無事に守れた
「……ここは、どこだ?」
ブラッディ―タイガーとの死闘を乗り越え、気を失ってしまったティールが目覚めると、そこは知らない場所だった。
「俺はブラッディ―タイガーと戦っていて……勝ったんだよな」
自身の手で打ち取った感覚はある。
だが、実際にどうなったのかという心配が残っているので、とりあえず部屋から出ようとした。
するとティールが部屋から出るよりも先にドアがノックされた。
「はい」
ティールが返事を返すと勢い良く扉が開かれた。
「……ティール、もう起きても大丈夫なのか?」
「は、はい。もう大丈夫ですよガレッジさん」
「そ、そうか……そうか、本当に良かった」
街を……仲間を守るために全力を出し尽くし、見事守り切ったティールが無事であることを確認出来たガレッジの目から涙が流れた。
「ふぅーーー、本当に……大丈夫なんだよな」
「この通り、体はしっかりと動きます。あの……ブラッディ―タイガーはちゃんと倒せてましたよね」
「たくっ、もうちょい自分の体の心配をしろっての。安心しろ、ブラッディ―タイガーはきっちりと仕留められてたよ。解体はギルドの職員達が終わらせてくれてる」
「そうですか……はぁーーーーー、良かった」
死闘を終え、奪取≪スナッチ≫でスキルを奪ったところまでしか記憶がなかったので、本当に倒せたかどうかという不安が少々残っていたのが……無事にその不安は消えた。
「にしても……よくブラッディ―タイガーを倒せたな。Bランクモンスターを冒険者になりたてのルーキーが倒すなんて話、聞いたことねぇぞ」
飛び抜けた実力を持つルーキーが現れることは稀にあるが、それでもせいぜいDランクかCランクのモンスターを倒す程度の実績。
冒険者になるまでの経歴にもよるが、Bランクのモンスターを倒すというのは決して容易な実績ではない。
それにティールの年齢は十二。そして冒険者になってまだ半月も経っていない。
それらの情報を纏めれば、第三者が聞いても絶対に嘘だと思ってしまう。
「元々鍛えていたっていうのもありますけど、俺が持っていた武器のお陰ってところが大きいですよ」
「こいつらの事だろ」
ベッドのとなりのテーブルには疾風瞬閃と豹雷が置かれていた。
「そうです、こいつらのお陰です。こいつらがなかったら……俺は絶対にブラッディ―タイガーに勝てませんでしたよ」
再生のスキルを持つブラッディ―タイガーは攻撃を食らえば当然、痛みは感じる。
しかしその傷は徐々に癒えていき、完治してしまう。
表面の浅い傷はそのまま残していたが、内面の怪我は即座に再生を使用して治していた。
勿論、魔力が尽きてしまったら再生のスキルも使えない。
だがブラッディ―タイガーの魔力量は並ではないので、そう簡単に尽きることは無い。
「この豹雷がなかったら……ブラッディ―タイガーの首を斬ることは出来ませんでした」
「……嘘では無いだろうが、それでもお前が強いということに変わりはない。お前の実力に……今までの努力に胸を張れ」
「……はい、ありがとうございます」
真正面から褒められたティールは無意識に涙を流していた。
友達を守りたい、街を守りたいという思いがあった……だが、それと同時に死ぬかもしれないという恐怖心も残っていた。
そんな状況から死ぬかもしれないと感じる激戦を乗り越え、見事勝利を掴むことが出来た。
その結果を褒められ、多くの感情が溢れた。
「とりあえず、本当によく頑張った。お前が一人残って戦たお陰でリーシアとバーバスも無事だ」
「そうですか……はぁ~、守れたって分かるとドッと気が抜けました」
体をベッドに預けるように倒れ込む。
これから遭遇する面倒事が残っているのだが、今はこの安心感に身を任せてゴロゴロしたい。
そう思っていたティールだが、起きてしまったからには色々と用事は済まさなければならない。
「ティール、動くことは出来るんだよな」
「はい、それは問題無いです」
「よし、それならギルドマスターのところに行くぞ」
「……えっ」
ティールとしてはもう少しのんびりしていたいのだが、その暇は全く無い。
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