今の自分を壊して変わる

目を覚ましたティールとリーシア、エリックが再開して礼を伝え、その後すぐにバーバスもギルドに現れて助けてもらった礼を伝えた。


(なんか、本当に変わったみたいだな。前までなら、結果的に俺に助けられても絶対に礼なんて言わなかった筈……なのに、今は俺にしっかりと頭を下げて礼を伝えてきた……ちゃんと変われる奴だったんだな)


今回の一件で、ティールのバーバスに対する評価は完全に変わった。


「頭を上げろ、結果的にそうなっただけだ。それでも思うところがあるなら……いつかその借りを返してくれ」


「勿論だ!!!」


変わることが出来る勇気。

それは簡単そうに思えて、簡単ではない。


今まで積み上げてきた自分を壊す必要がある。

人によっては、その重要性を突き付けられる、頭で解っていても変われない。


そんな者が多々存在する。


そして宿に戻るまでティールは多くの人に感謝の言葉を伝えられた。


(こうも直接感謝の言葉を何度も伝えられると、ちょっと恥ずかしくなってくるな……嫌な気はしないけどな)


恥ずかしくても、嫌な感覚はない。


街の人、全員が全員今回の話を信じている訳ではない。

ティールの姿を見て、ソロでBランクのモンスターを倒したなんて絶対に嘘だと思う者もいる。


だが、それでも大半の人達はティールに感謝していた。

ティールと同じ冒険者達が、噂のルーキーが本当に一人でブラッディ―タイガーを倒してしまった。


立って気絶するまで友人を、街を守るために一人で立ち向かい、倒した。

そんな話が同業者達の口から出ている。


信じるには十分な証拠だろう。


「だはーーーー……うん、色々あって疲れたな」


宿に戻ってきたティールは直ぐにベットにダイブして転がった。


体調は問題無い。

だが、今になって疲れが少々襲ってきた。


「そういえば夜はギルドで宴をするって言ってたな……行った方が良いよな」


勿論、行った方が良い。

というか、街を祝った英雄……宴の主役がいなければパーティーは始まらない。


「……ちょっとだけ寝よう」


気怠さに負け、昼食も取らずにそのまま眠りについた。

そして約五時間後、ギルド職員がティールが止まっている宿を訪れ、宴の準備が出来たと報告してきた。


「うっす、それじゃあ着替えたら直ぐに行きます」


「分かりました。ゆっくりでも大丈夫ですからね」


寝起きのティールを見て、焦らずにゆっくり準備しても大丈夫だと伝える。


その気持ちは有難いが、ティールとしてはギルドで待っている冒険者達のことを考えると、待たせるのは良くないと思って急いで着替えてギルドに向かった。


そして到着すると……ギルドの酒場には大勢の冒険者達がティールのことを待っていた。


「おう、やっと来たか」


「良いね、主役は遅れて登場ってやつだな」


「飯は大量にあるからガッツリ食えよ!!」


酒場にはギルドが予想していたよりも大勢の冒険者達がいた。


(良く見れば冒険者達だけじゃなくて、ギルドの職員さん達までいるよな……良いのか? まだギリ勤務時間な気がするけど……まっ、俺がそんなこと考えても仕方ないよな)


主役が登場したことで宴の開始はガレッジとティールの言葉で行い……後は皆好きな様に呑んで食ってな状態。

まだティールが酒を呑めないということもあり、ジュースを酌してくれる者が大勢いた。


ただ、ティールとしては料理をガッツリ食べたかったので途中からは気持ちだけ貰った。


(ヤバい、朝飯昼飯を食べてなかったから永遠に食べられそうだ!!!!)


テーブルに置いてある料理はどれも美味く、食べる手が止まらない。

肉料理を食べている時、ふとブラッディ―タイガーの肉を思い出し、今から焼いてもらおうかと思った。


宴に参加している冒険者達に配るのもありかと考えたが、絶対に直ぐ無くなってしまう未来が見えたので却下。


(モンスターの肉って基本的にランクが上がれば上がるほど上手くなるし……Bランクの美味過ぎて直ぐに食べ終わってしまうよな)


とっておきは後日一人で食べようと決めた。


「うっぷ……ちょっと食べ過ぎたかな。結構お腹いっぱいになった」


同業者と会話しながら料理を食い続け、腹いっぱいになった頃に周囲を見渡すと、大半が酔い潰れて倒れていた。

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