度Bランクのモンスターを倒し、更なる力を得たことでかなり自信がついた。

今の自分なら、Bランクのモンスターでも余裕を持って倒せるかもしれない。


と思ったが、ヤドラスはソルートよりも発展した街。

そうなれば、当然良い人材が集まって来る。


それは冒険者も同じであり、Bランクの冒険者もヤドラスで活動している。


(俺が見つけるより先にその人たちが見つけて倒してしまうかもしれないな。まぁ、そうなったらそうなったらで仕方ない。獲物は早い者勝ちだからな)


今回この街に来たのは遺跡の探索を楽しむため。

他の冒険者を獲物を奪い合う必要はない。


(オーガジェネラルがどんなスキルを持ってるのかは気になるけど……狙って遭遇できるものじゃないし)


クエストボードに貼られている依頼を全て見終わり、ギルドの外に出ようとする。

すると、幾人かの冒険者たちが訓練場に繋がる通路から出てきた。


(……俺と同じルーキーか)


ティールより冒険者歴は長いが、分類としてはルーキーに属する冒険者たちであるのは間違いない。

ただ……その冒険者たちからエリックとリーシアに似た様な雰囲気を感じた。


「……あの二人と同格? いや、まだそこまで達してないか」


二人はEランクでありながら、グレーグリズリーを追い詰めていた。

ティールの方に来なければ、二人が確実に仕留めていた。


(エリックやリーシア並みに強いルーキーは珍しいだろうな……って、それは俺が思う言葉じゃないな)


二人がルーキー離れした実力を持っているのは確かだが、ティールの力は完全にスーパールーキーなどという次元からは逸脱している。


(この街で活動していたらいずれ知り合うかもしれないけど、自分から絡む必要はないか)


急用で他のパーティーと組む必要も無い。

今は誰とも関わらず、一人で遺跡に挑むのが無難だと思い、ギルドを出た。


(遺跡を探索するのは良いけど、ちょいちょいギルドの依頼も受けとかないと駄目だよな)


お金に余裕が出来れば長期間依頼を受けない者もいるが、その間冒険者何をしているのか。

少なからずギルドはそこに疑問を持つ。


ギルドから不審に思われるのを防ぐために、ある程度依頼を受けながら探索を進めなければいけない。

そんな事を考えながら、まずはこれから泊る宿を探し始めた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る