お邪魔虫

リーシアに殆どあの件に関わったことがバレており、翌日にリーシアとの冒険に付き合う事になったティール。


それ自体はそこまで問題では無い。

エリックには少々申し訳ないと思いながらも、もう少し経てば別れてしまう友人と一緒に冒険することは悪くない。


だが……最悪にも途中で狙ったかのように一人の男が二人と遭遇した。

男はティール達にどうせなら三人で狩りをしないかと提案する。


その男のことを嫌っているティールだが、見捨てて死なれては目覚めが悪いのでリーシアの考えに従うことにした。

そしてリーシアもあまりその男のことが好きではないが、色々な面を考えると提案を考えるのは不利益の方が多いと判断し、共に行動することにした。


「いやぁ~~、やっぱりリーシアの攻撃魔法は強力だな」


「ありがとう、バーバスも良い戦い方になったんじゃないの?」


そう、二人にわざとらしく偶然を装って絡んで来た男はあのバーバスであった。

リーシアから面と向かってアドバイスを貰ったバーバス。


そして本人はもしかしたら自分にも可能性があるのではと思ってしまった。


そんな可能性は一ミリもないのだが、本人はこれからの頑張り次第で好感度をエリックよりも上に持っていけると信じていた。


「そ、そうか。一応最近は訓練にも力を入れてるからな」


事実としてバーバスは最近、ギルドの訓練場で真面目に訓練を行っている。

なので多少なりとも戦い方は向上している。


前衛はティールとバーバスが担当しているので、なるべくティールの邪魔にならないように動き、攻撃していた。


ただ、リーシアの言葉は本当に褒めている感情が半分、もう半分はお世辞だった。


バーバスは確かに成長しているが、そこまで大幅に強化されてはいない。

そしてとなりで戦っているティールの実力と比べてしまう。


投擲、体術、剣術に魔法をメインで戦う。

そして奥の手として基本的にはモンスターが習得するスキルを使用することが出来る規格外な存在。


奥手のに関しては全く知らないリーシアだが、ティールの接近戦の強さは身をもって知っている。

それを考えると……バーバスの強さには見劣りし、不満を感じる部分がある。


というよりも……今日はティールと二人で冒険がしたかった。

そこにお邪魔虫がやって来たことでポーカーフェイスは保てているが、内心ではなんで絡んで来たんだと怒っている。


それはティールも同じであり、リーシアと違ってそれが少々表情に出ていた。


(ちっ、こいつストーカーか? それとも俺達が明日一緒に冒険に行くってのを知ってたのか? どちらにしろウザいな)


リーシアがバーバスが同行することを許可したことに不満は無い。

もしここでバーバスの提案を断り、それは本人が他の人に喋った場合……少々脚色されて話が広まるかもしれない。


ティールもそれを解っているので、この冒険が終わった後でリーシアに文句を言おうとは思っていない。


(てか……なんか、いつもとちょっと雰囲気が違う?)


森の中の雰囲気がいつもと少々違うと感じた。


普段通り、自分を襲ってくるモンスターはいる。

何か追われて自分達のところにやって来るモンスターなどはいない。


亜種や希少種、群れに遭遇することもない。


だが、背中がいつもより冷たくて何かが自分達を狙っているかもしれないという感覚が切れない。


(多くのモンスターが俺達を狙っているだろうけど、なんというか……生温い感覚じゃないんだよな)


幼い頃からモンスターと戦い続けているティールはCランクぐらいのモンスターの殺気は大した脅威に感じない。

だが、森の入ってから数時間……途中から嫌な感覚が全く消えない。


「ティール、顔が険しくなってるけど何かあった?」


何かあったかと言えばあった。

嫌いな奴が割り込んできた。


しかしそれはあまり関係無い。


「……何かが、俺達を狙っている様に思えてな」


「もしかしてだが、Cランクぐらいのモンスターが俺達を狙っているのか!?」


成長したバーバスはティールが嘘を付いているとは思わず、辺りを警戒し始める。


「Cランクなら別に良い……だが、それ以上だとっ!!??」


ティールの言葉切れた瞬間に……一頭の虎が三人の前に現れた。

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